第2話 最初の街ミナス砦
スライムとの戦いが終わり、俺はどっと息を吐く。
相手がスライムとはいえ、魔物相手に下手をしたら死ぬことだってあるこの世界で俺は少し油断していたのかもしれない。
冷や汗をぬぐいながら呼吸を整える。
呼吸を整えた途端に頭の中でレベルが上がったような、有名なレベルアップの音が流れる。
俺はステータスと叫び、自分のステータスを見る。
早見タケル
ヒューマン
25歳
レベル 2
体力 150
攻撃力 35
防御 25
スピード 35
魔力 120
運 50
スキル
経験値増大
称号
異世界転移されし者
お金10000円
てか通貨はこの世界でも円なのか。
えっとステータスは1レベルアップにおよそ5~20ほど上がるということかなどと考えながら、遠くに見える砦に向かった。
砦の近くまでくると道が整備されており、非常に歩きやすかった。
砦の近くには魔物は1匹もいなかったので神経を尖らせる必要はなかった。
門に着くと、上から兵士が下に向かって発言してきた。
「貴様は何者だ?最近森に住む魔物が活発になってきたというのになぜ砦の外にいるのだ?」
「いや、ちょっと気が付いたら外にいたというか、なんというか・・・」
こういう時は、もっと気の利いた言い訳をするのが異世界転移でのあるあるなのにニート生活の長い俺にとって普段、人としゃべらないので上手く言い訳ができない。
このまま上手い言い訳ができないと入れないと焦る俺であった。
「冗談だ冗談だ!ガハハ、その恰好を見ればすぐにわかる。お前異世界人だろ?」
一瞬で俺が異世界からきたってばれている。もしかしたら、俺みたいに日本内閣府不適合者係に送られた人間が大勢いるのだろうか。
兵士が続けて発言する。
「なーに取って食おうっていうんじゃないんだ。お前みたいに黒髪で見たことがない服を着ている奴はたまに砦の外からやってくるんだ!おーいお前ら入れてやれ!」
しだいに頑丈そうな門が開き、中から人が出てくる。
兵士たちの中でひと際大きく、声が大きい奴が出てくる。
「なんだ!今度の奴は本当に弱そうな感じだな!まあいいや!ようこそミナス砦へ」
そう言い放ち、手を指し伸ばしてくる。
その様子を見て、俺はほっとしたのか笑顔で手を取りミナス砦へ入った。
砦に入るとそこはまさにファンタジーゲームのような幻想的な世界であった。
猫の獣人の親子が魚を買いに来ていたり、エルフが魔法使いのような帽子を被り宙に浮いていたりと、現代日本ではあり得ない風景が漂っていた。
俺は不覚にも目を輝かせてしまい、その様子を兵士たちに見られてしまった。
「獣人やエルフの女がそんなに好きなのか?やっぱり異世界人だぜ!目を見ればわかる。おっと自己紹介がまだだったな!俺はソラスってんだ。お前名前は?」
「あ、はい早見タケルって言います」
相手の体格が俺の二回りも大きいせいか、つい敬語で話してしまった。
「そんなに身構えなくてもいいさ!さっきも言ったが取って食おうっていうんじゃない、むしろこれから先、魔王が現れたら一緒に戦う仲間になるんだからな」
うん?魔王?そんなの聞いてないんですけどーと心の中で叫ぶ俺であった。
「魔王ってこの世界に存在するんですか?」
俺の質問に豆鉄砲でも食らったかのような顔をする兵士たち。
そんな中、ソラスだけは馬鹿にせず答えてくれる。
「ああ、そうかそこらへんも知らないんだったな!まずはタケルだったか?詰め所で身分証の登録とこの世界について少しレクチャーしてやるよ」
異世界人なのに優しくしてくれるソラスについていき、詰め所に行くことにした。
詰め所に着き椅子に座りまずは身分証を発行することにした。
「お前さん、いやタケルでいいか?」
「はい」
「まずはここに必要事項を書いてくれ」
差し出された用紙を見たが、まさか日本語だなんてと非常にびっくりした。
身分証を発行するのに、血を一滴垂らすと、黒だったカードのようなものが白色に変わり、日本語で名前、年齢、出身なんかが書いてあった。
出身は異世界って大雑把過ぎるだろうと心の中で突っ込みを入れる。
「よし!これで完了だな!」
「じゃあ次はこの世界についての一般常識からだな」
ソラスは1時間くらいかけて俺にこの世界の事情と一般常識を教えてくれた。
話が長かったので要約すると、このミナス砦はヒューマンの王が統治しており、国の名前はプリューナク公国という大国でヒューマンの国では2番目に大きい国だという。
そして、この世界には魔物がいて、近年稀にみる魔物の活発化でそれぞれの国で四苦八苦しているので、現在戦争は行われてはいない。
しかし、犯罪者や魔物に親を殺され路頭に迷いなくなく奴隷の身分に落ちたものや、10年以上前の戦争で奴隷の身分になってしまったものはいるらしい。
身分は下から奴隷、平民、貴族、王族、王様といったような感じだという。魔物はヒューマン、エルフ、ドワーフ、獣人、全ての種族の共通の敵なので、各国で緊急時には助け合うのが基本の文化だという。
魔物は敵であるとともに食料でもあるので、魔物を倒して生計を立てる冒険者などもいる。
俺のような異世界人はみなこの冒険者になり、ギルドに所属するのが決まりらしい。
少し長くなったがソラスの話を要約をすると大体こんな感じか。
詰め所でソラスとの話を終え、ギルドに向かい俺は冒険者を目指すことにしたのであった。