フードを被った謎の人物
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時は少し遡り、視点はローランへと移る。
「ぐわぁぁぁーはぁ、はぁ……情けない、情けないぞローラン……ナズナに後れを取るとは……しかもあやつ本気で戦ってはいないようだったし……」
ローランは倒れた木々に埋もれていた自身の身体を無理やり起こす為に、まるで獣のような雄たけびを上げた。
「ならん……ならんぞ……あってはならないのだ。アーロゲント王国の騎士団長であるこの私がただの小僧に負けるなど、あってはならんのだ……」
身体中血だらけになっているのにも関わらず、いやだからこそなのかローランの眼はまるで獲物を狙う獣のように鋭い目付きをしていた。
―――「……」―――
この先にいるはずのナズナを睨むように殺気を放っていたローランのすぐそばに、気配も感じさせず何者かがそこに現れた。
「……!? 貴様何者だ?」
すぐ隣にその者が来てようやくその存在に気が付いたようで、ローランは直ぐに剣を抜いた。
「……あらあらまぁまぁ、そんなに殺気立たなくても大丈夫ですよ? 私は貴方の味方ですから……」
声色から判断すると恐らくこのフードを被った者は男のようだった。
「……良いだろう。話だけは聞いてやろう」
いつの間にかローランが向けた剣を躱し、ローランのすぐ後ろに当たり前のように立っていたフードの男を只者では無いと悟ったのだろう。抵抗する事はせず、剣を鞘に納めてそう言った。
「ふむ。なるほど今の貴方なら怒りに身を任せて私に襲い掛かって来ると思っていましたが……ふむふむ」
フードの男はまるで驚いたようにローランにそう言ったように見えたが、表情は深く被ったフードによって見えなかったので驚いたかどうかは定かでは無い。
「……まずは名を聞こうか? 私はアーロゲント王国の騎士団長をしているローランという」
軽く敬礼をしながらローランはそう言った。どんな相手にも一応筋を通す所が流石は騎士団長といった所なのだろう。
「……ご丁寧にありがとうございます。さて、うーん。そうですね……名前ですか。困りましたね実は私に名前という物は無いのですよ……」
ペコリと頭を下げてはいたが、あまり興味無さそうにフードの男はローランにそう返した。
「……ますます怪しい奴だな……」
そんな答えが返ってくるとは思っていなかったのか、ローランは驚いているのか、それとも呆れているのかどっちつかずな表情をしていた。
「……そうですね。それでは『フォンセ』とお呼び下さい」
自らの事を『フォンセ』と名乗ったフードの男はゆっくりとフードを脱いだ。




