寵陽の郷土料理
「ようこそおいで下さいました……ナズナ様、そしてリリィ様」
屋敷の中に入るとナズナ達を大勢の使用人達が出迎えた。
「……」
「……」
ナズナは大勢の使用人に迎え入れられる何て事は日常茶飯事の事ではあったはずだが、想像以上の使用人の数と屋敷の広さに驚いているようだった。それに比べリリィはあまりの広さに眼を回している様子だった。
「どうかされましたか? もしかしてお名前を間違えてしまいしたか? 申し訳ありません……私達の国とあなた様方の国では少しだけ言葉もイントネーションも違うようでしたので……お許し下さい」
一番前に立っていた恐らくこの屋敷の責任者と思われる初老の男が深々と頭を下げた。
「いや、別に名前はそれで間違い無いから気にしないでくれ……ただ、俺の屋敷よりも大きい事と使用人達の数に驚いただけだ……」
ナズナは深々と頭を下げている初老の男に向かって、慌ててそう言うと頭を上げるように促した。
「恐れ入ります。ナズナ様、リリィ様……それではこちらへお越し下さい。直ぐにお食事の準備を致しますのであちらの部屋でおくつろぎになっていて下さい」
初老の男はそう言うと軽く頭を下げてその場を後にした。
「それではこちらにお願い致します……」
先程の初老の男の代わりに一人の女性がナズナ達を先導して、客間へと入っていった。
ーーーーーー
客間でナズナ達がしばらく待っていると、先程の女性が入ってきて、食事の準備が整ったようで、今度は大広間へと来るように言われた。
中に入るとスタルリード邸の大広間にあった物よりも一回り大きなテーブルに所狭しと並べられたアーロゲントではあまり見掛けない料理の数々がナズナ達を出迎えた。
「どうぞ席にお着き下さい。まずは食事をして頂いてからお話致しましょう」
ミナトは深々と頭を下げながらそう言うと、ナズナ達を席に案内した。
「お口に合うかは分かりませんが、どうぞ召し上がって下さい。ナズナ様が生まれ育った国とは変わった味付けだと思いますので、少々不安なのですが……」
ナズナ達が席に着いたのを確認すると自分も席についてからそう言った。
凄く心配そうな表情をしていたミナトだったが、そんな事も気にせずリリィは黙々と食べ物を口に運んでいた。
「んっく……ナズナ食べないの? 食べないならナズナの分も私食べちゃうよ?」
ナズナはそんな様子のリリィを見て、大きな溜め息を吐いていた。
「躾がなっていなくてすみません……」
ナズナは作法も何も気にしないリリィの食事姿に対して、ミナトに頭を下げた。
「あはは……良いじゃないですか。このくらい元気のある方が可愛げがあるんじゃないですか? だからこそ、ナズナ様も……」
「ごほん……さぁ、俺も頂こう」
このままミナトに話を続けさせると、要らぬことまで話されそうだと悟ったのか、わざとらしく大きな咳払いをしてミナトの言葉を遮った。




