ディアスという男
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「なぁ、随分とご老人が多いようだが、ここに若者はいないのか?」
おじいさんに追いついたナズナはやはり気になってしまったのかそう訊いた。
「ほっほっほ……だから言ったじゃろう? 見捨てられた村じゃと、旅の者のお主等は知らないじゃろうが、この村の名前は『オルビド』かつて国境付近の街として国と国の架け橋になって大いに栄えていたんじゃ」
おじいさんは昔を懐かしむように、もう日も落ちかけた空を見上げながらそう言った。
「国境付近の街……オルビド? 何処かで聞いた気がする……」
ナズナは何処かでその街の名前を聞いたことがあったようで、そう呟き何とか思い出そうとしているようだった。
「オルビド……そうか、ここがそうだったのか……昔父上から聞いた事がある。ある一人の貿易商が罪を犯して、その責任を取らされて街ごと閉鎖させられたと……その貿易商は自分の利益しか考えない奴で、東の国にもアーロゲントにも見捨てられたと……まさか、その街が村として今も尚存在しているとは……」
ナズナはようやく思い出したようでそう言うと、かなり驚いたような表情をしている。
「ほぉ……中々勉強熱心な若者じゃのう……まさかそこまで詳しく知っておるとは……」
おじいさんはかなり驚いた様子でナズナを見ていた。
「……実はアーロゲントから派遣された騎士が俺の父。プラタナス何です……父がご迷惑を掛けてしまったようですみません……」
自分の事では無いとはいえ、自分の身内が街の閉鎖に関わっていたのは事実だったので直ぐに頭を下げた。
「ほっほっほ……なーにお主が謝る事は無い。悪いのはわし達オルビドの人間達の方じゃ、それでもこうして頭を下げて貰えるのは、何処か許されたような気がして嬉しいんじゃがのう」
おじいさんはそう言うと丁度、おじいさんの家に着いたようで、周りの家よりも一際大きな家の前で立ち止まった。
「……ここが私の家です……改めて名乗らせて貰いましょう。この街の、いやこの村の長を務めておるディアスと申します。以後よろしくお願い致します。ナズナ様。そしてリリィ様」
おじいさんが立ち止まってナズナ達の方を向いた時には、先程までのお茶らけた空気は消え、まるで何処かの貴族のような立ち居振る舞いをしていた。言葉遣いもそれ相応なものに変わっていたし、何よりナズナだけならともかくリリィの事まで知っている事にナズナ達は驚き、直ぐに戦闘になっても良いように武器に手を掛けた。




