東の国
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ナズナはダリア王の元を後にして、王宮を軽く見て回りながら出口へと向かっていた。
「随分と王宮内の兵士の数が少ないようだが、これは先程ダリア王が言っていた、東の国への調査のせいなのだろうか」
ナズナは誰に言う訳でも無く、辺りを見回しながらそう言った。兵士の数は本当に必要最低限の人数しかおらず、それがこの国が『平和』であると証明しているかのようだった。
「それにしても、相変わらず無駄に広いな……まぁ、そこが中々面白くもあるんだが……」
ナズナはよく本を読んでいる事もあり、武器以外にも歴史について興味を持っているようだった。そんなナズナが楽しそうな表情で王宮を見て回っているのは、当たり前と言えるのかも知れない。
「出来ればこの目で東の国も見てみたいものだが……今の俺の実力では父上達の足元にも及ばない。ダリア王の言っていた通り、兄上が帰ってきたら久しぶりに連絡して話を聞いた後、稽古でもつけてもらおう。もっと強くなれるならどんな屈辱だって耐えてやるし、どんな事だってしてやる……」
普通の人間なら自分の目標としている人物がいて、その目標としている本人に稽古をつけてもらうなんて屈辱以外の何ものでもないだろう。
ナズナが最後に言った言葉には少し危うさすら感じるが、それがナズナという人物なのだろう。
「さて、寄り道はこのくらいにして、父上達の元へ急ぐとするか……」
ナズナは考えていた事を振り払うかのように、軽く首を振った後、そう言って出口へ向かって歩みを進めた。
しばらく歩いていると王宮の出口でプラタナス達が待っているのを確認出来た。ナズナはそれに気が付くと、先程よりも少し駆け足でプラタナス達の元へと向かった。
「ようやく来たか、待ちくたびれたぞ、ナズナよ。ところで今回は兄上にどんな武器を貰ったんだ?」
プラタナスはそう言うと、ナズナが腰に下げている短剣に目線を向けた。
「はい、ご覧の通りこの短剣を頂きました」
ナズナはそう言うと、腰から短剣を外し鞘ごとプラタナスに渡した。受け取ったプラタナスは鞘からすっと短剣を抜いた。
「ほぉ、これはまた見事な短剣だな。この『菊』の装飾も見事だ」
「あらまぁ、綺麗な『菊』ねー」
プラタナスとルピナスは短剣を見ながら、同じような感想を口にしていた。ただ一点、プラタナス達の口から『菊』という言葉が出た事にナズナは驚いているようだった。
「父上達はこの花をご存知なのですか? ダリア王の話だと東の国にしか咲かない花だと伺ったのですが……」
ナズナは二人の口から『菊』という言葉が出て来るとは思っていなかったようで、直ぐさま訊き返した。




