プロローグ
「はぁー働きたくないなー」
俺の名前は早見タケル。
独身、彼女なし、仕事なしの25歳。
いわゆるニートである。
今年で25歳にもなり、転職を3回したあげく、今月も仕事をやめてしまった。
やめた理由?もちろん俺に合った仕事だと思わなかったからだ。
大学を卒業して3年以上が経ち、今でも自宅に引きこもってゲーム三昧をするのはひょっとすると俺だけじゃないかってことを考え出すと、人生どこで間違ったんだろうなんて考えに陥ってしまう。
ふと人生を振り返ると、スポーツも勉強もある程度できる方だったが、根性がなく途中で投げ出すということが多かったようにも思える。
今度の会社ではしっかり40年働けるように頑張りたいと思い、ベッドから起きようとした時のことだった。
「コンコン」
俺の部屋のドアが不意にノックされる。
平日は両親は二人とも働きに行っているので、家にいるのは俺だけのはず。
まさか泥棒か!
いやいや、泥棒さんがノックなんてしないだろ!と自分で自分に突っ込みを入れながらドアを開ける。
急に派手な帽子を被ったマジシャンのような男が満面の笑顔で入ってきた。
「おめでとーうございまーす!あなたは我が世界、ユグドラシルの異世界転移者に選ばれましたー」
俺が驚いたのは他でもない。
誰だこいつ?どうやって俺の家に入ってきた?というより異世界転移?何を言っているんだ?
俺が質問しようと口をあけた瞬間であった。
「わかります、わかります。私が誰か?どうやって家に入れたか?異世界転移ってどうゆうこと?みたいな顔をしていますね」
テンションマックスの声でマジシャンのようなカッコをした男は俺が聞きたいことを全て言い当てた。
俺はこの不思議な男にあっけに取られていた。
「では、どういうことなのかお話しましょう!ではまず初めに自己紹介を!私は日本内閣府不適合者係の島津と申します。そう、あなたはズバリ日本の社会に不適合者なのです。仕事をしてはすぐにやめ、またやってはすぐにやめ、将来は橋の下でホームレス生活をしているでしょう」
いきなり来た男の言葉にだんだんと腹が立ってきたが、我慢して先を聞いてみることにした。
「ズバリそういった若者を救済するべく私は参ったのーです!」
マジシャンのようなカッコをした男は決まったかのようなポーズをとっている。
「俺を救済?まあ確かにニートで仕事はないし、このままでは将来橋の下で暮らすかもしれないけど」
俺の言葉にそうですよね!そうですよね!とうなずいてきた。
「ではタケルさん早速行きましょうか!」
俺がどこに?というと異世界ユグドラシルへにです!とガッツポーズを取りながら言った。
「ワン!ツーアミーゴー」
マジシャンのようなカッコをした男、もとい日本内閣府不適合者係の島津がそう唱えると部屋全体に魔法陣が現れ、俺は光に包まれた。
こうして俺は異世界ユグドラシルへと旅立ったのである。