『おじさん』
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モンスターを倒して馬車へと戻ったナズナは、少し驚いた表情をしたプラタナスと心配そうな表情をしたルピナスに出迎えられた。
「大丈夫でしたか、ナズナ!? 何処も怪我はありませんか?」
普段の会話を聞いている限り、案外肝が据わってそうなルピナスだったが、流石に自分の息子の事となると心配で仕方が無いようだった。馬車に戻るや否や、ナズナは身体のあちこちをペタペタと触られていた。
「おー戻ったかナズナ。随分と早かったではないか。また腕を上げたようだな。はっはっはっ」
ルピナスとは対照的な態度でプラタナスはどっしりと構えていたようだった。息子の成長が嬉しいのか笑いだしている。
そんな二人の様子を見て、ナズナは苦笑いをするしかないようだった。
「母上。そんなに心配なさらなくても大丈夫ですよ。父上や兄上のようにまでとは言いませんが、私も強くなる為日々訓練しているのですから……」
無事にというか、あっという間に戻って来たのにもかかわらず、過度な心配をしているルピナスをなだめるようにナズナはそう言った。
「そうだぞ、ルピナス。ナズナは私たちの息子なのだぞ? あの程度のモンスターに後れを取る訳が無いだろう」
プラタナスは自分の髭を触りながらそう言った。プラタナスは馬車にいながらモンスターが空にいた事に。その強さに気付いていたのだろう。その事に気付いたナズナは苦虫を噛み潰したような表情をしている。
「? ナズナ? 苦しそうな表情をしてどうかしたのですか? やはり何処か怪我を?」
ルピナスはナズナの表情を見て、もう一度近づき顔を覗き込んできた。
「い、いえ、少し別の事を考えていただけですよ」
そんな表情を見られてしまったナズナは、少し慌てた様子でルピナスにそう返した。
「そう、ですか。それなら良いのですが……良いですか? ナズナ。まだ、貴方は十八になる前の子供なのです。それと比べ貴方の父はもう『おじさん』です。何十歳も離れているのですから、実力に差があるのは当たり前です。仮に今のナズナの方がこの『おじさん』よりも強かったら……一体この『おじさん』は今まで何をしていたのか分からなくなってしまいます」
むやみに『おじさん』という部分を何度も強調してルピナスはそう声を掛けた。
ナズナは誤魔化したつもりのようだったが、ルピナスには気付かれてしまったようだった。流石は母親といったところだろう。
「そんなに『おじさん』と何度も言わなくても……」
ルピナスが『おじさん』と言う度にプラタナスの表情はどんどん暗くなっていき、終いには何やらブツブツと呟きながら俯いてしまった。




