【コオイムシの屋敷】・3
“事情を踏まえずに人道やら倫理を振りかざすのは卑怯”
その意見自体は弥太郎の本心だ。
のっぴきならずに、やむにやまれず。どれだけ娘を愛していても、敗戦国で暮らしていくには泣く泣く手放さなければならない状況だってある。
シラフで「売春は悪」だの「自分の子供を売るなんて言語道断」だのと言えるのは、売らなきゃいけない崖っぷちまで追い詰められたことがないからで。
つまりはどこまでいっても富める者の傲慢でしかない。
お腹一杯ご飯を食べて、あったかいふとんでぬくぬく寝て。
安全安心の屋根の下、ぴーちくぱーちく喚いては、正しさだけを押し付ける。
それが卑怯者の行い以外のなんであるというのか。
弥太郎自身が青線の女衒だけに、その手の耳触りのよいお言葉は、恵まれた境遇にある人間の戯言としか聞こえなかった。
ただ同時に、てめえの都合で娘を売りつけるような親がクズだと思う程度の常識は持ち合わせている。
だから今回の件に関しては、圧倒的に正義の憤りが正しい。
なにせ村側の事情を踏まえても、村長のやり様は顔を顰めたくなるくらいなのだから。
「いやぁ、村役場も立派なもんです」
もちろん多少のわだかまりくらい完璧に隠し、世辞の一つも付け加える。
いちいち内心を表に出していては女衒なんぞ務まらない。
「伊之狭村のような農村は、中々ありませんよ」
「いえいえ、そんな大層なものでは」
弥太郎達が招かれた村役場は比較的新しい木製の家屋で、囲炉裏のある板張りの部屋が応接室の代わりとなっている。
伊之狭村では療養所に続いて大きく、これも件の富豪の援助によって建てられたものらしい。
実際、世辞でなくとも立派だと素直に思う。建物は勿論、置かれた家具も随分お高そうではないか。
「謙遜せんでもいいでしょうに。ほら、この人形とかも出来がいいし……出来が、いい? いや、うん。味があるじゃないですか」
「あの、別に無理して褒める必要は」
ただ、棚に置かれた木彫りの人形はイマイチ。
一応褒めてはみたが、どう見ても高級品ではないし作りが荒い、というかブサイクである。
まあそれはともかく、やはり伊之狭村は豊かだ。
田畑の用水路は整備されており、建物は立派。村も穏やかな様子で、少なくとも女を売らねばならないほど困窮しているようには見えなかった。
「どうぞ、お召し上がりください」
座布団にどっかりと腰を下ろせば、村の女が要望通り飲み物と茶請けを持ってきた。
来客に合わせて前もって準備していたらしく、出されたのはほうじ茶と干菓子だった。
夏だからか茶はすぐ飲めるよう温めになっており、村長がこちらを大事な客として気遣っているのが分かる。
「おぉ、悪いですねぇ。催促したみたいで」
思い切り催促していただろうと正義が半目で見れば「俺は出ると有り難いって言っただけだよ」と悪びれず、ひょいひょいと菓子を口に放り込む。更にはおかわりまで要求する始末で、金など荒稼ぎしているだろうに食い意地の張ったことである。
「さぁて。じゃあ、そろそろ仕事といきましょうかね」
二皿目の干菓子を平らげて、ようやく弥太郎はそう切り出す。
本題を前にして、同じく板の間に座った村長の嘉六が居住まいを直し、丁寧に礼をする。
「弥太郎さん。まずは改めて、態々のご足労ありがとうございます」
「なぁに、お気になさらず。こっちも楽しみにしてたんです。神の娘を買えるなんざ、滅多にない機会だ」
