強者だからこその油断
『グワッハッハッハッハ……ナンダズイブント、オオグチヲタタイテイタヨウダッタガ、コノテイドカ?』
ローランはナズナの攻撃が軽いと見るや否や、避ける事を辞め全て真っ向から受け止め始めた。
『……』
ナズナとナズナの分身達はただ無言でひたすら攻撃を当て続けているだけだった。何かおかしい……そんな事はここにいる誰よりもリリィとジニアが良く分かっているだろう。
「ナズナの攻撃が軽すぎる……」
「いくら影分身を使っているとはいえ、いつものナズナらしくない……」
案の定二人は同じような感想を抱いている様子だった。
『ハッハッハッハ……? グゥ、ナンダ? カラダガオモクナッテキタ、ダト?』
ナズナの攻撃を受け続けながらずっと、雄たけびを上げるように笑っていたローランの動きが急に鈍くなった。それどころかリリィとジニアの魔法を受けても尚、全く動じなかったローランがついには膝を付いてしまった。
「……ようやく気が付きましたか……見損ないましたよローラン教官。恐らく貴方が人の姿を捨てていなかったらこんな作戦は上手くいかなかったでしょう」
ナズナは攻撃を辞めると、それと同時に住人以上居たナズナの分身も一緒に消えた。
『ナ、ナンダト?』
ローランは何が起こったか分からないといった様子で、何とか倒れないように地面に片手を付いて肩で息をしていた。
「……俺が調合した麻痺毒ですよ……残念です……憧れていた教官が、魔物に魂を売ってしまうなんて……せめて、最期は俺の剣技で逝かせてあげましょう」
ナズナは悲しそうな瞳をローランに向けながら、背中に背負っていた刀を鞘から抜いた。
「……ローラン教官……今までありがとうございました。せめて安らかに眠って下さい……神霍流刀一刀一ノ型『星羅雲布』」
ナズナはそう呟くと、刀を構えて剣技を放った。
―――「ギャイーン」―――
確かにナズナが剣技を放った瞬間そこには、ローランしかいなかった。しかし今はどうだろう。目を離した一瞬の間に、何者かがローランを守るようにそこに現れた。
「あらあら……これは予想外ですね……困りますよ……今この方に死なれては、私は牢獄に逆戻りです。せめてもう少しだけ力を復活させてからでは無いとあまりにも面倒です……」
そこに現れたのはローランをこのような姿にした張本人であるフォンセだった。相変わらずフードを被っているので表情は全く分からなかった。
「……貴様……何者だ?」
ナズナは技を防がれた事に対して驚いているというよりは、フォンセが放つ邪気にも似た禍々しいオーラを感じ取っているのか、そっちの方を警戒している様子だった。




