狼のような大男
「久しぶりだな……ナズナ、そしてリリィ」
寵陽から出るとそこにはナズナ達の予想通りジニアが待ち構えていた。
「わざわざ待っていてくれるなんて随分と親切な追っ手だな……ジニア」
ナズナは軽く笑いながらまるで、冗談でも言うように軽い口調でそう言った。
「まぁ、それは良いじゃないか……それよりも問題は……」
ジニアはそう言いながら後ろを向いた。
『ガハハハ……ヤハリオマエラハグルダッタカ……コレデワタシモ……』
そこには人間の言葉を話す化け物が立っていた。身体中毛だらけで、口からは鋭いキバが見えていた。その姿はまるで狼のようだった。
「ローラン教官……貴方という人は……」
「ローラン騎士団長……貴方という人は……」
姿形が違うとはいえ長い間ローランも一緒にいた二人には直ぐにそれがローランだと気が付いたようで、ナズナとジニアは同時にそう口にした後、一瞬だけ間を開けて武器を構えた。
「こうなってしまったらしょうがない……流石の俺でも一人で相手をするには骨が折れそうだ……手を貸せジニア」
「ふっ、相変わらず自信家な奴だ……背中は任せろ命に変えても守ってやる」
ナズナとジニアは互いにそう言って笑いあうと一気にローランとの間合いを詰めた。
リリィはというと今回はサポートに徹するようで杖を構えて詠唱を始めていた。
「水晶眼の魔女リリィが命ずる。かのもの達を守れ『プロテクション』」
リリィが詠唱を終えるとナズナとジニアの身体に白っぽいオーラが現れた。
「あいつも随分と分かってきたじゃないか」
ナズナは口元を緩めながらそう呟くと、先程よりも更にスピードを上げた。
「はぁ……相変わらず滅茶苦茶なスピードだな……俺も負けてはいられない」
ジニアは一つ溜息を吐いてからそう呟くと、ジニアのスピードが更に上がった。
「まさかこのスピードに着いてこれる奴がいるとは……一体何をしたんだ? ジニア」
戦いの最中だというのにも関わらず、まるで普段の会話と変わらないような緊張感の無さがあった。
「ナズナには出来れば知られたくなかったんだが……仕方無いだろう? 魔法だよ」
ジニアは少し苦笑いをしながらナズナにそう言った。
「なるほど……納得した……俺も今回は手加減してる余裕が無さそうだからおあいこだ」
ナズナはそれだけ言うと視線をジニアからローランへと移した。
『ナニヲゴチャゴチャトイッテイル……ソノヘラズグチキケナクシテヤロウ』
ナズナ達のやり取りをずっと仁王立ちをしたまま聞いていたローランは痺れを切らしたのか、ローランの方からもナズナ達へと迫ると大きな腕を振り下ろした。




