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第4話:ヒーロー

「ありがとう、お兄ちゃん、荷物持ってもらっちゃって」

「いやいや、これくらい大したことないって言うか、桜1人じゃ無理だろこの量」

俺は買出しに出かけるという桜に付いて、久しぶりに地上へと出てきていた

買い物の内容は主に食料品なのだが、小学生1人に持たせるには多すぎる量だろう


しかし、この食材で何を作ろうとしているのか予想がつかないな

1度も聞いたことの無い野菜や調味料を買いに行かせて、椿は何を作るつもりなんだ?


『インド料理でも、ブラジル料理でも、イギリス料理でも、食材さえあれば作ってみせる』とか豪語していたが、イギリス料理だけは嫌な予感がするのでやめといてもらおう


「そっち重くないか? 全部こっちが持ってもいいんだぞ?」

俺の体内に眠る寄生型強化装甲服は休眠状態でも効果を発揮し、普通なら腕が痛くなりそうな大荷物でも重さを感じないほどだ


「大丈夫だよ。普段は全部1人で買いに行ってるし」

「持てるの!?」

「持てるよ?」

彼女が突然変異で怪力なのか、宇宙人と地球人では基礎能力にそもそも差があるのか

何にせよ周囲の目というものを気にするべきだろう

桜ではなく、この買出し表を書いた鬼畜姉が



新しい発見があったりしたが

平凡な買出しというのは自分達が悪の秘密結社であるという自覚を失いかけるくらいに穏やかな時間だ

なんて考えてると、ろくなことが起きない法則というものが存在するわけだ


目の前で起きていることは現実なのだろうか

道路の真ん中で幼稚園バスが止まっている

それだけだと普通に聞こえそうだが

バスの上に巨大なクモのような男が乗っているのを見れば、その異常さが理解して頂けるだろうか

クモのような男というかクモ男だなあれは


「お隣さんだ〜」

「家のお隣さんの正体があれなのか?」

「ん〜とね、レノン本部から一番近い場所に本部がある秘密結社の人達だよ。確か名前は・・・ベムベム団?」

「構成員は全員妖怪人間だったりしてな」


「子供達を助けたければ要求通りの金を持って来い!!!」

遠巻きに眺めている俺らにはお構いなしにクモ男は身代金を要求しているようだ

どうせなら金持ちのガキを1人誘拐してやったほうが効率は良さそうだがな

なんにせよ俺が今一番思っているのは

「よりにもよってクモ男か」

「一番ポピュラーな怪人だよね」

「一番勝率の低い怪人でもあるだろ」

「強い人は本当に強いよ。クモ怪人の良さを引き出せば十分戦えるよ」

「86でもランエボに勝てるってことか」


ここまできたら次に何がくるのか期待してしまうな

まるでヒーローショーを見に来ているガキのような心境だ

実際には今回部外者だからこその無責任な考えなんだが


「そういや警察はこないんだな」

「きても怪人に殺されるだけだしね。警察からさらに『ヒーロー協会』に連絡がいってるんだと思うよ。」

「ヒーロー協会?」

「家に帰ったら詳しく教えてあげるね」

「頼むよ」


警察がこないのに、クモ男は何に対して交渉を持ちかけているのだろうか

良く考えたら、この場に警察を入れないことは効果的なことのようにも思える


「待て〜い!!! 子供達を人質に取るとは卑怯な奴め! このジャスティスグリーンが成敗してくれる!!!」

お、なんか緑のがきた、見かけ的には戦隊ヒーローっぽいんだが

「戦隊もののヒーローっぽい感じだな」

「正義戦隊ジャスティス5のグリーンだよ。あれもご近所さんだね」

「何で1人なんだよ、5って付いてるなら5人でこいよ」

「あの程度の雑魚怪人相手に5人はこないと思うな。ジャスティス5日本支部はヒーローの中でもランクが高い大御所だからね」

「だからレッドでもなくブルーでもなくグリーンが来たわけか。せめてピンクとかが来れば良かったのに」

「ジャスティス5(日本)は最近ピンクが引退してブラックになったらしいから、『赤、青、黄、緑、黒』で全員男の人だよ」

「嫌な戦隊だな! 俺が子供でも絶対応援しないぞ、それ」


俺と桜がくだらん論議をしている間に、戦闘は大詰めといった感じになってきている

クモ男は糸攻撃で動きを封じようとするも、全て回避されて当たっていないので無意味

対する緑は光線銃をバシバシ撃ち込んでいる


クモ男の反応速度が悪いわけではなく、糸が飛来する速度が光線銃よりも遅いのが問題だな

射出時に無駄なモーションも多いし


「なってないなぁ。糸に頼らないで多脚と毒で勝負しにいけばいいのに」

「脚遅そうだから引き撃ちされるんじゃないか? 占拠したバスから離れたくないんだろうしな」

「予め巣を作っておかないからだよ、クモ怪人なのに」


「グハァァァァァァァ!!!!!!!!」

大袈裟な声を上げてクモ怪人が倒れる、結局ビームで蜂の巣にされる形になったな

爆発するかとも思ったが砂になって崩れた


今回の功労者である緑は子供達を助けて満足そうだが

助けられた子供達は微妙な表情だ


「俺ならクモ怪人以上に緑だけの戦隊に助けられたほうがトラウマだな」

「単体でもレッドならまだ良かったのにね」

「さて、帰るか」

「そうだね」


夕飯の献立の話をしながら、俺と桜は家路に着くのだった

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