魔法の杖
第一章 魔法の杖
僕は、学校の帰りに行き付けの骨董屋に寄っていた。親戚の伯父さんが、営む骨董屋には高い物から安い物まで幅広く置いてある。
「こんにちは、伯父さん。」
雑巾で、高そうな壺を磨いている伯父さんが居た。
「隆くん、今帰りかね?」
僕は、高校二年の相葉隆。伯父さんの骨董屋が大好きだった。
「何か、面白い物は入った?」
僕は、カウンターの上に鞄を置いた。
「ああ。どれ見せてやろう。」
伯父さんは、棚の中から古い木箱を取り出した。
ここの骨董屋は、かれこれ八十年の老舗になる。伯父さんは、この骨董屋の二代目になるそうだ。古くから、営んでいるため骨董の業界では有名なお店だそうだ。
「先日、お年寄りから手に入れたんだが、木箱には魔法の杖と書かれている。本物かどうかは、全くわからない。」
伯父さんが、木箱を開けると中には20センチほどの木の枝が入っている。
「使ってみたの?」
僕も、こういう類いの物は信じない。
「ああ。何も起きらなかった。」
確かに、ゲームの世界じゃあるまいし魔法が本当に使えるわけはない。本当に魔法が使える杖なら、骨董屋に売るはずもないし、前の持ち主も邪魔だから手放したに違いない。
「少年よ、私を手にするのだ。」
どこからか、声が聞こえた。
「少年よ、私を手にすれば力を与えよう。」
今度は、はっきりと聞こえる。
「伯父さん、何か言った?」
伯父さんは、木箱を開けた後はカウンターの中でお茶を飲んでいた。
「何も言っとらんぞ。」
確かに、伯父さんの声ではなかった。さっきの声は、僕にしか聞こえないみたいだ。心霊現象?こう言った話は苦手なので、僕はさっさと帰ろうと鞄を手に取った。
「こら!信じていないな!それなら、杖を手に取ってみろ。」
まただ、頭の中で声が響く。
「わかったよ。手に取ればいいんだろう?」
伯父さんには、杖の声が聞こえていないから僕が一人言を言ってるように思っていた。
「伯父さん、杖を手に取ってみていい?」
伯父さんは、新聞を見ながら僕にO.K.のサインを見せた。
「さて、何にも起きませんように!」
祈りながら、杖を取る。
「ああ~、やっぱりだよ。」
僕が、杖を掴んだ瞬間にお店の中が眩いくらいの光に包まれていく。あまりの眩しさに僕は目を閉じていた。しかし、目の前にいる伯父さんは気付いていないみたいだ。平気そうに新聞を読んでいた。
「目を開けよ、少年よ。」
だんだん、光には慣れてきた。僕の、目の前に誰かが立っている。
「どうじゃ?わしが、見えるかな?」
いかにも、魔法使いって感じの黒っぽいローブを来た年寄りが立っている。
「ああ。見える。どうなった?」
老人は、ある本を出してきた。
「その杖は、魔法の杖だ。」
何か自慢気に話している。
「それは、さっき聞いた。」
「さぁ、契約書だ。一つだけ、魔法を使えるようになるぞ。」
老人は、ローブの中から薄っぺらい紙切れを出した。
「たった、一つだけ?ケチだな?」
僕は、紙切れを見ていた。
「ケチとは何だ!」
怒っているようだ。
「ところでさ、ここに一つだけじゃなくて、一種類って書いてあるんだが?」
老人に、契約書を指差して見せた。
「何だと?どれどれ?」
老人は、契約書を離したり近づけたりしている。
「老眼なのかよ?」
やっと、契約書の文字が見えたようだ。頭を掻いていた。
「あのさ、契約書を書いたら今の世界で魔法が使えるの?」
もし、この世の中で魔法が本当に使えるなら最強だ。
「使える。ただ、使えるのは一日三回までだ。どんな魔法にするかは、帰ってからゆっくりと考えたらいい。一度、契約書書いたら変更は出来ない。それと、使えるのは契約者だけだ。」
魔法の杖に関しては、大体の事がわかった。あとは、何故に魔法の杖のような物が存在し、誰が作ったのかを教えてもらうつもりだった。
「説明は以上だ。さらばだ。」
とか言いながら、老人は両手を広げた。
「ちょっと待て。まだ、聞きたいことが。」
老人は耳が遠いのか、また光だした。
僕は、気が付けば元の骨董屋に居た。
「どうした?そんなに、その杖が気に入ったか?」
伯父さんは、普段通りだ。やっぱり、僕だけしか見えてなかった。
「伯父さん、ここ杖を売って。いくら?」
とりあえず、お小遣いで買うことにした。
「ああ、置いてても胡散臭いから売れないし、タダでいいよ。」
ラッキー。魔法の杖がタダとはついている。
「ありがとう。」
僕は、魔法の杖を鞄に入れて骨董屋を後にした。さっきの事だけなら、僕は夢だろうと信じてなかった。ただ、気が付けば僕の手に契約書が握られていた。契約書は、さっきまではお店には無かったから信じることにした。
「さて帰ってから、どんな魔法にするか考えないと。やり直しは出来ないからな。」
僕は、色々と考えを巡らしながら自宅に向かった。