堕天使フォンセ
フードを脱いだ、フォンセの姿を見てローランは驚きを隠せない様子だった。
そこに立っていたのは紛れも無く人間では無かった。耳はエルフのように長く、頭には角のようなものが生えていた。
「フォンセお前は一体……」
ローランは驚きながらもフォンセにそう尋ねずにはいられなかったようだった。
「……改めて名乗らせて頂きましょう。私は堕天使フォンセ……貴方の怒りによって地獄の底から現世に甦りました……どうでしょう? 私と契約しませんか?」
自らの事を堕天使と名乗ったフォンセは、仰々しく来ているコートは靡かせながらそう言った。
「……堕天使?……」
ローランは初めて聞く種族だったようで、もう一度フォンセに聞き返した。
「……元々天使だった者が悪に手を染めるとそう呼ばれるんです……私は貴方に呼ばれるまで地獄にある監獄に閉じ込められていたんですよ。いやー本当に助かりましたよ……あそこは退屈で退屈で」
堕天使という種族の事をしっかりと説明してくれたまでは良かったのだが、何だがフォンセという男が更に得体の知れない者のように感じた。
「……私はお前を呼んだつもりは無いが……それよりも契約とは何だ?」
ローランは更にフォンセに質問を続ける。
「……ふーむ。呼ばれなければ私がここにいる事の説明がつかないんですが……まぁ、良いでしょう。それよりも契約の話でしたね……」
少し不思議そうな表情をして、考えるような素振りをしたフォンセだったが、直ぐに気持ちを切り替えたのか話を続けた。
「私の力で貴方を今よりも強くしてあげましょうという事です。勿論私も慈善事業でやる訳では無いので、ちゃんと代償は頂きますが……」
フォンセはそう言うと口元をニヤリと緩めた。
「私が今よりももっと強く……堕天使の力……そうすれば私もナズナ達に勝てるのか?」
ローランはまるでうわ言のようにそう呟くと、ゆっくりとフォンセに視線を向けた。
「ナズナという人物の事は知りませんが……それは私が保証しましょう。この世界で誰よりも強くなれるでしょう」
嘘か本当かはフォンセの表情から判断は出来なかったが、そんな言葉にすらすがるしかない程、追い詰められている様子だった。
「頼む」
ローランはフォンセの『この世界で誰よりも強くなれる』という言葉で決心したようで間髪いれずにそう言った。
「代償は聞かなくてもよろしいのですか?」
代償の内容を聞く前にそう答えたローランに少し驚いた様子だった。
「構わない……私にはもう後がない。頼む……」
度重なる敗北で騎士団長としての立場すら危うくなっていたローランは懇願するようにフォンセにそう言った。
「分かりました……それでは少しの間痛むとは思いますが我慢して下さい」
フォンセはそう言うとローランに手を掲げた。
それからしばらくの間、その辺り一体にはローランの悲鳴が響き渡っていた。




