時を操る魔法
「杖か……貴様も魔法を使うのか?」
ジニアはディアスが虚空から杖を出した事には対して驚いた様子は無く、ただ一言そう尋ねた。
「えぇ、貴方と同じように……」
ディアスはさも当たり前のようにジニアにそう言ってにっこりと微笑んだ。
「……知っているのなら話は早い。それならば俺も魔法を使っても良いんだよな? 恐らく魔力の無いローランにはこの村には辿り着けないだろう。それにここなら誰にも見られる事は無いだろうからな」
ジニアは辺りを見回しながらディアスにそう言った。
「流石は元主席のジニアさんですね……剣の腕も一流な上、魔法まで使えるのでは私には勝ち目が無さそうです……」
あくまでも私は強くありませんよアピールをしているディアスだったが、それと同時にとてつもない圧力が辺りを支配していた。
「……」
ジニアは何とか付け入る隙を探していたようだったが、とうとう会話をする事も出来なくなっていた。
それほどまでに口調や態度とは裏腹にディアスが放つ圧力がとてつもないものだった。
「やれやれ……クロノス貴方は引っ込んでいなさい。流石に貴方の力を借りてはあまりにも実力の差があり過ぎる」
ディアスはジニアの様子を見ながら呆れたようにそう呟くと、クロノスの気配が消えた。それと共に先程までのとてつもない圧力も一緒に消えた。
それでもジニアよりもディアスの方が強いのはジニアも気付いたようで、持っていた剣を力強く握り締めていた。
「出来れば穏便に済ませたいのですが……全て信じて下さいとは言いませんが、私が貴方やナズナ様の敵では無い事だけは信じて下さい」
ディアスはそう言うと手に持っていた杖を床に放り投げ、手を上に挙げた。
「!?」
ジニアはディアスの行動を一瞬理解出来なかったようで、驚いた表情をした後、今が好機と思ったのか迷いながらもディアスに斬り掛かった。
―――「ギャイーン」―――
ジニアの剣に迷いがあったとはいえ、常人なら防ぐ事もかなわない剣撃だったのにも関わらず、それを防いだのは何と先程まで床に落ちていた杖だった。まるでディアスを守るようにディアスの目の前でくるくると回っていた。
「なっ……」
ジニアは剣撃を防がれた事よりも、先程まで床に落ちていた杖がまるで意思を持っているようにディアスの目の前でくるくると回っている事に驚きを隠せないようだった。
「残念です……ジニアさん……クロノス……お願いします」
ディアスがそう呟くとディアスの周りに漂っていた光が一つになりクロノスが姿を現した。
『良いのだな……』
「えぇ、よろしくお願いします。でもちゃんと生かしておいて下さいね……貴方は加減を知らないのですから……」
『むー相変わらず難しい事を言うのだな、まぁ、何とかしてみよう』
クロノスはそう言うと、ただ、本当にただジニアに手を掲げた。
「……」
クロノスがしばらくして手を下げるとジニアはまるで時が止まったようにその場に立ち尽くしていた。
否、本当にジニアだけ時が止まっているようだった。
「……ジニアさんはもっと賢い選択をすると思っていましたが……仕方無いですね……貴方と同じように私もナズナ様の力になりたいだけなのです……かはっ、もう少しだけ持って下さいもう少しだけ……」
少しだけ血を吐きながら、そう言ったディアスの言葉は誰にも届く事は無かった。




