『錬金術師』
「ひっ……化け物ですか? 本当に貴方は人間なのですか?」
先程までの余裕そうな笑みはすっかりと消え、短い悲鳴を上げた後少しずつ後ずさっている。
「こんな事をして何になる? 魔女だって俺達と変わらない人間なんじゃないのか? それを使い捨ての道具のように利用して……」
後ずさるイーヴァを追うように、ゆっくりと歩みを進めながらイーヴァにそう尋ねた。
「……これは人間何かと一緒にしてはいけません……これ一つで世界を滅ぼすだけの力があるのですよ? それを私達と同じ人間だと本当に思うのですか?」
イーヴァはリリィを盾にしながらナズナにそう言った。
「質問しているのはこっちだ……例えリリィにそのような力があっても、俺はお前たちのように道具のように扱ったりは絶対にしない……魔女達にだって『感情』はある。そんな者達の生死を俺達人間が決めて良い訳が無い」
ナズナはようやく己自身の気持ちにけりを付けたようで、はっきりとした口調でイーヴァにそう言った。
「それでは貴方は『感情』があるものなら何とだって分かり合えると言うのですか? 人間同士ですら争うこの世の中で」
イーヴァはナズナを馬鹿にしたような表情を浮かべながらそう言った。
「……確かに、貴様の言う通り難しい事なのは分かっている。でも、俺は分かりえると信じている。人間も魔女も……モンスターのような魔族でさえ……俺は決めたんだ、自分の気持ちにもう嘘は吐かない。やりたいようにやらせてもらうさ」
ナズナは何処か遠い目をしてイーヴァにそう言った。
「……そんな絵空事叶う筈がありません。絶対に……」
イーヴァは何処かこの世界に対して、諦めにも似た感情を抱いているようで、少しだけ切なそうな表情をしていた。
「……貴様に言われなくても分かっているさ……ただ、俺は最後の最後まで抗ってみせる。だから、俺はこんな所で立ち止まる訳にはいかない……覚悟しろイーヴァ」
ナズナはそう言うとゆっくりと刀と短剣をイーヴァに向けた。
「……良いでしょう。ここで私も死ぬ訳にはいきません。私も『錬金術師』の端くれそう易々とやられるわけにはいかないので本気で行かせて貰いますよ?」
イーヴァはそう言うとリリィを突き飛ばし、何やらポケットに入れていた注射器を自分の腕に刺した。
『ぐっ! うわぁぁぁぁぁぁぁ……グゥゥー、ハァ、ハァ』
叫び声と共に見る見るうちにイーヴァの姿は膨れ上がり、イーヴァは大きな狼のような化け物に姿を変えた。
「貴様何を!?」
ナズナは今起きている事に理解が追いついていないようで、信じられないといった表情を浮かべている。
『これが私の求めていた力の一端だ……流石の貴様でもこの状態の私を相手にするのは厳しいだろう?』
イーヴァは狼の化け物の姿になったせいか口調も荒々しくなり、先程とは比べ物にならないプレッシャーを放っている。