「そう言ってくださると助かります」
二人は仕事の顔になり、置いてけぼりは、ついてきただけの正義だ。
深々と下げた頭に引け目のようなものはなく、純粋な感謝だけが込められている。
立場はやはり女衒の方が上。村長は下手に出て、その割にどこか余裕のある所作はどうしてなのか。
状況を今一つ把握できないでいると、弥太郎がわざとらしく成り行きを口にする。
「そう暗い顔をしなさんな。噂の富豪さんが亡くなって、働き手も少ない村じゃ資金繰りも大変だ。売れるもんは売りたいってのが正直なところでしょう」
「はい。お恥ずかしながら」
「そりゃあ仕方ない。汚れ仕事ってのは結局誰かがさせにゃならんもんです。非道と罵られるようなこっちゃありませんて」
だから言ってテメエがクズなのにゃ代わりねえがな、とは勿論続けない。
こちとら下種の女衒、甘言を弄するも仕事のうちだ。
そのおかげかどうかは分からないが、村長は再び丁寧に、ゆっくりと頭を下げた。
弥太郎も表面上はいつもの軽い調子のまま。思った以上に和やかな雰囲気で商談は進む。
「感傷は置いといて建設的な話でもしましょうや」
そうして話は村の現状へと移る。
空気のいい伊之狭村には大気安静療法を行う為の、比較的大きな療養所がある。
件の富豪はそこの経営者であり、外からの患者を受け入れ、金を稼いでくれていた人物。村は彼の援助によって成り立っていたと言ってもいい。
彼は村の為に働き、村民はそれに感謝し敬う。
戦争の被害も遠い小さな閉ざされた集落は、そうやって緩やかな平穏を維持してきた。
しかし、そうまでしても住みやすい場所ではない。
戦後復興が進む中で仕事を求め都会へ出ていく若者も増えた。少しずつだが綻びは見え始め、その矢先、決定的な出来事が起こった。
「噂の富豪さんが亡くなったのが、去年の暮れでしたっけ?」
「はい。初めの妻を亡くしてから再婚もしなかったもので、後継はなく、療養所は閉鎖状態になっています」
村を支え続けてきた富豪の死。
当然ながら療養所の経営は出来なくなり、失職した者も多く、また外から資金を得る手段が断たれてしまった。
村の生命線が機能しなくなったのだ。これから先も若者はどんどん都会へ流れていき、いずれ伊之狭村は衰退していく。いや、それ以前に現状の維持さえも難しくなるだろう。
加えて、当面の問題が一つ。
「あぁ、本当に大変ですね。神の娘……いや、富豪の爺様の娘さんに関しても」
神の娘と呼ばれる女は、件の富豪が遺した、ただ一人の子供である。
そもそも金が有り余っている、働かないでも飯が美味いお家の生まれ。更に富豪の爺様はどうやら娘を大層可愛がっていたようで、産まれてからほとんど外には出さず、まさしく箱入りで育ててきたらしい。
そういう娘を遺して、富豪は亡くなった。
「ええ。今迄散々世話になった方の娘です、面倒を見てやりたいのはやまやまですが」
「気軽に養ってやる、とは言えませんわな」
「その、通りです。今年で二十歳になりますが、今迄箱入りだったもので、家事も農作業もしたことがない。そういう娘をただ置いておくのは、わたくしの立場では難しく」
富豪には親類縁者がおらず、その子供──“神の娘”は天涯孤独となった。
親を亡くした、軟禁状態で過ごしていた女。二十歳になっても家事はできない働けない、なのに手間と金だけはかかる完全なお荷物だ。
村が大変な時期に、ろくに働けもしない穀潰しの面倒まで?
