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見捨てられた村

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 あれからどれくらいの月日が経っただろうか。沢山の山を越え、谷を越え、ようやく東の国との国境付近にある小さな村に辿り着いた。

「随分と小さな村だな……もしかしたらここならゆっくり出来るかも知れないな……」

 ナズナはそう呟くと、少しだけ警戒をしながらゆっくりと村の中へと入っていった。

「……珍しいのう。こんな何もない村に旅人が来るなんて……大したもてなしは出来ないが、ゆっくりしていってくれ」

 村に入ると直ぐに、村人と思われるおじいさんがナズナ達に声を掛けた。

「……俺達の事を国に連絡したりはしないのか?」

 ナズナ達を見ても特に気にする様子も無く、しかも歓迎している様子だったので不信に思ったようで単刀直入にそう言った。

「はて、まぁ心配せんでも良い。訳ありで旅をしているなんて珍しい話ではないさ。それにこの村はどの国にも属しておらん。というよりは見捨てられた村なんじゃ……」

 おじいさんはそう言うと、悲しそうに空を見上げた。

「……分かった。それなら遠慮無く休ませて貰おう。それと食料を少し調達したいのだが、何処か買える所は無いか?」

 ナズナは悲しそうな表情をしたおじいさんを見て、少しは信用したのかそう訊いた。

「すまないが今日はもう遅いからどこも開いていないじゃろう……宿も無い村だからわしの家に泊まると良い。朝なら取れたての新鮮な野菜等が手に入るじゃろう……ほっほっほ」

 おじいさんは笑いながら腰を軽く叩くと、言うだけ言ってとっとと歩き始めてしまった。

「あれっ? 今日はもう遅いって……まだ夕方だよね? ナズナ。私の感覚がおかしいの?」

 リリィは辺りを見回しながら、様子を伺っているようだった。

「いや、リリィの感覚は間違っていない。確かにまだ夕方だ。もしかしたら俺達がいた国とは時間の感覚が違うのかも知れないな……まぁ、恐らくは心配しなくても大丈夫だとは思うが、いつでも逃げられるようには準備をしておけよ?」

 ナズナは少し呆れたようにそう言うと、急いでおじいさんの後を少し駆け足で追い掛けた。

「……随分お二人とも身なりが良く見えるが、駆け落ちでもしてきたのかのう? ばあさんや」

「……いやいや、そんな私達みたいに駆け落ちなんて今どき流行らないんじゃないかのう? じいさんや」

 おじいさんを追って村の中を駆け足で回るような形になったが、至る所で老人達のそんな会話が繰り広げられていた。何処を見ても老人ばかりで若者は一人も見掛ける事は無かった、

 おじいさんが最初に言った見捨てられた村というのもあながち間違ってはいないのかも知れない。

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