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第2話:美しい花には何かある?

ものすごく苦労した

こんなに苦労したのは高校時代の学園祭以来かもしれん

あの時は準備の途中で他の連中が帰りやがって

結局俺一人で最後の詰めをやる羽目になった


まあそれは置いといて

広告に書かれた地図が小学生が書いたかのような出鱈目な書き方だったせいで

目的のビルを見つけるまでにえらく時間がかかってしまった

おまけに広告には電話番号等の連絡方法がいっさい書かれていない

秘密結社だからか?


ビル自体はいたって普通の建物だな

看板が出ているということもないのは一応秘密結社としての認識があるのか

それとも単に出していないだけなのか


広告によるとB3Fのようだが

エレベーターには地下へのボタンがない

地下への階段もない


さてどうする

君ならどうするよ!?


そろそろ帰るかと考えているところに一人の少女が入ってきた

黒髪を腰近くまで伸ばしており、肌は白く、大きな目が可愛らしい、例えるならばまさしく『大和撫子』

100人に聞いたら99人が美少女と答えるような美少女だ

1人が反対するのは妬みよるもの

まさに『美少女』という言葉に相応しい容姿だった


せっかくだからこの子に聞いてみようかね

別に可愛い子に声を掛けて何かしようって企んでるわけじゃないんだからね!?

確かに俺は美人なら年齢性別は気にしないけど

ああそういえば美人って美しい人だから女に限定してないよね


突然の美少女の登場に少し混乱状態にあったが

何とか冷静さを取り戻して話を聞いてみる


「君、ちょっといいかな」

「え!? は、はいっ何でしょうか?」

「あぁ、突然声を掛けてごめんね、この広告によるとこのビルには地下3階があるみたいなんだけど、行きかた知ってるかな?」

見知らぬ男に声を掛けられてビクッとしてしまった少女に悪いと思いながらもビルについて聞いてみた

このビルの何処かに住んでいるようなら知っているかもしれないし、知らないなら帰るだけだ

しかし、以外にも俺が見せた広告は意外な反応をもって答えられた

「あっ! この広告を見てきたってことは私の家に面接にきた人ですよね? やった〜お姉ちゃん達も喜ぶな〜。

あっ、地下へはそこのエレベーターで行けるんです。私も帰るところなんでご案内しますね。」


関係者かよ!!!?

まったくもって突っ込みどころに困らない組織だな

俺は彼女の案内でエレベーターに乗り込むと端に立ち

彼女はボタンの前に立った


そして驚くべき速さでボタンを押しまくり始めた

一見イタズラしているだけにしか見えないわけだが

しばらくして『ピンポーン』とどこかのクイズ番組のような音がしてエレベーターは降下し始める


このエレベーターに地下表示はない

つまり存在しないエリアへ降下して行っているわけだ

俺の関心はそのこと以上に、あの長い暗証番号を暗記している目の前の少女にあった



「遅くなりましたが、私の名前は『(サクラ)=ファリン=レノン』といいます」

「え〜と、ハーフとかなのかな?」

「はい。父が地球の人ではなかったそうです。日本人の母と結婚して、私達が生まれたんです。本当はファリンが本当の名前らしいのですが、母が日本で暮らすには日本の名前が良いだろうと言って桜と付けてくれたそうです」

