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『戦姫』の纏う空気

「ドクトル殿、お久しぶりです。ご迷惑をお掛けしてすみません」

 プラタナスは今更気が付いたドクトルに対し、呆れる事も驚く事もせず、さも当たり前のようにそう言った。ドクトルの事を知っているプラタナスにとってはこれが当たり前の事なのだろう。

「ほっほっほっ。久しいな、ちょっと前まで悪ガキだった小僧が今や家庭を持っているとは、時が経つのは早いのう」

 ドクトルは昔を懐かしむように、天井を見上げながらそう言った。

「それはドクトル殿に出会ってからもう三十年経ちますからね。流石にいつまでも子供のままではいられませんよ」

 プラタナスも昔を懐かしむようにそう言った後、少し頭をかくような仕草をした。

「そんなに経ったか、通りでわしも最近体が重い訳じゃ。ほっほっほっ」

 ドクトルは腰を叩き、笑いながらそう言った。

「お体だけはお気をつけて下さいよ? ドクトル殿。まだまだお元気で居て欲しいのですから……」

 そんな二人の会話を見ていたルピナスはドクトルに笑いかけながらそう言った。

「ん? 何じゃルピナスもおったのか? あんなにかわい子ちゃんだったのに、すっかり『おばさん』になったようじゃのう。おかげで全く気が付かなかったぞ?」

 ルピナスに声を掛けられ、これまた今更気が付いたようでドクトルはそう言った。

「誰が『おばさん(・・・・)』ですって? いくらドクトル殿とはいえ、その言葉は黙って飲み込めませんよ?」

 ドクトルの『おばさん』という言葉に反応して、一瞬でルピナスが纏う空気が変わった。流石は昔『戦姫』と呼ばれていた女性だ。その殺気にも似た圧力にナズナは圧倒されているようだった。それに対し他の三人は特に圧倒される様子も無く、平然としている。

「まぁ、まぁ落ち着けルピナスよ。お主がそんな状態でいると余計ナズナの体調が悪くなってしまうぞ?」

 ドクトルはルピナスをなだめるようにそう言って、ナズナの方に視線を向けた。

「……ふぅ、あら失礼? 私とした事が、おほほほ……大丈夫、ナズナ?」

 ルピナスは一つ息を吐いた後、大げさに口元を押さえながら笑い、ナズナに声を掛けた。

「えっえぇ。それは問題無いのですが、母上のその殺気というのですか、圧力を久しぶりに拝見しましたが、まだまだ圧倒されてしまいます。私も力不足ですね」

 少し慌てた様子をしながらそう答えたナズナは、手を力強く握り締めているようだった。

「さて、気乗りはせんが診てやるから着いて来い。ナズナとやら」

 ドクトルは二人のやり取りが終わった後、気を取り直すようにナズナに声を掛けた。

「……はい。よろしくお願いします、ドクトル殿」

 ナズナはそう言うと、先程よりはしっかりとした足取りでドクトルの後を着いて行った。

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