継承
ディアスが息を引き取るのと入れ替わるように、ナズナはゆっくりと眼を開き、身体を起こした。
「!? な、ナズナ? 大丈夫、なの?」
知り合いであるディアスの死を目の当たりにして、心が重くなっている所にナズナが息を吹き返したという事もあり、今リリィの心は相当ぐちゃぐちゃになっているに違いない。
「あ、あぁ……」
顔中、涙でぐちゃぐちゃにしていたリリィを見て、流石のナズナも若干引いている様子だった。
「……!?」
恐らく自分の顔が今とんでもない事になっていると気が付いたのだろう。リリィは慌ててナズナから離れると急いで顔をタオルで拭いて鏡で確認していた。
「相変わらずだな……リリィは……さてと」
ナズナは普段と変わらないリリィの様子を見て、ほっとしたような表情を浮かべると既に息を引き取っているディアスに視線を向けた。
「……すまないディアス……救って貰ったこの命を無駄にしない事と約束は必ず果たす……だから……安らかに眠ってくれ」
ナズナがそう言うと、ディアスは光の粒子となってナズナの中へと入っていった。それと共にナズナから溢れるほどの力を感じた。
「……これが、精霊の力か……」
ナズナはそう呟くと、術者が死んだというのに関わらず時の檻に閉じ込められてるフォンセの元へと歩き始めた。
「なぁ……時の精霊よ……俺に力を貸してくれるか?」
歩きながら、自分の胸に手を当ててそう呟いた。
『我が主はお前に従えと言った……それが我が主である『ディアス・アマミヤ』の命ならそれに従うまで……』
いつの間にかナズナの傍には先程ディアスと共に消えたはずのクロノスの姿があった。
「そうか……それじゃよろしく頼む……クロノス」
『招致した』
ナズナとクロノスはそれ以上会話を続ける事無く、一歩また一歩とフォンセの元へと近付いて行った。
「……さて、このまま時の檻に閉じ込めておくというのも悪くは無いが……どうしたものか……なぁ、ジニア?」
フォンセの目の前に辿り着くと、ナズナが目覚めてからずっと言葉を口にしていなかったジニアにそう尋ねた。
「……」
ナズナに問い掛けられてもジニアは言葉を口にする事は無かった。
「……父親……何だろう?」
やはりナズナはフォンセがジニアの父親だと気が付いていたようで、今尚言葉を口にしないジニアに向かってそう言った。
「……流石はナズナだな……全部お見通しって訳か……ディアスっていう人もそうだが、本当に恐ろしい連中だ……」
ジニアは一瞬だけ眼を見開いたが、直ぐに一つ溜息を吐くと呆れたようにそう言った。




