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第7話初めての『悪』

一部過激な表現がございますのでご注意願います

俺は運命の時を待ちわびていた

もうすぐこの道を目標が通過する

その時が勝負!


「聞こえる〜?」

「うぉ!」

突然頭の中に声が聞こえた

耳元とかそんなもんじゃない、摩訶不思議な体験をしちまったぜ


「貴方の中のデビルGに直接通信を送ってるのよ。これからはこの方法で連絡するからすぐに馴れてよね」

「了解」


今待機しているのは車の中だが

もちろん普通の車ではない


一見すると普通のワゴンのようだが

強力なステルス機能や高い防御能力、多数の火器も搭載し

水の中や空でも移動できるように改造されているらしい

今うちの組織に存在している唯一の移動手段だ


座席のクッションも高級品だし

下手なフェラーリやベンツよりも金が掛かっているのは確かだろう

あんまり居心地が良いもんだからついウトウト・・・


「ウトウトすんな!」

「わかってる」

寝るところだったな

気を引き締めていかんと


「お兄ちゃん聞こえる〜?」

桜の声が別の場所から聞こえてくる

頭の中から聞こえるのは同じだが、それが別回線であることは認識することができた

「桜もそこにいるのか?」

「情報面でのバックアップは私が担当するんだよ」

「そうか、よろしく頼むぞ」

「ラジャ〜!」


さてそろそろ時間か

車から降りて道路の遥か遠くを見つめて立つ

アスファルトの続く直線道路を睨みながら

これから起こるバイオレンスにワクワクしている自分がいた


「きたよ、お兄ちゃん。接触まであと300秒」


本部から送られてきた地図情報が俺の脳内に表示される

ターゲットマーカーがこちらに接近するのを確認して、タイマーをスタートさせた


「ハジメさん、聞こえますか」

「聞こえてるよ、菫」

「作戦結構と同時にヒーロー協会に対して身代金の要求を行います」

「これでバスジャックに失敗したら笑えんな」

「さすがにそれは無いと信じてますよ。でもヒーローが派遣されてくることは間違いないので、必ず戦闘になります。勝てないと思ったら速やかに撤退を行ってください」

「了解した。事前の打ち合わせ通りに行動する」

「これから先、私が手伝えることはなくなると思いますが、どうか御武運を」


タイマーが120を切り、いよいよその時が近づいてくる

俺の中の破壊衝動が眠れる悪魔を呼び起こす


細胞が沸騰し

DNAが狂気の螺旋を紡ぎ出す

デビルGは俺の体を作り変え、帝国軍式パワードスーツを再現していく

まるで自分がワニにでも変わるかのように皮膚が硬く、黒く変わり

その瞳は真紅の炎のように輝く

全身を鋼に変えたその姿を自分で見ることはできないが

自分が人外になっている実感はある


力が漲り、心が躍る

早く力を試したくてウズウズしている


「さぁ、こい!!!」


目標が視界に入ると飛びつきたい衝動に駆られながらも、それを抑えて時を待つ、そして


ズンッ!!!


