迫り来る恐怖
―――同日同刻―――
ナズナ達が急いで魔女の研究施設へと向かっている途中、リリィは先程までの無表情が嘘のように、驚いたというよりは絶望に近い表情に変わっていた。
実際にまだ何か事が起きた訳では無いようだったが、リリィの身体は恐怖で震えているようだった。
「えっ!? どう、して……どうして今日なの? 予定ではもっと後のはずだったのに……」
何やら予想していたタイミングよりも早かったようで、リリィはかなり驚いた様子だった。
「今日、ナズナに逢って、私がこんな事を思ってしまったから未来が変わってしまったというの? 私にはそんな事すら望む事も出来ないの?」
リリィは布団に隠れるように包まり身体を震わせながら、綺麗な瞳からは大粒の涙を流していた。
「……何を泣いているのですか? 水晶眼の魔女、リリィさん?」
そんな泣いているリリィに追い討ちをかけるかのように、暗がりから足音と共にそんな声が聞こえてきた。
「……ひっ」
足音が徐々に近付いてくるのを聞きながら、男の姿が見えた瞬間リリィは短い悲鳴をあげた。
「どうして泣いているのか聞いているのですが……所詮は少女ですか……泣くのであればもっと盛大に泣いて欲しいのですが……やる気が無くなってしまいます」
月明かりに照らされ、ようやくその男がイーヴァである事を確認出来た。イーヴァは身体を震わせながら泣いているリリィを見て、興奮にも似た高揚感を感じているようで、気持ちの悪いくらい口元が緩んでいた。
「王からは殺すなとも言われていますが、早く研究成果を上げろとも言われています。私はどうしたら良いと思います? リリィさん」
今度は困ったような表情をしながら、イーヴァはそう言った。その間中リリィは身体を震わせたままま頭を振っていただけだった。
「それはですねーあなたの眼を頂こうかと思っているんです。その眼さえあれば私の仮説は必ず立証されるはずです」
勿体ぶるようにイーヴァは少し間を空けながらそう言った。
「あなただって死にたくはないでしょう? 心配しなくても別にあなたを殺しはしません……ただ、眼が見えなくなるだけです。あははっ、そもそも眼は見えないんでしたっけ?」
イーヴァは笑いながらまるで常人とは、思えないような事を言っていたが、ある程度予想は出来ていたのか驚くような表情はしなかったリリィだったが、イーヴァの手から逃れる為、繋がれて鎖を外そうと四苦八苦しているようだった。
「ふふふ……良いですねぇ。その表情、もっと虐めたくなってしまいます」
イーヴァはそう言いながら、口元に気持ちの悪い笑みを浮かべ、ゆっくりとリリィに近付いて行った。