冗談じゃない。いくら恩人の娘とはいえ、そんな余裕こちらにはないのだ。
どうすればいいのか頭を悩ませていた村民達は、一つの方策を打ち出す。
当面の金の工面と、使い物にならない女の処遇。厄介ごとをまとめて片づける名案だ。
「まったく、大変だ。俺としても困っている村を見捨てちゃあ寝覚めが悪い」
「それでは」
「その娘、見せてもらいましょうか。モノになりそうなら、それなりの値は付けさせてもらいますよ」
つまり遺された娘を売り飛ばす。
そうやって金に換え、継承する者がいなくなった富豪の遺産も村の維持運営に充てる。
殆ど労力を使わず大量の資金を得られる、まったくもって素晴らしい案である。多少の非道は『村の為』という大義名分があるのだから目を瞑ればいい。
「これでも商人の一分くらいは持ち合わせてますんで。お客様の背景にとやかく言う気はありませんぜ」
「弥太郎さん、本当にありがとうございます……」
だから伊之狭村の住民は東京池袋、青線界隈の人身売買業者に接触を図った。
多くの業者の中で最も適していたのが“蓼虫の弥太”。損なわれた容姿、不幸な生い立ちの女を好んで買い付けるという悪食の女衒だった。
「……っ」
散々村に尽くしてくれた恩人の娘を、金の為に売り飛ばす。村長は恥ずかしげもなくそう語った。
僅かに漏れた吐息は誰のものだったか、などと問うまでもない。
交渉の場に同席を許されたとてただの荷物持ち、立場くらいは弁えている。相手の不興を買わぬよう冷静な顔で、邪魔をせぬよう口も挟まず、正義は貝になっていた。
けれど、ちりと言い知れぬ感情が胸を焼く、
村長が女衒相手に遜っていた理由がようやく分かった。
この老翁にとって弥太郎は「大切な村人を買い叩きに来た」のではなく「不要なものを引き取りに来てくれた」相手。下手な態度でへそを曲げられちゃ困ると、媚びだって売るというものだ。
「では、早速ですが行きましょう」
「おっと、その前にちょいと相談事があるんで、先に出ててもらえますかね?」
「そう、ですか? では玄関でお待ちしております」
追い出す形で村長を退室させ、弥太郎は残った茶を最後の一滴まで飲み干す。
ふと横目で正義を見る。表情は変わっていない、それが妙に面白くて小さな苦笑は零れた。
「マサ坊、よく我慢したな」
「なにがだ?」
「とぼけなくていいさ。お前さんは良識のある人間だ、俺らクズの会話は苦痛だったろ?」
金を払えば手伝いはするし文句も言わないが、もともと女衒の仕事を好ましく思っていないのは知っている。
だからこそ敢えて胸糞悪い商談の場に同席させた。真面目だが何を考えているのかよく分からない、この青年の腹を探りたかった。
「……いいや。俺に言えることなど何もない」
それでも正義は本音を飲み込んだ。
ただ少しだけ哀しそうに、ぼんやりと村長の去って行った方を眺める。
「こういうのは、よくあるのか?」
「なくはねぇわな。まだ戦後十年、今日のメシも食えねえって、妻や娘を売らにゃならん貧しいご家庭もままある。それでなくとも俺ぁワケアリばっか買い叩くしな」
「そう、か」
かすれた呟きは嫌悪より義憤よりも、寂寞を感じさせる。明確な言葉ではなかったが、その声がおそらく彼の胸中だ。
それを聞けただけでも得るものはあった。
そろそろ行こうと腰を上げれば正義もそれに倣う。
「なあ。俺が不満をぶちまけて、商談を台無しにしたらどうするつもりだったんだ?」
途中、そう聞かれた。
弥太郎の思惑を何となく察したのかもしれない。わざわざ下種の所業を見せつけて、邪魔されるとは思わなかったのかと正義は問う。
「さあ? そん時はそん時じゃねえかな」
返ってきた答えは思った以上に気楽で、もう会話は続かなかった。
◆
つまりは平穏な日々だ。
