リリィの故郷
「……」
リリィが扉を抜けて直ぐに現れたのは緑豊かな街だった。
「懐かしいな……」
リリィのその言葉を聞く限りここはリリィの住んでいた街なのだろう。
「リリィじゃないか……何処に行っていたんだ? みんな心配していたんだぞ?」
そんな風に景色を懐かしむリリィに声を掛けて来る一人の男の子の姿が見えた。
「? ストレガじゃない……どうしたのこんな所で……」
こんな夢の中でもリリィの天然はお構い無しに発動するらしく、声を掛けてきたストレガですら呆れている様子だった。
「どうしたの? じゃねーよ……もう何日も家に帰らないで……急に現れたと思ったら何だか見違えるような姿になってるなんて……」
リリィの姿を見ながら少しだけストレガは頬を赤らめているようだった。
「あぁ……そう言うことね……全く悪趣味何だから……」
リリィは今の言葉でこの状況を全て把握したようで、呆れたようにそう呟いた。
「? どうかしたのか? リリィ?」
一瞬リリィが纏う空気が変わったのを感じたのか、ストレガは警戒するような体勢を取りながらリリースにそう声を掛けた。
「いや……別に何でもないよ……折角だし、街を見て回ろうかと思ったけど……そうも言ってられないか……」
リリィにとって想い出の塊のような場所であると共に絶望に叩き落とされた場所でもあるのは間違いが無い。リリィの心情は複雑なものだろう。
「……? 本当に大丈夫か? 何処か具合でも悪いんじゃないか?」
そんなリリィの様子を本当に心配しているようで、ストレガはリリィに駆け寄ってきた。
「ごめんね……ストレガ君……それと街のみんな……」
夢の中とはいえ、再びこの村を焼け野原にしようとしているのだから謝るのは当然の事かも知れないが、こんな辛そうな表情をしたリリィを見ていられなかった。
「水晶眼の魔女リリィが命じる。我に仇なす幻影を灰塵とかせ……」
以前の詠唱とは若干言葉が違うのは魔法というものは頭で思い浮かべたイメージに魔力を乗せるようなものなので、その都度変わってくるものらしいと聞いたことがある。
それに呼応するかのように以前の威力とは桁違いの魔法が発動していた。
「……!? リリィ何をするつもりだ?」
リリィの真上に浮かんでいる炎の塊を見て信じられないといった表情をしていた。
「本当にごめん……でも今は時間が無いんだ……私の大切な人の命が掛かっているの……だから……『インフェルノ』」
その言葉と同時にリリィの上に浮かんでいる炎の塊はゆっくりと街へ向かって落ちていった。
「さよなら……私の故郷……『サバト』」
そう呟いたリリィの眼の端からは一筋の涙が流れていた。