「へ〜」

何かとんでもない事実をさらりと言った気がしたが、華麗にスルーしつつ桜ちゃんのお母様にグッジョブ!!!と心の中でつぶやいておいた

こんな黒髪美しい大和撫子にカナ文字の名前は似合わない

極めて個人的な感想だが『桜』という名前は彼女に合っていると思う

「俺は『木戸 一』っていうんだ、よろしくね桜ちゃん」

そっと手を差し出すと、彼女はそれに答えて握手をしてくれた

彼女の手は小さく、柔らかく

『あ、ここ密室っ』とか黒い考えが浮かんできたけど押し込む、押し込む

いかんねエレベーターは、実にけしからん


「さぁ、着きましたよ」

「ありがとう」

エレベーターを降りると、そこは予想以上に近未来的な建造物になっていた

明らかにオーバーテクノロジーな建物を見るに、どうやらイタズラであの広告が出されていたわけではなさそうだ

彼女の後に続いて廊下を進むと、そこはロビーになっていた

近い感じで言うと病院の待合室のような感じだろうか

いくつかの椅子とカウンターがあるが誰もいない


「今姉を呼んできますので座って待っていてください。あっ! その前にお茶をお出ししたほうが良いですよね?」

「お茶も嬉しいけどお姉さんに連絡してきて貰えるかな?」

「解りました、ちょっと待っててください」

パタパタと走って部屋から出て行く彼女の後姿を見送ると一人不思議な地下都市へと取り残されることになった

不安よりも好奇心が勝っているからだろうか恐怖はない

元々生にそこまで関心がなかったせいかもしれない


どれくらい待っていただろうか

ようやく扉が開いて一人の女性が入ってきた

ウェーブのかかった長いブロンド

完成された顔には不思議な形のメガネ

そして服の上からでも解る抜群のプロポーションを包むのは純白の白衣


見るからに研究員といった姿をしている

いや、訂正しよう『美人研究員』だ

それも半端な美人ではなく超が付くほどのだ


「貴方が新しく入った戦闘員ね?」

「まだ入ると決まったわけじゃないがね」

「ここまで来たということは入ったと同じ意味なのよ。まぁいいわ、さっそく実験を行うからこっちへ来なさい」

「桜ちゃんに言われてお姉さんを待っているところなんだが?」

「それなら平気よ。私が彼女の姉の『椿(ツバキ)=アルマ=レノン』だもの」


また無意味に長い廊下を歩きながら自己紹介を済ませるが

どうにも俺の個人情報に興味なさげに感じる

あと俺の健康状態に異常な関心を持っているような気がするのは嫌な予感がするのだが


「さ、ここが私の研究室よ」

そこは今まで以上にすごい光景だった

今までを2050年とするなら2200年くらい行ってそうな光景だ

まあこんな表現では解りにくいだろうが俺も今まで見たことのない光景にうまく表現できん


「じゃあそこで全裸になって立ってちょうだい」

「全裸!?」

思わず声に出して突っ込みを入れてしまったが

これだけの美女を前にして全裸になるのは色々な意味で恥ずかしい&理性が崩壊する可能性大だ

「大丈夫よ見慣れてるから」

「そういう問題ではないと思うぞ。というかこっちの問題であってだな」

「いいからとっとと脱ぎなさいってば!!!」

「あっ! こらっ」


無理やり脱がしにかかる彼女を止めようとしながらも何かを期待してしまって上手く抵抗できないのが男の性か

ベルトを外されて、ズボンを下ろされて、俺のナニが露出する

この状況だ、当然アレなことになっている、それはもう最大限に


「何・・・これ・・・」

それを見た瞬間に硬直しているのは先程見慣れていると言っていた彼女だった

「何って・・・ナニだろ?」

「嘘っ! だってこんな・・・いつも見てるのと違う」

「男は興奮するとみんなこうなるんだよ。普段はどんなのを見てるっていうんだ」

「普段は・・・ほら・・・生きてるのは初めてって言うか」

普段どんなのを見ているのか知らないが

何かの珍獣を観察するかのごとく凝視されると余計に充血してくるし

このままの体勢だと欲求に負けて手が出てしまいそうで怖いので、そろそろこの体勢を脱する方法を考えないと危険だ


「お姉ちゃん、こっちに面接希望の方が・・・きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!」

グッドなのかバットなのか解らんタイミングで桜ちゃんが研究室に入ってきてくれたおかげで窮地は脱したが

混乱しながら騒ぎまくる彼女を静めるのに多大な労力と時間を要するのだった



「えっと・・・じゃあ、ここで待っていてください。今上の姉が来ますので」

そう言ってお茶を置いていってくれる彼女の顔はまだ赤い

研究以外に興味のないらしい椿よりも桜ちゃんのほうが性の知識があるのかもしれない

あの光景をよからぬ事をしていると勘違いしたのだろう

まあ普通に考えたら誤解して当然の状況だったのだが

それにしても説明するのには苦労した


俺が今待たされているのは先程のロビーとは違い少し広めの個室だ

前にはデスクが置いてあり、その上には乱雑に物が散りばめられている

このデスクの持ち主はあまり整理整頓が得意ではないらしい


「お待たせして申し訳ございません」

そう言って入ってきた女性は、二人の妹と互角かそれ以上の美女だった

3回目だと予想もできていたので、さすがにそこまで驚きもしなかったが

それでもその美しさには目を奪われる


特に胸に

別にそこばっか見てるわけじゃないよ?

でも『デカッ』とか思ってた妹よりもさらに大きいと『ドデカッ』て思っちゃうもんじゃない?

そうそう、そこばっか目がいってしまっても普通のことなのだよ


妹よりも柔らかい雰囲気の持ち主で、髪は姉妹で唯一ショートにしている

それでもフワリと広がるブロンドは彼女の柔らかい感じを強調していると言えるだろう


「私が長女の『(スミレ)=リオ=レノン』です」

「木戸一です。よろしく。」

「こちらこそ宜しくお願いいたします。先程は妹が何やら迷惑をお掛けしてしまったとか・・・」

「お気になさらずに。それよりもこれについて聞きたいんだが」

俺は持ってきた求人雑誌を彼女の前に出した


「それでは、何処から説明いたしましょうか?」

「色々聞きたいことが多すぎて何から聞いたらいいかわからんが。とりあえず、あんたら姉妹は何者なんだ?」

「そうですね・・・それには私達の父親の話からしなければなりません」

「確か地球人じゃないんだっけか?」

「何故それをっ!?」

「さっき桜ちゃんがさらっと洩らしてた」

「っもぅ、私が言ってビックリさせたかったのに・・・」

ちょっと拗ねてる、見かけと違って子供っぽいところがあるのか?