鈍い音と共に車の動きが鈍化し、停止状態になる

あらかじめ設置されていた重力地雷の効果だ


重力地雷は指定された対象物の重力を操作することができる

その効果でバスは地面に引き寄せられ停止状態になったのだ

もちろん中の子供達には影響はない、あくまで重くなっているのはバスだけだ


俺は運転席に素早く接近すると窓ガラスを突き破り運転手の服を掴んで外へ投げ飛ばす

運転手の男は草むらに投げ飛ばされ転がっていく

あれくらいなら死にはしないだろう

だいたい人質以外なら殺したところで無問題だ

オッサン1人分の身代金よりも車内の空気改善のほうが何倍も重要だろう


俺は車内に侵入すると周囲を睨みつける

怯える子供達と付き添いの先生

これぞ悪の醍醐味という奴だろう

戦闘員やってて良かったな


「俺は秘密結社レノンの戦闘員『G』だ。これよりお前達には我々の人質になってもらう!」

「こら! 戦闘員1号、勝手に名前を変えるな!」

椿の文句は今は無視、今一番良いところなのだ


「ひ、人質なら私がなります、だから、子供達は解放してください!」

今時珍しい勇気ある幼稚園教員だ

しかもうちの3姉妹ほどではないがなかなかの美人

まあ、予め下調べはしてたんだけどね


「残念ながらそれはできんな。子供達だからこそ多くの身代金が期待できるというものだ」

「そんな・・・せめて女の子だけでも」

むしろ男はいらんよ

金に換わると分かってるから開放はしないがね


徐々に園児達に接近していくと女教員は体を張って教え子達を守ろうとしてくる

まったくもって珍しい良い教員だな、まったく


「この子達には手を出さないで!」

「そうか・・・それじゃあ代わりにお前に手を出すとするかな」

ヒーローが来る前にやることやっておかないとな

ちなみに今回この女教員分の身代金は要求していない

よって人質ではない=人質に危害を加えてはいない

現在バスに乗っている園児1人ずつに値段を付けて交渉に当たっている菫のおかげだ

どうしてもバス全体の金額で交渉すると融通が利かないからな


女を運転席に引きずると服の一部を引き裂き大事な部分を露出させる

全部は脱がさない、そのほうが興奮するからな

硬い手のひらを柔らかく変化させ直の感触を楽しく

暴れる相手を無理やり襲うのも悪の醍醐味というものだ


〜数十分後〜

「遅い!!!」

「こっちはもう終わったぞ」

「じゃあもう2〜3回やっておけば? Gの想定外の使い道を色々やってくれたおかげで良いデータが集まってるのよね〜」

「反応も薄くなってるし、これ以上やってもつまらんだろ」


〜さらに数十分後〜

「ま〜だ〜か〜」

「ダレてきてるね、お兄ちゃん」

「もう1時間以上経ってるぞ。いい加減おかしくないか?」

「ん〜なんかね〜『虎の穴』が動いてるみたいなの」


Gの情報連結によって秘密結社虎の穴の情報が転送される

関西を中心に活動していた悪の組織だったが、最近関東にも進出しているらしい

その虎の穴の大規模作戦が動いたとの情報でヒーロー本部は大忙しのようだ

どうせ1回に1怪人しか出撃できないんだからヒーローも1グループで十分だろうに・・・


「最新情報だよ。現在虎の穴は32の作戦を同時進行中、その一つもこの近くで行われてるみたいだね」

「32!?」

さすが大手だな

それだけの作戦を同時発動すれば当然同じ数のヒーローが参戦を余儀なくされるわけで

このタイミングに乗じて活動を起こす秘密結社も後を絶たないだろう

ちょっとした祭り状態にある


そして我が秘密結社レノンはその祭りに見事に乗り損ねたわけだ

ここでそれを言うと桜が可哀想なのでやめておく

俺もノリノリで賛成しちゃったし


〜そしてさらに数十分後〜

「いい加減撤収しよう」

「ちょっと待って、一度発動した作戦を無にはできないわよ」

「現金輸送車襲いにいったほうが美味しいぜ?」

「さすがにもう走ってないわよ」

「協会との交渉はどうなってるんだ?」

「身代金を払わなければ人質を殺すとでも言えって言うの? 一度人質として宣言した以上危害は加えられないのは分かってるはずよ。騒動が治まるまでヒーローを回さないつもりね」

「こっちはよぉ、ガキは泣くし、小便は漏らすしでもう大変なんだぞ?」

「幼稚園バスジャックを成功させられる組織は一流になれるっていうジンクスがあるそうよ。がんばって」


勝手言ってくれるよ本当



〜それから時は流れ〜

「だからね、重力地雷代だけでも稼がないと赤字出ちゃうでしょ?」

「次で取り戻せるさ・・・たぶんな」

わざわざ変身してまで俺はなにしに来たんだろうな

いい加減我慢の限界だったのでバスの入り口から立ち上がり基地への帰還行動に移ろうとしたところで奴はきた


「桜、目の前に青いキンキラがいるが誰だこいつ」

「・・・」

「桜!?どうした!?」

「・・・スゥ・・・スゥ・・・」

寝てる!!!?

