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白衣の老医

 そんなタイミングで遠くからジニアらしき声が聞こえてきた。

「先生、早くして下さい。そんな毎度毎度興味深そうに魔女達なんか見ていないで……」

「ほっほっほっ、相変わらず皆、かわい子ちゃんばかりじゃのう。一部野郎も混ざっておるのが残念じゃが……あぁ、わし、ここで暮らしたい」

 しばらくするとジニアと共に、結界に張り付き食い入るように魔女達を見ている白髪の老人が、ナズナ達の前に現れた。

「? あれっ、どうしてこんな所にいらっしゃるんですか? あそこで待っていて下さいと申し上げた筈ですが……それよりもナズナ殿は大丈夫なのですか?」

 ジニアはナズナ達に気が付き、ナズナの方を見ながら驚いた様子でそう言ってきた。

「なんじゃ、野郎か。ナズナとかいう名前だからかわい子ちゃんを想像しておったのに、全くやる気が無くなったわい」

 老人はジニアの目線を追ったのか、しっかりとナズナの方を見てがっくしと肩を落とし、興味を失ったのか再び結界に張り付き、食い入るように魔女達を見始めた。

「どうしてこうも、ドクトル先生は……折角良い腕を持っているのにただの街医者止まりなのは、こういう所があるから何ですが……全くもったいないです。皆様申し訳ありません」

 ジニアは呆れたような表情でドクトル先生と呼ばれた老人を見ながら、ナズナ達に頭を下げた。

「そんな事は別に構わないが、それよりもこの結界って触っても問題無いものだったという記憶は無いのだが? ドクトル殿は大丈夫なのか?」

 ドクトルに視線を向け、プラタナスは少し思い出す素振りをしながら、ジニアにそう訊いた。

「いえ、本来は触れると、死にまではしませんが意識を失う程の電流は流れているはずですが……ドクトル先生には何故か効果が無いんですよ。ですので、そういう事を含めてこの施設で体調を悪くした兵や魔女を見て貰う為、国が雇っているという訳なのです……」

 ジニアも不思議ではあったようで、少しだけ呆れたようにプラタナスにそう答えた。

「そうだったのか……ドクトル殿とは、昔からの知り合いだったのだがそれは初めて知った。流石はドクトル殿だな」

 プラタナスは何処か納得したように頷いている。

「ん? 何じゃ。プラタナス居たのか? って事はナズナとはお前の息子だったのか。何故それをもっと早く言わん。そういう大事な事は先に言え、危うくこのまま帰る所じゃったぞ?」

 今更ながらプラタナスの存在に気が付いたのか、白衣を翻しながら結界から離れ、ずれ落ちた眼鏡の位置を直しながらプラタナスに視線を向けた。

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