これはこれで可愛いから良し!


「コホン! え〜とですね、私の父は遠い宇宙の彼方にある『大銀河レノン大帝国』の王子だったわけでして」

「よっぽど『大』が好きな王家が作ったんでしょうな」

「日本語に訳すとこうなってしまうだけで実際には違った意味合いを持っているようですよ。まあそれはともかく。帝国の王子だった父はもう一人の皇位継承者と賭けをしていたのです。」

「賭け?」

「はい。家臣や親族の力を借りずに自分1人で有人惑星を征服できれば次の皇帝の地位を得るというものです。帝国には複数の王家が存在していて、その中から次の皇帝が選出されるわけですが、次の皇帝の座を巡り父と腹違いの弟の間で長年の対立があったのです。」

「そのための賭けか。賭けの対象に選ばれた惑星のとっては、たまったもんじゃないな」

「父はその対象の惑星として地球を選びました。しかし、父はこの星を征服することはできなかったのです。」

「じゃなきゃ今頃大騒ぎだろうしな。」

「地球人の抵抗ももちろんありましたが、それ以上に征服を困難としたのは母の存在でした。父は地球人である母を愛してしまい、地球侵略を断念したのです。皇帝の地位よりも愛する者を取り、叔父に全てを譲り地球人として生きる決意を固めた父はこの地で家族仲良く暮らしていました・・・しかし!!!」

「しかし!?」

「次の皇帝になるはずだった叔父が病で亡き者となってしまったんです!? 宇宙風邪で!!!」

「風邪!? 本当に風邪かのか?それ」

「宇宙風邪は地球の風邪と違って拗らせると大変らしいです」

「そうなのか・・・でも、良かったんじゃないのか?」

「確かに・・・父はそれはもう喜んで、『やったぞ母さん、あの糞野郎が死んだおかげで俺が次の皇帝だ!!! やほ〜い』とか言って小躍りしてました。」

「大丈夫かよ帝国!? 次がそれで!!!」

「父が皇帝になるにあたって新しい問題が持ち上がってきてしまいました、その次の皇帝についてです。」

「気が早いな、現皇帝はまだ存命なんだろう?」

「もう200歳近い老体という話ですから父が皇帝になるまでは数年あるか無いからしいです」

「それで、次の皇帝を決めるために新しい賭けが始まったわけか・・・」

「理解が早くて助かります。ただし今回の賭けは少し形式が変わっているのです。私達が征服できるかではなく、継承権を持つ参加者の誰が一番早く世界征服を達成するか、という内容に変更されたのです。」

「じゃあ他にも帝国の王家連中が地球に来ているわけか」

「おそらく。でも私達姉妹は皇帝の地位にが欲しいわけではないの。この星を他の王家の人間に征服されるなんて絶対に嫌なの。」

「生まれ育った星だから?」

「違います! 幼いころから姉妹で『将来はこの星の支配者になろうね』って話していたんです。それを今更他の親戚に先を越されるなんてまっぴらごめんです!!!!! そのための戦力として戦闘員を募集していたというのがこの広告なんです」

「こんなので集めるよりプロの傭兵を雇ったらどうなんだ?」

「ダメです。そんな無駄な予算はうちにはありません。各家の個人資産で戦うのがルールですから」

「それで・・・俺以外に誰かきたのか?」

「・・・来てませんorz」

「だろうな」


正直なところあんな広告でここまで来れるのはよほどの物好きだろう

だいたい入り口で桜ちゃんに出会わなければ俺だって帰っていた

ああ、だから椿はさっき『ここまで来たということは入ったと同じ意味なのよ』なんて言っていたわけか


「それで、俺の面接はいつ始めるんだ?」

「えっ!? こんな話を聞いてもうちで働いてくれるんですか?」

「ちょうど就職先を探していたところだし、何よりそこまで事情を聞いて手を貸さないわけにはいかないだろ」


何より面白い

下手な自殺よりもよっぽど良い死に場所になりそうだ


「あ、ありがとうございます。ダメなら脳外科手術で記憶を消さなくてはいけないところでした」

「その話は置いといて、この広告についてだが・・・誰が作った?」

「私ですけど? あ、地図は桜が書いたんですよ」

「そうか、ところでな」

俺は以前考えた6つの突っ込み+秘密基地への入り方が不明なのに面接場所が基地内になっていた点について彼女に問い詰めると

最後には机の下に『うぅ』とか言って沈み込んでいった

まあ、まともな求人広告になっていたとしても来るのは俺だけだったろうがな


ああ、あと

組織名はあんまりだったので『秘密結社レノン』に改名させておいた

どうせ(仮)だったし問題ないだろう


あの組織名を徹夜で考えたらしい大人の女性が子供のようにブーブー言っていたのを除けば

読んで頂きありがとうございます

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