住みやすい場所に住んで、ちゃんと仕事があって、実入りだってなかなか。
それが多少非合法で、下種な職業で、女を食い物にして金稼いでいるというだけ。日々は間違いなく平穏で、心安らかに過ぎていく。
弥太郎は今の暮らしに満足している。
非道に痛む良心がないとまでは言わずとも、優先するべきは自分の懐具合。そういう彼にとって女衒は性に合っていた。
不良警官に目を付けられてはいるが、業務上のいざこざはどんな職業にだってある。ならば十分に許容範囲内、今の生活をずっと続けていきたいと心底思っている。
つまりは平穏な日々で、端的に言えば弥太郎はどうしようもないほどに屑だった。
弱者を踏み付けることにも、他人から搾取することにも躊躇いはない。
そういう人間だから現状を心地よいと感じられる。
そして、そういう人間だから、こんな僻地にまで来てしまった。
「どうぞ、弥太郎さん。こちらです」
案内されたのは療養所近くの、竹の垣根に囲われた邸宅である。
茅葺の屋根の木造建築。富豪というが無駄な贅沢は趣味ではなかったようで、大きさこそ違えど作り自体は周囲の家と然程変わりない。それでも敷地は相応に広く、覗き込んだ庭には倉が二つ。おそらく中には金持ちらしく、お宝が沢山詰め込まれているのだろう。
「んなら、お邪魔するぜ。マサ坊は後ろに控えといてくんな」
だが弥太郎にとってのお宝は、家の中で軟禁されている。
母を幼くして亡くし、父もいなくなり。農作業も家事もしたことのない、天涯孤独となった“神の娘”。
実にそそられる。
いかにも蓼虫が好みそうなキワモノだ。無遠慮に富豪の家へ足を踏み入れ、値踏みするように見回しながら歩みを進める。
玄関口を通り、板の間を横切って廊下。
その奥、薄い障子に仕切られた部屋が、神の娘のおわす神域だという。
「村長さん。紹介は結構、こっからはサシで挨拶させてもらいますよ、っと」
「いや。それ、は?」
「じっくり品定めしたいんでね。それとも、話されるとまずいことでも?」
一瞬言葉に詰まったのは見逃さない。
ワケアリを買いに来たのだ。多少の嘘やごまかしは織り込み済み、本当に買うに足る女かはちゃんと自分の目で判断する。
手をひらひらと振るい、先導してくれた村長の横を通り過ぎた。
入るぜ、と言うや言わんや、乱雑に障子を開ければ。
───白細工が、飾られていた。
日に当たらないせい、という程度の話ではない。
人種そのものが違うような白い肌。腰まである長い白の髪。紺碧の瞳がこちらを捉えたのなら、ぞくりと言い知れぬ感覚が背筋を通り抜けた。
細面の、端正な造形の少女。
造形という表現を使ってしまうくらいに彼女の容姿は整っていて、少女と自然に呼んでしまうくらい実年齢と傍目の印象がかけ離れている。
「おいおい、こいつぁ」
聞いた話によれば、神の娘は二十歳になる女性だ。
だというのに、どう見ても十代半ばにも届かない。若々しいよりも幼いの方がしっくりくる外見をしていた。
「あな、た、は」
夏に響く、涼やかな声音。
突然の来客にも慌てず、というよりも然程の興味もないのか。女は足を崩したまま、ぼんやりと上目遣いにこちらを見やる。
見目の麗しさや世俗に染まらない所作も相まって、余計な背景を抜きにしても、なかなかに趣のある居住まいだ。
事情が事情だけに逃げ場所のない女を買えるし、後は単なる興味本位で仕事を受けただけだったが、これは案外拾い物かもしれない
弥太郎は膝をつき、少女にしか見えないこの女と目を合わせた。
「お嬢ちゃん、名前は?」
「“りる”、です」
正確には、合わせようとした。
けれど彼女はこちらの目を見ず、何故か胸の辺りを眺めている。
まるでそこに何かがあるような。そうと思わせる程に視線はぶれなかった。
