フォンセの忠告
ジニアを自らの手で殺めたナズナはそのまま、時の檻に閉じ込められているフォンセの元へとゆっくりと歩を進めた。
「……次はお前だ……」
ナズナは感情を失ったような、冷たい眼でフォンセの事を見つめていた。
「……このまま殺すというのも芸が無いな……」
そう呟いたナズナの口元は微かに緩んでいた。ナズナは手を天井に翳すと時の檻に似た結界のようなものをナズナとフォンセの周りにだけ出現させた。
「……これなら奴も逃げられまい……さて、クロノス頼む……」
『御意』
ナズナがそう呟くと、時の檻は崩れフォンセが動き始めた。フォンセは何が起きているのか分からないようで、辺りを見回していた。
「……よう……元気か?」
辺りを見回している所に、自分が殺したはずの人間が現れれば誰でも驚くだろう。
「……どうして、貴方が生きているのですか? それにこの状況は……」
フォンセはかなり驚いたような表情をしていたが、流石は数々の死線を潜り抜けて来たでけの事はある。直ぐに状況把握に努めているようだった。
「もっと驚くかと思ったが……流石はフォンセだな……冥土の土産に教えてやろう……」
ナズナはそう言うと、胸に手を当てた。その行動が合図のようにナズナの後ろにはクロノスが現れていた。
「時の精霊……『クロノス』……なるほど、そういう事でしたか……」
フォンセはクロノスの事を知っていたようで、クロノスの姿を見た途端全てを察したようだった。
「という事は、あの人はアマミヤさんだったんですね……」
ディアスの事もやはり知っていたようで、というよりは思い出したようだった。
「……リリィの事を危険にさらした罪、死をもって償って貰うぞ?」
ナズナが何も言わずとも全てを察してくれた事に気が付いたようで、それだけ口にした。
「……ところでジーニアス……いや、ジニアはどうしましたか?」
フォンセの方には戦う意思が無いのか、ナズナが剣を向けているというのにも関わらず、自分の息子でああるジニアの事を訊いて来た。やはり堕天使とはいえ、親が子を思う気持ちは変わらないのかも知れない。
「……直ぐにお前も同じ所に送ってやるよ……」
ナズナはそれだけ言うと再度剣をフォンセに向けた。
「……そうですか……分りました……ようやく死ねるのですね……」
そう呟いたフォンセ目掛けて刀を振り下ろした。
「……がはっ……最期に……ナズナさん……貴方に……忠告しておきましょう……」
一撃では死なない辺りは流石堕天使と言った所だろう。血を吐きながらもナズナに対して話を続けた。
「……クロノスの力は強大です……人間である貴方が使い続ければ間違い無く早死にする事になるでしょう……それと貴方は私と同じ匂いがします……くれぐれもお気をつけて……」
フォンセは言う事だけ言ってしまうとそのまま息を引き取った。立て続けに二つの命を奪ったナズナは今、どのような気持ちでいるのだろう。ナズナが纏う空気が一瞬禍々しいものに見えたのは気のせいなのだろうか……




