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ナズナの眼

――――――


「ナズナ? 何処に行ってたの? 折角着替えて来たのにナズナがいなくなっていて、置いていかれたかと思っちゃった……」

 ナズナがスタルリード邸に戻ると直ぐに、音に反応したのかナズナの元にリリィが駆け寄ってきた。

着ている服はちゃんと変わっており、僧侶が着るような法衣に似た服を身に付けていた。

 リリィは本当に置いていかれたと思っていたようで、目の端に涙を浮かべていた。

「すまないな……ちょっと野暮用があってな。だが、心配するなリリィを置いて何処かに行くなんて事は、俺が死なない限り有り得ないからな……」

 ナズナはリリィの様子を見て、少し驚きながらも呆れたようにそう言った。

「……それは嬉しいんだけど……私の為何かに命をかけないで割りに合わないよ」

 リリィは一瞬嬉しそうな表情をしたが、次第に暗い表情へと変わっていった。

「はぁ……だからそんなに自分を卑下するなって言ってんだろ? 俺が好きでやってる事だ。例えリリィであってもそれを否定するのは許さないからな」

 ナズナは大きな溜息を一つ吐いた後、少しだけ睨み付けるようにリリィに視線を向けた。

「ひっ……ご、ごめんなさい……」

 ナズナのそんな冷たい視線と魔女の研究施設での研究者からの視線が重なったのか、リリィは短い悲鳴を上げ俯いてしまった。

「坊っちゃま……時にはそのような眼も大切ですが……これから旅を共にする仲間に、ましてや女性にそのような眼を向けるのは感心しませんぞ?」

 ロータスは呆れながら、まるでナズナを諭すようにそう言った。

「ふぅーまぁ、確かにそれはロータスの言う通りかも知れないな……すまない、リリィ。少し気が立っているせいもあったが、仲間に向ける眼では無かったな」

 ナズナは気を落ち着かせる為か、大きく息を吐いた後、少しだけぎこちない笑みを浮かべてそう言った。

「うんうん……私の方こそごめん。忘れようとしてたけど、思っていたよりもあの施設で起こった事がまだ、私の事を縛り付けているんだって、分かったから……」

 リリィは首を振りながらそう言うと、ナズナと同じようなぎこちない笑みを浮かべた。

「さて、流石にそろそろ行くとするか……ロータス迷惑を掛けてすまないが、後の事は上手くやってくれ」

 ナズナは話が一区切りついたタイミングでそう言うと、ロータスに軽く頭を下げた。

「……お任せ下さい……坊っちゃまもお気をつけて」

 ロータスは何も言わずただ頷くと、ナズナ達に向かって深く頭を下げた。

それと同時に他の使用人達も深く頭を下げ、ナズナ達は見送られる形でスタルリード邸を後にした。

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