「よし、りる。おとっつぁんが死んじまって、お前さんを養ってくれる奴がもういないってのは分かってるよな? 村でも面倒は見切れねえってよ」
怯えず、動揺の欠片もない。
胆が座っているのか、状況をしていないのか。どちらにせよ、騒がれるよりは都合がいい。声色はなるたけ優しく、けれど言葉は飾らずに現実を突きつける。
「だから俺が買った。お嬢ちゃんはこれから娼婦として働くことになる」
村の住民が彼女の世話を放棄した以上、拒否したところで此処には居られない。
逃げ場所なんぞある筈もなく、選択肢など初めからないに等しい。
もはや真っ当な生活など望めない。お前はどん底にまで転げ落ちるのだと宣告された。
「……腐った、ものには。虫がわく」
しかし返ってきたのは、己が身を嘆くのでも絶望するでもなく、まるきり見当はずれの言葉だ。
「大事にしまっておいたお菓子が、いつの間にか腐ってしまうように」
「大事にしまっておいた思い出も、いつの間にか腐ってしまう」
「そうすれば、虫がわく。虫は腐った鮮やかな記憶に集り、宝物の日々を、そこにあった想いを貪る」
「虫は、呪いと為る」
「美しきも、醜きも、残らず平らげて。少しずつ、少しずつ虫は育ち、いずれ人を殺す呪詛へと至り」
じっと胸の辺りを見詰めて、揺らがずに言の葉を紡ぐ。
年齢にそぐわない幼い容姿。たどたどしい語り口。なのに彼女の声は体の奥へと染み込んでくる。
頼りないくらいか細いのに、触れる感触はまるでじくじくとした火傷の痛みのよう。
そうして彼女は預言を。
否、此処に“神託”は下される。
「あなたは、最期には。あなたの大切なものに呪い殺される」
お前の末路は袋小路の破滅だと、神の娘は厳かにのたまう。
荒唐無稽な預言は、しかし信じさせるに足る“なにか”を帯びていて。
「くっ、ははっ。こりゃあまるで、借金取りみたいだな」
無意識に零れた呟きは、何故だかひどく穏やかな響きをしていた。
けれど瞬きの間にその色は失せて、残ったのはいつも通り、軽い調子の女衒が独り。
「そうかいそうかい。だが残念なことに、大切なもんなんざ幾つも残っちゃいなくてな」
終わりを垣間見るなどできる筈もなく、少女の戯言と流し、にやりと口角を吊り上げる。
そういう普通の男として、弥太郎は女に手を差し伸べた。
「それに、お前さんが何を言おうと、俺の仕事は変わらねえぜ?」
「はい。どうぞ、私を。連れて行って、下さい」
滲む微笑はまるで麗らかな春の日の柔らかさ。
そっと手を取れば、僅かな熱が重なり合って、二人静かに吐息を漏らす。
最後まで互いの視線は絡み合わないまま。
穏やか過ぎて拍子抜けするくらい。“りる”は降りかかった不幸を嘆かず、当たり前のように理不尽を受け入れる。
───おそらくは、この時点で結末は既に決定されていた。
弥太郎は死ぬ。
悪辣を是とした身ならば応報もまた理のうち。
そこには何の裏もない。勘違いや小癪な叙述トリックなどではなく、ただただ当然の帰結として彼は命を落とす。
他者を食い物にしてきた女衒はその所業に相応しく、惨めな終わりを迎える。
これは最初からそういうお話だ。
「そんじゃ、これからお前さんは俺の預かりになる」
しかし人の身では遥か先など見通せず。
今日の商談がうまくまとまり、弥太郎はからからと笑う。
地方の村に赴き、亡くなった富豪の娘を買い叩く。結局は収まるべきところに収まった。別に大したことはしていないが、仕事が片付けば肩の荷も下りるというものだ。
「はい。よろしく、お願いします。……あぁ。でも、一つ、だけ。間違えています。父は、死んだのでは、ありません」
まずは一安心。
そうやって気を抜いていたから、無防備なところへ、彼女の言葉が突き刺さる。
「父は、私が殺しました」