『水晶眼』の少女
そんな様子を知ってか知らずか、ジニアは次の部屋へと向かって先程よりも気持ち歩みを早めていた。
「ここはまだ、魔力が低い魔女達の部屋になります。低いとはいえ魔法を使えない私達にとっては十分恐怖になりえる存在なのですが……更に奥にはもっと魔力の強い魔女がいるのでそちらもご案内致します」
ジニアはそう言うと、先程よりも更に頑丈そうな扉の鍵を開け始めた。先程の鍵が一本だけであった事を考えると一本では無く何本も必要なようで、この先にはこの国にとってここにいる魔女達よりも、もっと重要な魔女がいるのだろうという事は、それだけで容易に想像が出来た。
「ぎゃぁぁぁー」
扉を開けた瞬間、悲鳴が聞こえてきた。声からでも想像は出来たが、悲鳴が上がった方を見るとやはりと言うべきかまだ年端もいかない少女のようだった。手足は拘束され椅子に座らされている。目は隠されており表情を確認する事は出来なかった。
「申し訳ありません。丁度実験の真っ最中のようですね。少々お見苦しいでしょうが、何卒ご容赦下さい」
ジニアはそう言うとナズナ達に頭を下げた。
「これはこれは、プラタナス伯爵、ルピナス殿、そして……ナズナ殿でしたかな?」
中に入ってしばらく実験の様子を眺めていると、皺だらけの白衣を着た、だらしの無さそうな男がナズナ達に声を掛けてきた。
「久しぶりだな元気にしていたか? イーヴァよ。相も変わらず研究熱心だな。研究に熱中して壊すなよ?」
プラタナスはイーヴァにそう返すと笑っていた。
「流石の私でも百年に一度と言われている『水晶眼』の魔女をそう易々と壊して何かいられませんよ。そんな事をしたら私の命がありませんからね」
イーヴァもプラタナスと同じように笑いながらそう言った。
「……あの『水晶眼』ですか?」
ナズナはこの状況に対しもやもやとしている様子を勘付かせない為か、一つ深呼吸をしてから二人にそう訊いた。
「そうだ。伝承にも出てくる『水晶眼』の魔女の事だ。我が国が数年前発見して、ここで研究しているという訳だ。この存在を知っているのは王族の関係者を除くとここにいる研究者とここの警備をしているジニア達、一部の兵士だけだ」
伝承で聞いた言葉だったからか、何処か考えているような表情をしているナズナにプラタナスはそう返した。
「『水晶眼』はナズナ殿も知っての通り、百年に一度生まれると伝えられている魔女の事です。その魔力はここにいる全ての魔女の魔力を足してもまだ足りないくらいと言えば、伝承があながち間違いではない事がお分かりになるでしょう。だからこそ何とかして研究をしているのですが、ここまでの魔力となると中々制御が難しくて困っているんですよ」
ナズナ達が会話を続けている間にも、実験は続いていたらしく、時折悲鳴が聞こえていた。




