馬車に揺られて
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ナズナ達は次の街へ向かう為、馬車に揺られていた。
「……さて、流石に何時までもお金がある訳では無いから、何処かで手っ取り早く稼げる仕事があれば良いのだが……」
ナズナは持ち金の入った袋を投げてはキャッチし、投げてはキャッチしを繰り返しながらそう言った。
「ナズナ? お金無いの?」
隣にいたリリィは心配そうにナズナにそう声を掛けた。
「……別に無い訳では無いが、流石に何時までもこのままってのもな。東の国に着くまでどれだけの費用が掛かるかも分からないし。用心しておくに越したことは無いだろう?」
流石は王族の血縁者のナズナ。着の身着のまま旅に出たとはいえ、結構な金額を持ち歩いていたらしい。そもそも一般人には馬車に乗るという事自体少ない訳で、御者もかなり驚いていた。
「さて、このままゆったりと行きたい所だが、そうも言ってられなさそうだな……まだ少し遠いがジニアが追って来ているみたいだし」
ナズナはもう既に見えなくなったオーブの方を見ながら、おもむろに立ち上がった。
「ジニアが? 前から気になっていたけど、どうしてそんな事が分かるの? 魔法、じゃないよね?」
リリィは前々から不思議に思っていたようで、ナズナにそう訊いた。
「うーん。何て説明したら良いだろう……しいて言うならリリィと同じく眼が見えてなくても見えると同じような感じなんじゃないか? 俺の場合は魔法何かじゃなくて日頃の訓練とこいつのおかげだけどな」
ナズナはそう言うと、手元に置いてある刀を持ち上げた。
「ふーん。何となく分かったけど、やっぱり不思議だね」
気にはなっていたがあまり興味は無かったようで、リリィはそう言うとナズナから視線を逸らし外の景色を眺め始めた。
「はぁ……人に説明させておいて、それかよ……」
リリィの様子にナズナは大きな溜息を吐いて、呆れたようにそう言った。ナズナのその様子を見てリリィは不思議そうに首を傾げていた。
「まぁ、良い。これ以上この馬車に乗っていたら巻き込む恐れがあるし、リリィには悪いがここからは歩いて向かうとしよう。最悪、野宿とかになるだろうからそこは勘弁してくれ」
ナズナはリリィにそう言うと、料金を支払う為、御者を呼び寄せた。
「すまないな。恐らくは大丈夫だとは思うが、迷惑料だと思って受け取ってくれ……」
ナズナはお金の入った袋の中から無造作に金貨を何枚か掴むと、それをそのまま御者に渡した。
「……!? お客様!? いくら何でも流石にこれは受け取れません……」
御者は想像していた以上にお金を渡されたようで、困惑していた。
「うん? そうなのか? あまり自分で支払い何てした事が無くてな、まぁ気にするな」
ナズナはそう言うと、リリィをお姫様抱っこのような形で持ち上げ、まだ動いている馬車から飛び降りた。
ナズナ達のその様子を御者はただただ、茫然と見ている事しか出来無い様子だった。それとこれは余談になるが、心なしか荷車を引いていた馬でさえ驚いているような、そんな気がした。




