モンスター襲来
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「ようやく来たか、ナズナ。待ちくたびれたぞ」
支度を済ませプラタナスの元に辿り着いたナズナは、プラタナスからそう声を掛けられた。
「申し訳ありません。父上。折角、アーロゲントに戻るのであればそのまま戻ろうかと思いまして……支度をしておりました」
ナズナは毎度の如く敬礼をしながら、普段よりも深く頭を下げた。
「まぁ良い。早く馬車に乗ってしまえ、ルピナスも中で待っておる」
プラタナスはそう言うと自分も馬車へと乗り込んでしまった。遅れないようにナズナも後に続いて馬車へと乗り込んだ。
馬車とはいえ王族の血縁者が利用する物。大きさもさることながら、中はまるで高級ホテルの一室のような華やかさがあった。
「相変わらず、随分とお金を掛けているようですね。父上」
ナズナは馬車の内装を見回しながら呆れるように呟いた。恐らくこれが特注である事に気が付いているからだろう。
「はっはっはっ、バレてしまったか。ナズナよ。されど心配しなくとも、民には不自由ない暮らしが出来るよう、税などは上げていないからな」
プラタナスは笑いながらそんな事を言っていたが、もし民に重税を課してまで自分たちだけが贅沢などしていたら、現国王も黙ってはいないだろう。
現国王であるプラタナスの兄も、ここ最近では珍しく民には慕われている王であるからこそ、この国は『平和』なのだろう。
「そうですよ? ナズナ。私たちだけが贅沢な暮らしが出来ても仕方が無いのです。民を第一に考えるのが、この国の法なのですから」
ルピナスもプラタナスに賛同するようにナズナにそう声を掛けた。
「えぇ。そう、でしたね。これから向かう場所にいる『魔女』たち以外には……」
―――「ヒヒィーン」―――
皮肉めいたナズナの言葉は馬のいななきによって掻き消され、プラタナスたちに届くことは無かった。
「何事だ!?」
プラタナスは急に止まった馬車にすぐさま反応して、剣を片手に御者にそう訊いた。
ナズナもほぼ同時に、手元に置いてあった刀に手を掛けながら辺りを警戒している。
「ごっご主人様!! も、モンスターが!!」
声を掛けられた御者は慌てながらプラタナスにそう告げた。
「ここは私が行きましょう。父上は母上たちの事をお願いします」
ナズナは立ち上がり、馬車を今にも飛び出そうとしていたプラタナスを止め、そう告げてから馬車の外へ飛び出した。
「ふっ……言うようになったな、ナズナ。父は嬉しいぞ……」
そう呟いたプラタナスの声は恐らく、ナズナには届いてはいないだろう。




