反逆者
「はぁぁぁーリリィー無事か!?」
部屋へ入るや否や辺りのものを手当たり次第破壊しながら、ナズナはリリィの名前を叫んだ。
「な、ナズナ?」
先程まで、恐怖で震えていたリリィにナズナの声が届いたのか、ほんの少しだけ眼に光が宿った。
「イーヴァ貴様こんな時間に何故こんな所にいる? リリィに指一本でも触れてみろただでは済まさないぞ?」
ナズナは瞬時に状況を判断して、今まさにリリィに手を掛けようとしていたイーヴァを睨み付けながらそう言った。
「これはこれは、ナズナ殿と……ジニア殿ではありませんか? そんなに慌てて、お二人こそこのような時間にどうしたのですか? 私はただ忘れ物を取りに戻っただけですのであしからず……」
イーヴァはナズナ達に視線を向けると、あくまでも忘れ物を取りに来たという所を強調して、口元に気持ちの悪い笑みを浮かべながらそう言った。
「そんな御託はどうでもいい。まずは手をあげたままリリィから離れろ」
そんな様子のイーヴァをナズナは一切信用していないようで、質問に答えることもせずそう言った。
「はいはい。ナズナ殿の言葉はプラタナス伯爵の言葉と同義。大人しく従いましょう……何て、私が言うと思いましたか?」
イーヴァはナズナの言葉に大人しく従うように、始めは手を上げてリリィから離れようとしていたが、ほんの一瞬だけナズナが視線を逸らしたタイミングで、一気にリリィの側まで移動し自分の盾としてリリィを自分の前に立たせた。
「形勢逆転ですかな? まさか、ナズナ殿ともあろう御方がこのようなものに御執心とはいやはや驚きましたよ。ふふふっ」
そう言いながらリリィの首に付いた鎖を締め上げた。
「ぐっあっ……くる、しいよ」
リリィはその瞳に絶望の色を写しながら、痛みと恐怖で涙を流していた。
「イーヴァ、貴様……」
リリィを人質として取られてしまっては迂闊に動く事が出来なくなってしまい、ナズナは手を力強く握り締め、口の端からは血を流していた。
「ふふふ……はははっ……良いですねぇ。やはり美少年の苦しそうな表情もそそられるものがあります? どうです? 貴方も私のものになりませんか?」
イーヴァはナズナのそんな表情をまるで、エサを前に待たされているペットのように涎をだらだらと流しながら見ていた。
「さぁ、お楽しみはここからです。私から逃げられると思わない事ですね? いくらプラタナス伯爵のご子息とはいえ、これは立派な国への反逆。ただでは済むとは思わない事ですね」
イーヴァはそう言うとポケットに手を突っ込み、何やらボタンの付いた装置を取り出した。




