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言い掛けた言葉

 急に話を打ち切られ、ナズナは先程よりも困惑した表情をしていると、音も立てずに先程の女性店員アカシアが現れた。

「お話は終わったようですね……もうお会計でよろしいですか?」

 急に音も立てずに現れた事にナズナはかなり驚いた表情をしているが、ジニアは特に気にしている様子は無かった。

「そうだな、あまり長居をしてもプラタナス伯爵達を待たせているナズナに悪いし……会計を頼むよ」

 ジニアはそう言うと銅貨を数枚机の上に置いて立ち上がった。

「残りはアカシアさんが貰ってくれ……」

 そう言ってジニアは部屋から出て行った。それに慌ててナズナは着いて行った。

「かしこまりました……いつもありがとうございます」

 アカシアはそう言うと頭を下げてジニア達を見送った。

「……御馳走になって良かったのですか?」

 ナズナはジニアに着いて行きながらそう尋ねた。

「あぁ、そんな事は別に構わないさ。これでも働いている身だからな。そもそも今日は俺から誘ったんだし、プラタナス伯爵達を待たせてしまっているのも事実だしな」

 ジニアは全く気にしていないようで、あっけらかんとした表情をしている。

「それでは、ありがたく御馳走になります。ありがとうございました」

 ナズナはそう言って、深々と頭を下げた。

「全く、変に礼儀正しい奴だな。俺は正直敬語なんて大の苦手だから、そんな口調で話せるお前が羨ましいよ」

 ジニアは羨ましそうな目をして、ナズナの方に視線を向けた。

「いえ、別に私のは癖といいますか……目上の人と話をすると無意識で敬語になってしまうだけですよ」

 少しだけ照れ臭そうにナズナはそう言った。

「それなら、尚更羨ましいよ。育った環境でここまで違うのは驚いてしまうよ」

 感慨深そうにジニアはそう言った。

「私にとっては『王族の血縁者』なんて肩書き邪魔なものでしか無いんですけどね……すみません。聞かなかった事にして下さい」

 羨ましそうにナズナの方を見ていたジニアに対し、ナズナはつい口を滑らせてしまったようでバツの悪そうな表情をしている。

「……確かに、そうだよな。どんな境遇や立場にも利点と欠点は付き物だよな。俺の方こそすまない。安心しろナズナ。今のは聞かなかった事にしとくからさ」

 一瞬悩むような仕草をした後、少し申し訳無さそうな表情をしてジニアはそう言った。

「それでは、もうこのような時間ですし、私は父上達の元へ戻ります。今日は色々とありがとうございました」

 話をしながらしばらく進み、分かれ道が差し掛かった辺りでナズナはジニアにそう言った。

「確かにもうこんなに暗くなっているとはな。こっちこそ時間を取らせてすまない。最後に一つだけ良いか?」

 ジニアはすっかり暗くなってしまった空を見上げながらナズナにそう言った。

「何でしょう?」

「ナズナ……俺と一緒に……いや、やっぱり何でもない……」

 ジニアは何やら言葉を言いかけたが、直ぐにそう言って言葉を濁した。

「……そうですか。それではまたいつかお会いしましょう」

 ナズナはジニアの言葉の続きが気になった様子だったが、敢えて聞き返す事はせず軽く頭を下げ、ジニアと別れプラタナス達の待つ宿へ向かい歩き始めた。

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