翳りのある笑顔
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―――同日同刻―――
再びナズナ達へと視点は切り替わる―――
「ジニア達の気配が消えた?……」
無事に村から出る事が出来たナズナたちは少しずつ遠ざかって行くオルビドを見ていた。
「あの村はこの世界にあるけどこの世界に存在していないって言うか……うーん。何て言ったら良いかな……」
ナズナの呟きに反応してリリィはそう言ったが、何とも要領が得ない回答であった。
「……? どういう事なんだ、リリィ?」
リリィの回答ではやはり全く理解出来なかったのだろう。再度リリィに訊き返した。
「だから……えっと……あー駄目だ全然言葉が思い浮かばない……ただあの村には普通の人間には入る事が出来ないって事。勿論、視覚する事すらね」
リリィは何とかナズナに伝わるように言葉を探していた様子だったが、結局上手い言葉が見つからず頭をかきながらそう言った。
「……まだ、今一ぱっとしないが、それなら何故普通の人間である俺にあの村が見えたんだ?」
ナズナの言葉はもっともだ。いくら水晶眼の魔女リリィが傍にいたとしてもそれを説明するには心許ない。
「うーん……実はそれも良く分からないんだよね……実際私も入るまで村の存在に気が付かなかった訳だし……よっぽど強力な結界が張り巡らされていると思うんだ……それでも私達が入れたって事は……多分……」
リリィも村に入るまで村の存在に気付いていなかったようで、困ったようにそう言った。リリィが最後まで口にする事が無かったのはその時点でナズナも気付いた事が分かったからだろう。
「……ディアスか」
ナズナがそう呟くと、リリィはこくりと頷いた。
「……あいつは一体何者なんだ? リリィは詳しく知らないのか?」
ナズナはディアスに底知れない力を感じていたようで、少し身体を震わせた。それが恐怖から来る身震いなのか武者震いなのかそれを判断する事は出来なかった。
「ディアス・アマミヤ……何処かで聞いた事がある気がするんだけど、ごめんナズナ実は私、昔の事ってあんまり覚えていないんだ……」
どさくさに紛れてリリィはかなり重大な事をカミングアウトした。
何の前触れも無く、そんな事を言われてしまったナズナはただ一言、謝る事しか出来ないようだった。
「まぁ、そんなに気にしないでナズナ。私に昔の記憶が無くたって今が幸せだからそれでプラマイゼロ……むしろ今ナズナとこうして旅をする事が出来ている事の方が勝っているから全然プラスだよ?」
そう言ったリリィは本当に幸せそうだったが、何処か陰のある表情だった事にナズナも気が付いたのだろう。ナズナはリリィに対し軽く微笑んだ後、しばらくの間遠くの空を見つめていた。




