シオンの葛藤
「神霍流と言ったか? もしかしてナズナのオリジナルの流派か?」
プラタナスは倒れ込んでしまったナズナを心配しながらも、ナズナの使った剣技の方が気になってしまっているようで、少しそわそわしながらナズナにそう訊いた。
「確かにオリジナルの流派だけど、少し違うかな……神霍流は兄さんと僕の流派だよ」
ナズナはプラタナスの問い掛けに、少し誇らしげに答えた。
「なるほどな……それでは何故シオンは先程の模擬戦で使わなかったのだ?」
今度は視線をシオンの方に向けてそう言った。
「……それは、まだ上手くは扱えてないからだよ……俺もまさかナズナがここまで使えるようになってるとは思ってなかったよ」
少し暗い表情をしながら、シオンはプラタナスにそう言った。
「一応毎日訓練は欠かさなかったからね……でも、兄さんや父さんにはまだまだ敵わないみたいだから、もっともっと訓練しないと……」
ナズナは勿論、嫌味で言っている訳では無いのだろうが、目の前でこんな才能を見せられては嫌味と感じても仕方の無いことだろう。直ぐ近くにいたシオンは苦虫を噛み潰したような表情をしていた。
「……ナズナ、俺とも模擬戦やらないか?」
しばらくの間、何も口にしなかったシオンは意を決したようにナズナにそう言った。
「良いけど……僕何かじゃ兄さんの相手にならないと思うよ? それでも良ければやろうよ」
シオンが訓練では無く、模擬戦と言った意味をあまり深くは考えてはいないのだろう。ナズナは遊んで貰えるのが嬉しいようでニコニコとした表情をしていた。
「……それじゃ、行くぞ? ナズナ……」
お互いに距離をしっかりと取り、武器を構えた。
「全く……困った子供達だ……俺が審判をしてやろう。最初に言っておくがあくまでこれは模擬戦何だからな……そこを履き違えないように……特にシオン……」
シオンの何処か危うい空気を感じ取っていたのだろう。プラタナスは安全を考慮する為にも、自ら審判に名乗り出ると共にシオンにもしっかりと釘をさした。
「……分かってるよ……父さん」
少しだけ驚いたようで一瞬だけ目を見開いたシオンだったが、直ぐに元の表情に戻り呟くようにそう言った。
「もー二人で何の話してるのー? 早くやろーよー」
既にナズナから少し離れた所に二人が居た事、他の人に聞かれないように話していた事が相まって、ナズナには二人の会話は聞こえていないようだった。
「すまん、すまん……私が審判してやるから全力で戦うと良い。何かあったら私が止めるからな」
今度はナズナにもしっかりと聞こえるような声でプラタナスはそう言った。
「準備は良いか? ……それでは、始め!」
プラタナスのその掛け声でシオンとナズナの模擬戦が始まった。




