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ただ一人……大切な人の為に

「ダメーーー」

 ナズナが頭を垂れたジニアに剣を振り下ろす直前、時の檻に閉じ込められているはずのリリィの声が辺り一帯に響渡った。

「……はぁ……やはりとんでもないな水晶眼の魔女は……」

 ナズナは大きな溜息を吐くと刀を鞘に納めてしまった。

「はぁ……はぁ……はぁ……」

 リリィはかなり無理をしたのか息絶え絶えになっていた。

「なぁ……クロノス……もしかしてそんなに強くない精霊なのか?」

 ナズナは困ったような表情を浮かべながら胸に手を当てていた。

『それは心外だな……と言いたい所だが……その少女が水晶眼の魔女でその上、我と同等の星の精霊『ゾディアック』と契約しているとなれば、流石の我でも抑えきるのは難しいだろうな……それにそもそも……いや、これ以上は後にしようか』

 ナズナの呼びかけにより姿を見せたクロノスは少し不機嫌な様子だったが、相手が悪い事は始めから分かっていたようだった。

「……なるほど、俺にもっと力があれば抑えられるって事だな……まぁ、期待して待っててくれ……」

 クロノスが最後に言い掛けた言葉を察したのか、ナズナはそう言うとゆっくりとリリィの方へと近付いていった。それを確認したクロノスは何も言わずにナズナの中へと戻っていった。

「……それで、リリィは本気で俺がジニアを殺すとでも思ったのか?」

 ナズナはリリィの元に辿り着くと、座り込んだリリィを見下すような形でそう問い掛けた。

「……今のナズナは私の好きなナズナじゃないから……」

 一瞬怯えるような仕草をした後、覚悟を決めたのか立ち上がりナズナを睨みつけてそう言った。

「……心配するな……俺がどうなろうとお前の事は守ってやる……だから……」

 ナズナはそう言うと、リリィ首目掛けて手刀を振り下ろした。

「っ……な、なず……な」

 魔法耐性は高くても物理耐性が高くないのは魔法を使う者として、当たり前の事なのでリリィはそのまま気絶してしまった。とはいえ、いくら肉体を鍛え上げたとしても、不意を突かれて首を殴られれば気絶する事は避けられないだろう。

「さて……どうする? ジニア? 俺はリリィの為ならこの世界を敵に回したって構わないと思っている……例え友人であるジニア……お前の命を奪ったってな……」

 ナズナの覚悟を聞いたジニアはもう返す言葉も無いようだった。

「……さっきも言ったろ? 俺にはもうどうする事も出来ない……だから好きにしろって……」

 ジニアは完全に戦意喪失しているようで、そう言ったジニアの言葉には力が無かった。

「……」

 ナズナはジニアに完全に興味を失ったようで、冷たい眼へと変わっていった。

「さよなら……ジニア先輩……安らかに眠って下さい……」

 今度は誰に止められる事も無く、ナズナの刀はジニアの首を確実に捕らえていた。刀についた血を振り払いながらそう呟いたナズナの表情は儚げで不謹慎にも美しいと思ってしまった。

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