一目見たあの時から……
「リリィ……記憶が無いんじゃ無かったのか?」
ナズナはリリィを振り払う事はせず、ただ疑問に思ったのだろうそう尋ねた。
「確かに……この前話した通りほとんどの記憶は残って無いよ……でも確かに期待されていた事は覚えている。水晶眼の魔女である事がそれだけ私の中で誇りでもあり、重荷だったのかもね」
リリィは今まで見せた事の無いような、乾いた笑いをナズナに見せた。
「……そうか、すまないな……すまないついでにもう少しだけこのままでいても良いか?」
久しぶりに触れた人の温もりが余程懐かしかったのか、ナズナはリリィの腰にそっと手を回した。
「何か子供みたいだね、ナズナ……よしよしいーこいーこ」
リリィはナズナの言葉にいつもの微笑みで返し、ナズナの頭をゆっくりと撫でた。
「……」
普段の態度や言動からは想像出来ない、そこには年相応よりも少し幼い姿のナズナがいた。
「……」
ナズナの様子を見てリリィも茶化す事を辞めて、言葉を口にする事はせず、しばらくの間、そのまま抱き付いたままだった。
「ふぅーありがとうリリィ……恰好悪い所見せてしまったな……もう、大丈夫だ」
数分後ナズナは大きく息を吐いて、そっとリリィから離れながらそう言った。
「うんうん。こっちの方こそ色々話して貰って、その上抱き着いて貰えるなんて役得だったよ」
リリィはやっぱりリリィなのだろう、こんな時でも平常運転だった。
「役得って……そういう言葉は男がいう言葉な気がするんだが……」
いつも通りのリリィの様子を見て、少し呆れたようにナズナはそう言った。
「む。それは男女差別というものですよ? ナズナ君」
ナズナの言葉が少し気に障ったのか、これまた珍しく頬を膨らませて、まるで先生のような口調でそう返した。
「……変わったな、リリィ……最初の頃とはまるで別人みたいじゃないか?」
リリィの様子を見て、ナズナは何処か嬉しそうにそう言った。
「うん? そうかなー自分では良く分からないけど……ナズナがそう言うならそうなんだろうね……もしかして惚れた?」
リリィは顎に手を当てて考えるような仕草をすると、ナズナに微笑み掛けながら、そんな冗談とも本気ともとれる言葉を言った。
「……実は最初逢ったあの日から……」
ナズナもそう言ってリリィの方を儚げな眼で見つめた。
「……え、あ、あの……な、ナズナ!?」
まさかそんな事を言われるとは思っていなかったのか、仕掛けたリリィの方があたふたと忙しなく動いていた。
「……ばーか。冗談に決まってんだろ? お返しだ」
ナズナは慌てているリリィの頭に手を乗せると、そう言って舌を出して笑った。
「……んーもうナズナ何て知らない! べーっだ」
驚いた表情から今度は少し泣きそうな表情に変わって、ナズナと同じように舌を出すと、頬を膨らませて、さっさと先へ歩いて行ってしまった。




