第33話:戦闘開始
リザルフ王国領内
旗艦『グリュード』にて作戦会議が行われていた
「ここまでほとんど抵抗もなしに攻め込めたのは何か裏があっての事なのか?」
「敵も馬鹿ではない、戦線が延びきったところで叩くつもりなのだろう」
今この場所には
俺
レノン王国国王兼帝国皇帝ジェスター
ルビゥム王国王女にして軍司令官サーシャ
その他各艦隊の重要人物が揃っていた
「今我々がいるのがこの場所だ」
中央のモニターをジェスターが指し示す
リザルフ王国首都星まで後半分といったところだろうか
「リザルフを落とすなら今のルートが最短だが、この宙域が問題になる」
MAPの中に記されたワープラインとワープポイントが点滅する
「我々が前方の惑星『スリフナ』に対して侵攻を行うと、このルートから奇襲を受ける危険が大きい」
ジェスターが示したのはワープラインが重なる1点
それは惑星『アロス』へと繋がっており
アロスには多数の敵艦隊が存在すると考えられていた
「背後から挟撃される危険が大きいというわけか」
「我々は最短での首都星制圧に向けて動いている。このポイントを放置しておくと補給路を絶たれる可能性もある」
「艦隊の一部を後方に残していくしかないんじゃないか?」
「だがあまり多くの戦力を残しては首都星決戦に支障を生じる恐れがある」
「少数精鋭で守りきるってことか・・・俺向きだな」
「私もそれを考えていた、ゲイザー卿とフィシス艦隊には後方の安全を確保して欲しい」
「今回フィシス艦隊は補給艦隊としての参戦だ、補給路の確保に必要な戦力以外はアロスからの敵艦隊迎撃にあてよう」
「それにしてもフィシス艦隊だけでは少なすぎるのではありませぬか? 私のルビゥム艦隊の一部を防衛に回したほうが良いと思いますが」
「なるべく主力を使いたくない、ここはゲイザー卿の力を信じよう」
「御意に。抜かれるなよG」
「そちらこそ、俺がいないからといって逃げ戻るなよ」
俺の指揮するフィシス艦隊は
ワープラインを確保しながら
帝国から送られてくる補給物資を運搬していた
そのせいで、これまで戦いにはまったく参加していなかった
小競り合い程度しかなかったとはいえ、見ているだけというのは性に合わない
これでやっと大暴れできるな
「キャリー、迎撃部隊の編成を行ってくれ」
「それでしたら既に用意しております。どうぞ」
正式に副指令として任命されたキャリーから編成に関する書類を受け取った
相変わらず気が利く
「問題ない。艦隊の移動を開始してくれ」
「了解しました」
キャリーが各艦隊に向けて命令を発令する
その後姿を見ながらも
俺の心は遠い戦場に向いていた
やはり前線で切り合い、殴り合いをしているほうが性に合っているな
この戦いが終われば、総司令をキャリーに譲ってまた名誉職に戻ろうか
「大将!!!」
「どうした? ボドル」
「偵察に出ていた部下がアロス星系から艦隊が発進するのを確認したそうだ」
「そうか・・・今からだと迎撃地点は最終防衛ラインギリギリか?」
「現在動かせる戦力を全て導入したとしても止められるかどうか・・・」
「ボドル、お前の突撃艦隊を俺が指定するポイントに終結させておけ。キャリーは最終防衛ラインに戦力を集めろ」
「了解だ大将」
「最速で完了させます。どうかご無事で・・・」
「おう、行って来る」
キャリーをギュッと抱きしめ
熱いディープキスを交わし
俺は艦橋を後にした
これから始まる戦いに胸が躍り
血が沸騰しそうなくらい熱くなっている気がした
「出るぞ、アシェリー!!!!!!!」
「準備はできておる。だが、器を使いすぎるなよ」
「そのためにお前がいる」
GWBに乗り込み
旗艦から発進する
味方の迎撃体制を整える時間稼ぎに
少数の艦隊で攻撃を加えなければならなかった
不利な状況でも
いや、不利な状況だからこそ
俺の闘志は熱く燃え上がるのだった