時の檻
「それで、ジニアお前はどうしたい?」
ナズナはジニアの本当の気持ちを引き出すように優しくそう訊いた。
「……俺は……助けてやりたい……こんな人でも俺の父親何だ……ちゃんと法で罪を償って貰いたい」
騎士団の優等生らしい模範回答だった。自分の父親を想う子の気持ちというのはどんな種族であろうとゆるぎないものなのだろう。
「……そうか……なら仕方が無いな……剣を取れ、決着を着けよう」
ナズナはそういう答えが返ってくると分かっていたような口振りで、口元は少し緩んでいた。
「……なっ!?」
ジニアはまさかそんな事を言われるとは思っていなかったようで、かなり衝撃的だったようだ。
「……俺はフォンセ許す訳にはいかない……例えそれがジニアの本当の父親だとしても……約束したからな……ディアスとそしてリリィとも……」
ナズナはそう言うと、ゆっくりと短剣と刀に手を伸ばした。
「……今の俺ではナズナには敵わない事は分かってる……でも、俺にも譲れないものがある、だから……」
ジニアも覚悟を決めたようで、剣を抜くとナズナに向けた。
「……ちょっと……何を言ってるの? 二人共? おかしいよ……」
いつの間にか近くまで来ていたリリィは慌てた様子で二人の間に割って入った。
「……リリィ、これは男と男の真剣勝負なんだ……それを邪魔するなんて野暮な真似はするな……」
ナズナは一つ溜息を吐くと、困ったようにそう言った。
「……分かんないよ! どうしてそんなくだらないプライド何かの為に二人が戦わなきゃいけないの? やっと争わなくても良いと思ったのに……」
まるで癇癪を起した子供のようにそう叫ぶと、その場に崩れ落ちて泣き出してしまった。
「……」
「……」
ナズナとジニアはリリィの泣き叫ぶ姿を見て、何も言えない様子だったが、動き出してしまった歯車はそう簡単には止まらない。
「……後でいくらでも説教は聞いてやるから大人しくしててくれ……」
ナズナはそう言うと、リリィの方に手を向けると詠唱を始めた。
「時の精霊クロノスよ……我が命に従い……かの者を封じよ……『リ・シェント』」
ナズナの手から真っ直ぐにリリィに向かって行く光。いくら水晶眼の魔女とはいえ、予期せぬ所から魔法が飛んでくれば避ける事は出来ない。
リリィがその魔法に気が付いた時にはもう既に避けられる距離では無かった。リリィはそのままナズナが放った魔法に捕まり、フォンセの同じように時の檻の中に閉じ込められてしまった。




