月明りに照らされた少女
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―――同日同刻―――
その部屋の中にある、ただ一つの窓から降り注ぐ月明かりに照らされている少女がいた。
子供とも大人とも言い切れないそんな年頃の少女には、あまりにも簡素過ぎる布団の上に座り、まるで何かを待つように窓の先を見つめていた。
その少女の眼『水晶眼』には窓から見える満月が綺麗に写り混んでいた。
その特徴のある眼から、ここは魔女の研究施設でこの少女の名はリリィという事が分かった。その少女をよく見てみるとその透き通るような白い肌のあちこちに、切り傷や火傷の痕があるのが見受けられ、何処かやるせない思いを感じさせた。
「今日もやっと終わった……でも、今日はようやくあの人の姿を実際に見れたんだ」
表情には表れていなかったので、どんな気持ちでそんな事を呟いたのかは想像でしかないが、少し嬉しそうに感じた。
このような境遇にいるにも関わらず、その水晶のような綺麗な瞳に絶望の色が写っていないのは、『あの人』と呼ばれた人物の存在が大きく関係しているのかも知れない。
「ねぇ、『ゾディアック』? あの人……ナズナは来てくれるのかな?」
まるで独り言のように自分の中にいる誰かに向かって、そう問いかけているように見えた。
しかし、そんな事よりもまず『あの人』の正体がナズナだという事に驚いた。無論、ナズナの様子を見ていた限り、少なくともナズナはリリィの事を知らないようだったからだ。
何故この少女はナズナの名前を知っているのだろう。そんな疑問なんて今はほんの些細な事なのかも知れない。
「そうだよね。『星の記憶』はこれから起こる未来そのものなんだもんね。私にそう見えたならそれは起こるべくして起きるんだよね。それがどんなに楽しい未来でも、どんなに辛い未来でも……」
やはりリリィの中に何かがいるのだろう。明らかに誰かと会話をしている様子のリリィからは何処か諦めているような、そんな雰囲気に感じた。
『ゾディアック』『星の記憶』それぞれ星を意味する言葉が入っているが、何か関係があるのだろうか? そんな初めて聞く言葉だらけだったが、ただ分かるのはリリィがナズナの事を待ち焦がれているということ。そして、やはりこの少女には不思議な力が宿っているという事だけだった。
「早く逢いたいな……声が聞きたいな。さっきは結界越しだったからどんな声か分からなかったし。こんな私でも好きになってくれるのかな? 守ってくれるのかな?」
まるで恋する乙女のような、そんなリリィの儚い言葉は誰の耳にも届くことはなかった。
しかしこれから数刻の後、この国に、いやこの世界に大きな変化が起こるそんな予感がしてならなかった。




