フォンセの持つ謎の水晶
「……うーむ。口くらいは解放してあげましょうか……流石に私も退屈ですから。話し相手が欲しかった所です」
フォンセはナズナが何かを話そうとしている事には気付いたようで、少しだけ困ったような表情を浮かべると、虚空から杖を取り出しナズナの方に向けた。
「!? はぁ、はぁ、はぁ……」
魔法のようなもので口を封じらえていたとはいえ、しっかりと息を整えてからもう一度状況を整理したかったのだろう。ナズナはしばらくの間、息を整える事に集中している様子だった。
「……折角、話せるようにしてあげたというのに、それでは何の意味も無いじゃないですか? まぁ、別に良いんですけどね……」
フォンセは呆れたようにそう言うと、興味を失ってしまったのかまた先程と同じように水晶のようなものを覗き始めた。
「……それは?」
ようやく息を整え、この状況も完璧に理解したのかまずは一番に気になったのだろう。フォンセの近くにある水晶について尋ねた。
「……? これですか? そうですね……うーん何と説明すれば良いでしょうか? 遠くの状況が分かる物と言いますか……そんな感じです」
フォンセはまず始めにそんな事を訊かれるとは思っていなかったのだろう。少し不思議そうな表情をした後、困ったようにそう答えた。
「……そのような物がこの世に存在しているとはな……」
フォンセの説明でもある程度どういう物なのかを理解したようで、かなり興味深そうな表情をしていた。
「……? まさかこんな物に興味があるとは珍しいですね……」
フォンセは自分の手元にある水晶を見ながらそう言った。
「……まぁ、こんな完全に身動きが取れない状況で訊くような事では無かったかも知れないが。この状況だからこそ訊いてみたかっただけだ……そういう物に昔から興味があってな……」
ナズナは武器以外にも歴史的なものや、今フォンセが持っているような魔道具のような物に興味があり、個人的に収集したりもしていた。
「ふーん……やはりナズナさんは変わった人ですね……普通だったら命乞いでもするような状況ですが……特に暴れる事も無く、ましてやこんなものの事を最初に訊いて来るとは……」
フォンセは本当に驚いているようで、普段は殆ど眼を開いていないのにも関わらず、大きく眼を見開いていた。
「確かにそれが普通なのかも知れないが……こうなる事くらい覚悟していたからな。生きているだけ儲けものって所だ……」
驚いた様子のフォンセに視線を向けながら、呆れたようにそう呟いた。




