表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/14

14. 自分本位で結構


 アプリが説明をやめて、途端に辺りが静かになる。あまりに静かすぎて、そこには最初から私しかいなかったか

かのような錯覚を覚える。

 

 まぁ、私しかいないんだけれども。

 

  

 さてそれじゃあどうしようかなぁ。スキルを取れと言われても、やり直しは出来ないって言ってたから計画的に取らないともったいないよね。

 

 

 私はスキルツリーの画面を操作して、一つ一つのスキル説明に目を通していく。ひとしきり見終わった感想としては【銃魔法】のスキルはそのほとんどが戦闘向けのスキルであるということ。

 

 あんまり戦いたくはないかな……。正直言って私あんまり強くないし、戦うこと自体向いてないと思う。

 

 

 今後のことを考えると、そうだな……。戦闘で使えなくてもいいからとにかく生き残るのに役立ちそうなスキルが欲しい!

 

 そんな都合のいいスキルないかなぁ。

 

 

 ちなみに、さっきアプリから説明されたんだけど、この世界はそう遠くないうちにあの化物みたいなやつらがうじゃうじゃ現れるようになって、自分の身は自分で守らないといけないようになるらしい。

 

 恐ろしい話ではあるが、別に信じきる必要もない。

 

 そう思いつつも、何も対策を練らないのもどうかと思ったので、こうやってスキルを得ようとしてはいるんだけど……。

 

 そうこう探している中で、唯一前提なしで今すぐ取れる目当てのスキルを見つけた。それは【ホークアイ】というスキルで、どうやら攻撃系ではなく能力を上げる補助系のスキルのようだ。効果欄を読むと次のように記されていた。

 

 

 【ホークアイ】

 補助系スキル。消費MP4。

 使用すると一定時間視力が上がる。射撃と併用すれば命中率、クリティカル率の向上が見込める。

 

 

 本来は攻撃サポートに使うスキルなのだろうが、使い方を工夫すれば遠くのディヴィルを発見したり、他にも色々役に立ちそうな効果だ。

 

 少しだけ考えて私はそのスキルに1ポイント振ってみた。

 

 試しにベランダに出て外の景色を眺めようとする。

 

 「ねぇ」

 

 ねぇ、とはつまりアプリを呼び出すための文言だ。不便ではあるが名前がないためにこのような呼び方になってしまう。

 

 『お呼びでしょうか琳様』

 

 「スキル取ったんだけどさ、これどうやったら使えるの?」

 

 『ああ、それでしたら心の中で念じるだけで使用できるかと思われます。慣れないようでしたら初めのうちは口に出してスキル名を唱えてみてはいかがでしょう』

 

 「りょうかい」

 

 そう言われて、心の中で念じてみるが上手くいかない。提案通り唱えることにした。

 

 「【ホークアイ】」

 

 すると、私の魔力が反応したのか、一瞬体の周りが少しだけ光った。

 

 その時私はわずかばかりの高揚感を覚えた。その不思議な感覚が少しの間体内を駆け巡る。

 

 「これでok?」

 

 『大丈夫です』

 

 アプリの確認をとったところで琳は外の景色に目をやった。普段は遠すぎてブレて見えるビル群も、今ではくっきりはっきりと見える。

 

 「おぉ……」

 

 いつもの景色がまるで違ったように見えることに私は少し感動してしまった。

 

 そういえば、そのビル群の一角である大型デパートは今まさに立て籠り事件が起きている現場だったということを思い出す。ここからだとゴマ粒程の大きさにしか見えない数機の無人ヘリもしっかり視認できる。それらが上空を飛び交っていることからあのビルで間違い無いようだ。

 

 「なるほど、こりゃすごいわ」

 

 わずか1ポイント振っただけでこの効果、もしかしたら【ホークアイ】はコスパのいいスキルなのかもしれない。果たして10ポイント振った日にはどんな景色が見えるというのだろうか。

 

 不謹慎にも少し楽しくなってしまった私は、再び携帯端末を取り出してスキルツリーの画面を開く。【ホークアイ】に1ポイント振ったことによって、新たに三つのスキルに派生しており、それぞれ【ピジョンアイ】【クロウアイ】【オウルアイ】と名付けられていた。