まあ、あれだけ事態が進展しなきゃ当たり前なんだが・・・

「椿〜」

「何か動きがあった?」

「目の前にヒーローらしき奴がいる」

「桜は何してたの!?」

「・・・クゥ・・・」

「起こしてくるから待ってなさい!」

その前にこいつの情報をくれよ!


「お前がこのバスジャック事件の犯人だな?」

「じゃなきゃこんな格好してないだろ」

「ああ・・・そうだな、聞くまでもなかったか」

「お疲れの様子だな」

「祭りに乗じた馬鹿共の掃除に忙しかったもんでね」

「こっちは待ちくたびれて死ぬかと思っていたところだ」

「それは惜しいことをした、もう少し焦らせば勝手に死んでくれたか」

「せっかく来たんだ、とことん殺り合おうじゃないか」

「悪いが俺は速く帰って休みたいんでな、最初から全力でいかせてもらう」


2つの影が交差し互いの位置を入れ替える

それと同時に脳内に響くアラーム

擦れ違いざまに腹部を切られたらしい

修復可能な範囲だが、奴の武装がビームサーベルだと見切れなかったのが痛い

通常の格闘戦なら互角に渡り合えると想定していたが

これだけの出力のサーベルを有するヒーローとなると、それなりに上位か

一応マシンガンを携帯してきたが、キンキラボディーのメタル系ヒーローには効果は期待できそうにない

あとは格闘戦で何処までやれるかだが


再びお互いの間合いを読み合い

一撃必殺の構えで睨み合う

こちらが有効な打撃を与えるなら正面から行くしかないだろう

だが致命傷を与える前にこちらが切られて終わる可能性が高い


そもそもデビルGがいかに画期的システムでも

俺は怪人ではなく戦闘員だ

ヒーローと互角に戦えるだけのスペックはない

勝つには奇襲が必要だ・・・・

どうする、考えろ!考えろ!考えろ!!!


青い剣士の踏み込みと同時に全力で前方に突進する

青い剣士はこちらがタックルをしかけたと思ったのか一刀両断の構えを見せる

それがこちらの狙い!


『左腕装甲密度最大』


青い剣士の光の剣を左腕を溶かしながらも受け流し、前方へ転がる

そのまま地面に滑り込む俺を追撃して奴が迫る


俺がそれを右腕で拾い発動するのと、奴の剣が振り下ろされるのはほぼ同時だった


光と透明な壁の衝突とでも表現すればいいのか

青い剣士の持つビームサーベルは俺に届くことなく、透明の壁に激突したかのように止まっている

そして数瞬後、奴は大きく吹き飛ばされた

俺は奴を全力で追いかける


地面に激突し、そこから起き上がろうとする奴に、俺はそれを叩きつけ、最大出力で発動させた


そして次の瞬間

そこにはミンチになった肉片と青い金属片だけが残った





なんとか・・・なるもんだな

左腕と腹部の損傷、さっきの反動で右腕の調子もおかしい

先程から鳴りっぱなしのアラームを無理やり切り地面に座り込んだ


さっき俺が拾って使ったのは使用済みの『重力地雷』だった

すでにエネルギーは空だったがデビルGの変身能力を応用して右手の手のひらに融合させてエネルギーの充填を行ったのだ

そして真横方向に重力を発生させ奴を弾き飛ばし、超重力で地面に押し付けてミンチにした

自分でも成功したのが嘘みたいなんだが

Gの性能のおかげだろう、椿に感謝だ


しばらくして

「お兄ちゃん大丈夫!?」

桜の声が聞こえる

「大丈夫だちゃんと生きてる」


「ごめんなさい・・・私が寝ちゃってたせいで、お兄ちゃんが・・・うぅぅぅぅぅっ」

泣き始めそうな桜をどうあやすべきか

生きてるから結果オーライとでも言っておくか?

それともしっかし叱っておくべきなんだろうか

最近思考が兄化してきてるな、俺


「あ〜桜、俺もこうして無事生きてるわけだしな」

「お兄ちゃん!!!まだ!!!」

「!?」

勘か偶然か俺が飛びのいた地点に光が突き刺さり地面を溶かし穴を空ける


振り向いた俺が見たのは青い剣士とよく似た赤いメタルボディと槍のように大きな銃だった

この後の展開はほぼ第0話に繋がります

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