『強さ』を追い求める者
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オーブを出てからかれこれ一ヶ月くらいは経過しただろうか。ここに来るまでの間、モンスターに襲われる程度で済んでいたのは、ジニアもルートを調整しながら追い掛けて来ているのも要因にあるのだろう。
まるで、お互いがお互いの考えを読んでいるかのようにうまい具合にすれ違いを繰り返していた。
「……流石にそろそろか……」
ナズナもそれが分かっているようでそろそろ怪しまれる頃だと考えているのか、誰に言う訳でも無くそう呟いた。
「何がそろそろなの?」
リリィが天然なのか、それともナズナが考え過ぎなのか、相変わらず緊張感が無いのは如何なものだろう。
「ん? あぁ、良い加減ジニアに一度会っておかなければならないと思ってな……」
ナズナは考えている事を簡潔にそう述べると、後ろを振り返った。
「?」
やはりと言うべきか、リリィはよく分かっていないようで首を傾げている。
「はぁ……出て来いよジニア……それとローラン騎士団長」
リリィの様子にナズナは溜息を付きながらそう言った。
「やっぱり、バレてたか……流石はナズナだな」
「驚いたな……ナズナ一人でジニアを相手にしたというのもあながち嘘では無いのかも知れんな……まぁ、剣を合わせれば分かる事……いざ、参る!」
木の陰から剣を構えたジニアが現れ、それから少し間が空いて違う方向からローランも現れた。
ローランは姿を現して早々、ナズナの準備が整う前に斬り掛かった。ローランがナズナに斬り掛かってからワンテンポ遅れてジニアもナズナに向かって斬り掛かった。
「全く……容赦の無い人達だ……死んだらどうしてくれる?」
全くと言って良い程、身構える様子も無かったナズナだったが、一瞬ナズナから眼を話した隙に、リリィの腰元から短剣を抜き、背負っていた刀も鞘から抜いた状態で二方向からの攻撃を受け止めていた。
「何っ!?」
「ちっ!?」
ローランはかなり驚いた様子だったが、ジニアはナズナの実力を知ってか、ただ舌打ちをして、ナズナから距離を取った。
「二人共たかが学生相手にだらしがないですね……もっと本気で掛かって来て下さいよ?死んでも知りませんよ?」
ナズナはそう言うと、刀と短剣を胸の前に持って来てゆっくりと眼を瞑った。
「なめるなぁぁー若造がぁぁー」
随分と安い挑発だったが、ローランは気が立っていたのか叫びながらナズナへと斬り掛かった。
「はぁ、こんな安い挑発に乗るなんて俺を試してるつもりですか? でも容赦はしませんよ? 神霍流二刀四ノ型『春宵一刻』」
ほんの一ヶ月で、ナズナは更に強くなったらしい、守るものが出来たという事もあるのかも知れないが、ひとえにナズナの努力の賜物だろう。
この一ヶ月の間も訓練を怠る事はせず、それどころか以前の倍以上の時間を訓練に費やしていた。
「この言葉の通り、俺は今この瞬間ですら無駄にはしない……どんなに高い壁だろうと乗り越えてみせる……そんな俺に勝てると思うか?」
ナズナが放った剣技を見て、ローランは勿論、ジニアやずっと側に居たリリィですら驚いた表情をしている。
「いつまでも、同じ強さだと思ったら大間違いだぞ? 俺は誰よりも強くなってみせる……さぁ、二人同時に掛かって来いよ」
ナズナは挑発するように二人を見ると、刀と短剣をそれぞれローランとジニアに向けた。




