満天の星空
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視点は急に一変して、今度は一人で夜道を歩くナズナの姿が写し出された。
どうやら、ジニアと別れて直ぐだったらしくまだプラタナス達の元には辿り着いていないようだった。
「ったく、何だっていうんだよ、この痛みと声は……さっきよりも痛むし、声も微かに聞こえてたのが今じゃはっきりと聞こえてきやがる」
少しはましになったように見えていたが、ジニアと別れた直後からまた痛みだしたようで、足取りは先程よりもおぼつかない様子だった。
「あーもう、これはあまりにも痛すぎる……何だよこの痛みと声は、どんどん大きくなっきてる。これ以上こんなのが続いたら気が狂いそうだ。もしかして、さっき逢ったリリィが原因なのか?」
軽く叫ぶようにナズナはそう言うと、頭を抱えるようにその場にうずくまった。普段あまり感情を表に出さないナズナがそのような行動を取るということは、相当痛みと声が大きくなっている証拠だろう。
「……気持ちも何か不安定だし、一体なんだって言うんだよ。それに何でこんなにもリリィの姿が頭から離れないんだよ……」
ナズナは自分の服が汚れるかも知れない土の上だったのにも関わらず、そんな事は気にせずそのまま勢いよく大の字で横になった。
「はぁー」
ナズナは横になったまま、ゆっくりと大きな溜息を吐き空を見上げた。
「……そう言えば、最近は忙しくて、こんな風に星空を見上げる事も無かったな……昔はよく兄上と星空を見上げていたのに忘れていたよ。星空ってこんなに綺麗だったんだな」
ナズナは満天の星空を見上げながら、少し懐かしそうな表情をしてそう言った。
「はぁーこの何処までも続く星空を見てると、自分がどれだけちっぽけな存在だって思い知らされてる気分になるな」
ナズナはもう一度溜息を吐くと、そんな気持ちを振り払うかのように星空から視線を外した。
「全く……このままじゃ、何も手につかないな。仕方無い、さっき別れたばかりだがジニア先輩を追いかけて、リリィとやらに逢いに行くとするか……」
ナズナはそう言うと思いっきり勢いをつけてその反動で起き上がった。体調を崩しているのにも関わらず、そんな動きが出来るのは流石ナズナと言うべきなのだろう。
「この行動が正しいのか、俺にはまだ分からないけど……これ以上自分の気持ちに嘘を吐いて生きていくのはもう、疲れた……ジニア先輩やドクトル先生も俺と同じ思いをしているようだし、父上や母上には申し訳無いけど、これからは自分に正直に生きよう」
ナズナは誰に言う訳でも無く、自分自身にでも言い聞かせるように力強くそう言った後、リリィに逢う為にジニアの向かった方向へ走り出した。




