選んだ人生
「覚悟はしていたとはいえ、人を殺すのはあまりいい気分では無いな……」
ナズナはイーヴァの亡骸を見ながら、少しだけ儚げな表情を浮かべていた。
「……ナズナ、大丈夫?」
リリィはそんなナズナの様子を肌で感じたのか、ナズナの手を握りながらそう言った。
「……まさか、リリィ眼が見えていないのか?」
少したどたどしく、ナズナの手を握って来た事に違和感を覚えたのか、ナズナはリリィにそう訊いた。
「あははっ、流石はナズナだね。これでも気が付かれないように頑張って見たんだけど、ほんの少しの動作で気が付くなんて……」
リリィは悪戯のバレた子供のように、軽く舌を出しながらナズナにそう言った。
「俺の唯一他人に誇れる能力だからな、嫌でも気が付いてしまうんだよ」
ナズナは少し自嘲気味に、リリィにそう返した。
「……何かごめんね。私なんかのせいでこんな事に巻き込んじゃって」
ナズナの様子を察してか、リリィはとても申し訳無さそうな表情をしている。
「……俺自身が選んだ人生だ。リリィが気にする事では無い。それよりもちゃんとした自己紹介がまだ、だったな。俺はナズナ、ナズナ・スタルリード」
少し前まで悩みに悩んでいた青年の表情とは思えないくらい、清々しい表情を浮かべていた。
「う、うん。そうだね。私はリリィ・アプリコット……ナズナは気味悪がらないんだね……この眼に、それに知らない筈の貴方の名前を知っている事に……」
リリィは慌てて様子で、自分の名前を口にすると悲しそうな表情に変わり、そう言ってきた。
「別にそれはお互い様だろう? 良くも知らない男から名前を呼ばれているというのに」
ナズナは特に気にしていない様子で、辺りを見回しながらそう言った。
そう言ったナズナの言葉にリリィはかなり驚いているようだった。
「さて、どうしたものか……流石に全員は連れて行く事は出来ないぞ? かといって何時までもここにいる訳にもいかないか」
ナズナはそう言いながら、未だに気を失っているジニアの元へ向かった。
「おーい。ジニア、斬った本人が言うのもどうかと思うが、大丈夫か?」
この殺伐とした状況下の言葉とは言い難い、気の抜けたような言葉遣いでジニアの肩を軽く叩いた。
「……っ痛……あれっ、俺は……」
ナズナが肩を叩いた事で意識を取り戻したようで、傷口を押さえながらゆっくりと起き上がった。
「思ったよりも、大丈夫そうだな、ジニア。流石だな、割りと本気で斬りかかったんだが、上手く致命傷を避けたようだな」
手加減をする事が出来なかったナズナは、多少は心配していたようで、ジニアの様子を見て安心しているようだった。




