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『鬼神』と『戦姫』

しばらく進むと、奥に頑丈そうな扉が見えて来た。その扉の前でジニアは立ち止まりナズナ達に声を掛けて来た。

「プラタナス伯爵とルピナス殿は何度かいらしているので大丈夫かとは思いますが、ナズナ殿の為に今一度お願いを申し上げます」

目的地に到着したようでジニアは立ち止まり敬礼をしながらそう話し始めた。

「ご存知の通り、ここから先は魔女の研究施設となります。結界も張ってあり、兵士も相当な数、配備しております。安全には最大限注意を払っておりますが、万が一という事もありますので行動は制限させて頂きます」

 お決まりの言葉なのか、詰まる事無くジニアはそう言った。

「分かっておるよジニアよ。心配せずとも勝手な行動はせんよ。もし勝手な行動をした時は自己責任で構わんのだよな?」

 プラタナスは最初から勝手な行動をしますと言わんばかりにそう言った。

「確かにそうではあるのですが……私にもここの責任者としての立場もありますので、何卒よろしくお願い致します」

 ジニアは少し苦笑いをしながらプラタナスにそう言った。

「はっはっはっ。分かっておる。心配せずとも何かあっても、私とルピナスの実力はそなたも知っているだろう? そなたも素晴らしい腕を持っているようだがな」

 プラタナスは笑いながらジニアにそう言った。その様子を見ていたルピナスも頷いている。

「流石は『鬼神』と『戦姫』と呼ばれたお二人だ。戦わずして相手の実力を測るとは感服致します」

 一瞬だけ驚いた表情をした後、深々と頭を下げながらそう言った。

 今のナズナにはジニアがどれほどの実力を持っているのか、正確には分からないようだったが、少なくとも自分より実力が上である事は気付いているだろう。

「流石はジニア先輩ですね。私も負けないようにもっと訓練を積まなければ」

 ナズナはジニアにそう声を掛けると、ジニアは驚いたようにナズナに視線を向けた。

「何を言ってるんですか? ナズナ殿。イストワール士官学校始まって以来の『天才』だという噂は兵士たちの間でもかなり有名ですよ?」

 ジニアはプラタナス達も聞いているという事もあり、かしこまった口調でそう言ってきた。

「そんな事はありませんよ。もし兄上がイストワール士官学校に通っていたら、その称号は間違い無く、兄に付けられていた物のはずです。私などまだまだですから」

 ナズナは少し俯きながら、自分の胸に手を当てそう言った。

「それほどまでに、自分の実力を冷静に判断出来る能力を持っているナズナなら、これから先もっともっと強くなる事が出来るだろう。俺も先輩としてその活躍を楽しみにしているよ」

 そう言ったジニアが年相応なフランクな口調だったのは兵士としてでは無く、士官学校の先輩としてその言葉を伝えたかったからなのだろう。

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