取り残されし者
「ここに来る前に俺の部隊が全滅させられてな……」
シオンは苦虫を噛み潰したような表情を浮かべながらジニアにそう返した。
「……!? まさか、冗談ですよね?」
ジニアはシオンにそう言われて、信じられないといった表情を浮かべていた。
「……冗談ならどれほど良かったか……俺が付いていながら不甲斐ない……遺族の方達に何て言ったら良いか……」
アーロゲントに存在する騎士団の中でも三本の指に入るほどの部隊と呼ばれていたシオンが率いる隊が全滅するなど、正直な話信じられなかった。
それ故にシオンは自分だけが生き残ってしまった事に対して、罪悪感を覚えているのだろう。
「まさか……あのフードの男、フォンセとかいう堕天使にですか?」
シオンがここに来て直ぐに「間に合わなかったか」と呟いた事、最強とまで言われていたシオンが率いる隊が全滅させられたという事で、そういう結論に辿り着いたようだった。
「……その通りだ……名前までは知らなかったが、ジニアの言葉を聞く限りその男の事で間違い無いだろう」
シオンはそう言うと、その場に座り込んでしまった。
「……」
ジニアはシオンの様子を見て何も言う事が出来ないようだった。
『グゥゥゥー』
そんなタイミングで近くにあった倒れた木々の中から、獣の唸り声が聞こえた。
「!?」
「!?」
ジニアとシオンは同時に武器を構え、音が聞こえて来た方に視線を向けた。
『ユルサン……ユルサンゾォォォ……』
そこにいたのは化け物の姿をしたローランだった。かろうじてまだ人間の言葉を話してはいるが、あれでは最早ただの獣と変わりがないだろう。辺りにある木々目掛けて大きな手を繰り返し振り下ろしていた。
「ジニア……まさかあれは……いやあの方は……」
容姿が化け物になっているとはいえ、シオンもそれがローランである事に気が付いたのだろう。ジニアに視線を向けながらそう呟いた。
「はい。あの化け物はローラン騎士団長で間違いありません。フォンセによって化け物に変えられてしまったようです」
ジニアはシオンが最後まで言葉を言い終わる前にそう答えた。
「そうか……」
シオンはそう一言だけ呟くとローランの方に視線を戻した。
「ジニア……お前は下がっていろ。俺一人で充分だ……」
ジニアにそう言うと、シオンは腰に着けた剣に手を伸ばした。
「ですが……シオン先輩……」
ジニアも共に戦おうと、シオンの隣に立とうとしたが視線だけで黙らせた。
「なーに。心配するなって……俺はお前に心配されるほど弱くはねーよ……」
シオンはそう言うと、体勢を低くして改めて剣に手を掛けた。




