〝すべての始まり〟の始まり
この物語の最後です。
どうやら浮かれていたらしい。久しぶりに友人と出会ったから。トラックが接近する音は聞こえていたのに。夢の通り、好きな人の目の前で、最後に見るものが満月で終わってしまった。
今、鏡香は真っ黒な空間を漂っている。“ああ、ここがあの世みたいのなのかなぁ...”なんて考え始めていた。ただひたすらに何処かへと流れて行く。
“いったいいつまで続くの?”と思い始めていた時だった。目の前が強力なフラッシュのような明かりに満ちた。一瞬、視界が完全になくなる。それと同時に鏡香の意識も沈んでいった。
次に意識が回復した時には、視界がぼやけていたが、しっかりと鉄の匂いが鼻に流れ、何かが動く音が聞こえてきていた。しかし、体を動かそうにも動かない。頑張ってどうにか体の向きだけ変える。その弾みか、髪がぼやけた視界に入り込む。鏡香は疑問に思った。“何故?自分の髪は黒なのに...”
鏡香の髪は、黒から銀髪が混じった白色のような髪になっていた。困惑する中、必死に考える。そして、とあることに気がつく。自分の記憶の中に、明らかに自分の人生とかけ離れた記憶が所々混じっていることに。その記憶を、辿って行く。
半分くらい記憶を辿って行くうちに、視界の自由が戻ってきた。体も少し動かすことができるようになっていた。そして、あと少しで記憶を辿り終わるという時に、強烈な頭痛が襲ってきた。
「ッ...‼︎痛い痛い痛い痛いッ!」頭の中が、使い過ぎたPCのように熱くなっていく。その熱で鏡香の意識は再び沈んでいった。
うっすらと意識が戻ってきた時、バラバラだった記憶が完全に一つとなっていた。この体の本来の持ち主の名はリアン。遊びで、この世界の昔の兵器の中に入り込んでいたら、急に機体の向きが変わり、一直線に落ち重症を負ってしまっていた。そのタイミングで鏡香の意識が入り込んできた。
一時すると、誰かがやってくる音が聞こえた。意識はうっすらと戻ってきているだけで、体がうまく動かない。
やってきたのは、黒髪黒目の少年だった。少年は、何かゴソゴソした後、こちらに気がつき、やってきた。屈み込み、少し考えた後、少年は鏡香の体を見た目からは想像できない力で持ち上げ、そこから立ち去っていった。
和也は知らない。かつての友人は...
新たな世界で元気にしていることを。
この話の途中からは元々、鋼の国のオープニングとして載せようかな〜と考えてやめた部分を少し変更して載せています。