 

 私はおもむろにその中の一つ、【ピジョンアイ】の効果欄を開いた。

 

 

 【ピジョンアイ】

 補助系スキル。消費MP4。

 使用すると、一定時間透明化スキルを使用した敵を視認できるようになる。

 

 

 そして今度は特に考えることもなくそのままポイントを一つ振った。

 

 

 【ホークアイ】ならまだしも、なぜこのような用途の限られるスキルを取得したのか、それには理由があった。

 

 スキルツリーの先に目をやると、【ホークアイ】から派生した三つのスキル全てのレベル5習得を条件に、【鳳凰眼】というスキルが存在する。

 

 その効果欄を見てみると、次のように記されていた。

 

 

 【鳳凰眼】

 補助系スキル。消費MP10。

 使用すると、一定時間【ホークアイ】【ピジョンアイ】【クロウアイ】【オウルアイ】の効果を一度に得ることができる。※これらの効果は各個スキルのレベルに依存する。

 

 また、独自の効果として少し先の未来を見ることが出来るようになる。

 

 

 流石に前提が重いだけあって、その効果は絶大だ。きっと生き残るために多いに貢献してくれることだろう。

 

 だから私はこの【鳳凰眼】を習得するためにその手始めとして【ピジョンアイ】にポイントを振った。

 

 確認のため【ピジョンアイ】も使ってみると、再び高揚感が全身を襲った。これはあまり大っぴらに言えることではないが、私はこの感覚が少しだけ癖になっていた。

 

 ぶっちゃけてしまえば、【ピジョンアイ】使用の目的は、効果の確認というよりかは使用時の高揚感を得ることだったのかもしれない。

 

 まるでドラッグ中毒者だな。

 

 私は心の中で自分のことをそんな風にいい例えた。恐らくそれは、少しだけ、いや、多分に自己嫌悪の意を含んでいるのだろう。

 

 それでも、【ホークアイ】の視力アップによって今までと違う外の景色を見るのが楽しいので、私はそのままビル群付近を眺めていた。

 

 

 まるで昨日のことが嘘のような、それくらいに、なにもない平凡で平和な時間が流れる。

 

 

 しかし、次の瞬間状況は一変する。

 

 翼を生やした化物がどこからもなく飛んできて、立て籠り事件のあるデパートの中へ窓を突き破って入ってしまったのだ。

 

 「なっ……!」

 

 その一部始終を目撃した私は、それまでまるで魂の抜けたような顔が一瞬で強張るのが自分でも分かった。

 

 私は急いでリビングに戻りテレビを見た。しかし、どうやら警察もレポーターも、その脅威の襲来には気づいていないようで、窓が割れたのも中から強盗犯が発砲したのか、なんてことを言っている。

 

 他人には見えていないのに自分にだけ見えている。つまり、それはつまり化物が透明化の魔法を使っていることを意味していた。

 

 だとするならばこの状況は非常にまずい。私以外、化物の存在に気づいていない可能性が高いからだ。

 

 さてどうしようか……。

 

 私は少しだけ考える。それはもちろんあの化物を倒して皆を助けに行くのか、それともリスクを回避してこのまま部屋に引きこもるか。

 

 しかし答えはほとんど決まっていたようなものだった。

 

 【鳳凰眼】、【銃魔法】の上級スキル。それを取得するためには前提として【ホークアイ】に1ポイント、【ピジョンアイ】、【クロウアイ】、【オウルアイ】にそれぞれ5ポイント。【鳳凰眼】自体の取得にも1ポイント。最低でも計17ポイントが必要になる。

 

 しかも私の場合1ポイントを【銃マスタリー】に使ってしまっている。

 

 つまり、【鳳凰眼】を取得しようと思ったら私はあと8ポイント足りないのだ。そのポイントを手にいれるにはアプリが説明していたようにレベルを上げるしかない。

 

 つまりは、【鳳凰眼】を取得するまでは戦うしかないということだ。

 

 これは、他人のための戦いじゃない。自分が生き残るための戦いだ。

 

 そう自分に言い聞かせたら、少しだけ気持ちが楽になった。

ご覧頂きありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