第23話:復活
施設の破壊を終え
瓦礫の山の上に立つ
そろそろスフィンの側に行かないとな
だが直ぐにスフィンの側へ行くことはできそうになかった
研究所の周囲には多数のドラルド私兵が集まり
こちらへの攻撃の準備を進めていた
さて、どうやって抜け出したものか
全てと戦っていたのでは時間がかかりすぎる
そんな時
背後で誰かが動く気配を感じた
まだ動ける奴がいたのか!?
咄嗟に振り向くとそこには・・・
「お前は!?」
「派手にやってくれているようだな」
そこにいたのは謎の庸兵『J』
皇居塔の戦いで地上に落下していったこいつが何故ここに?
「私は『不死身のJ』と呼ばれる男。あの程度では死なん」
「まったく・・・しぶとい奴め」
かつて勝てたのはGHとの融合あってこそのもの
今の俺に奴が倒せるのか?
だがやらねばならない
ここで死んだら桜との約束も、スフィンとの約束も果たせない
俺は約束は守る男だ
「前回のようにはいかんぞ!」
Jは俺に向かって跳躍し
高速の拳を打ち込んでくる
相変わらずのスピードに反応しきれない俺だったが
前回と違って翻弄はされない
スピードでは勝てないと解っているんだ
それなら・・・
自分自身の周囲に重力場を展開し
Jを圧殺しにかかる
2度目のこの攻撃を予測していたJは距離取るが
その瞬間に重力の方向性を変換し
Jが体勢を立て直す前に強引に突撃する
重力場で加速された俺の体は
砲弾のようにJに衝突し
もろとも壁激突した
俺は壁にめり込んだ状態からさらに重力場による追撃を行おうとしたが
すごい力で弾き飛ばされる
「!?」
何だこの力は!?
俺の体を一撃で飛ばすほどの怪力は奴にはなかったはず
「私もお前に負けてから強くなったということだ」
俺の突進を受け破壊された部分から
白い粘土のようなものが出てきて傷を修復してゆく
それは破損部分に覆いかぶさり
アーマーに変化した
「これこそがこの研究所で開発された『白き人』の細胞を利用した兵器の力だ」
奴がここに来た理由はそれか!?
「もはやお前に勝ち目はない!」
一回り大きくなった腕で俺に殴りかかるJ
俺は両腕でガードの姿勢を取るが
「グッ!」
以前より遥かに重い一撃にガードごと崩されて大きなダメージを受けてしまう
元々勝てるかどうか解らない状況だったのに
こんなパワーアップがあったんじゃ本気で勝てないかもしれんな
正面から向かってくるJに対して右手の重力場をぶつける
奴は同じく右手で俺の重力場と正面から衝突した
重力場は奴を握りつぶそうと圧力をかけるが
奴の腕はそれに耐えて重力場を突き抜けてくる
奴の拳の直撃を受けて大きく後方へ飛ばされる俺
「はっはっはっ、素晴らしい力だ、この力があればもう誰にも負けることはない」
奴は勝ち誇ったように俺に向かってくる
このままじゃ死ぬ
俺はここで死ぬわけにはいかないのに
どうすればいい!?
俺は・・・
強化されたJの力の前に対抗策も思いつかない
このままでは負けると思ったその瞬間
奴に変化が起きた
「!? 何だ!?」
Jの体を覆っていた白い物質が
さらに増殖しJの体を飲み込んでいく
「くそっ! やめろ、俺の言うことを聞け!!!!」
もがくJであったがその増殖は止められず
完全に飲み込まれてしまう
そして増殖し続ける白い粘土のバケモノは
やがて巨人へと姿を変えた
「研究中の不良品を掴まされたようだなJ」
損傷状態はかなり悪いが
それでも動けないレベルではない
Jがいなくなった今俺を止められる奴はいないだろう
早くスフィンに合流を
「グゥォォォォォォォォォォン!!!!!!!!!!!!!!!」
突然咆哮を上げたかと思うと
白い巨人は俺に向かって腕を振り下ろしてくる
咄嗟に重力場を展開して防いだものの
強すぎる力を支えきれない
このままじゃ俺まで奴に吸収される!
だが今の俺のこいつを倒せるだけの力はない
Jの時でさえ必殺の重力場を無視してきたタフな奴だ
このままの武装では傷を付けられたとしても修復されてしまう
「俺まで白粘土に取り込まれてたまるか!」
出力を上げて押し返そうとするも取り込まれるのは時間の問題に見えた
だがそこに
考えもしなかった援軍が現れるのだった
大気圏に突入したそいつは
Gの反応を頼りにこの場所へ接近し
今にも俺を取り込もうとする白粘土の腕らしき部分を機銃で破壊した
すぐに修復する白粘土だったが
その瞬間に距離を取った俺は
再接近してきたその物体から放たれたワイヤーに掴り上空へと脱出したのだった
それは黒い翼
Gと同じ色の装甲を持つ戦闘機だった
ワイヤーを登り上に立つと
操縦席らしき部分が開く
中に入った俺は情報連結してきた相手に驚いた
「お前!? 生きていたのか!?」
それは間違いなく俺の相棒
GHの人工知能であった
GHは久しぶりの再開を喜び
自分が生きていた理由を説明してくれた
〜皇居塔での戦いの瞬間〜
私はG専用デバイスGHに搭載された人工知能だ
私の使命はGをサポートすること
しかし今
私の機能は停止しようとしていた
このままではGが危ない
こんな時のための緊急プログラム
GHユニットを融合させれば
この危機を乗り越えられるかもしれない
だがそれは私の消滅を意味する
それでもGを、私を相棒と呼んでくれる友を守らなければ
私は自らGとの融合を進言し
彼と一つになった
自らの消滅を意味する行為でも
私には恐怖はなかった
元々プログラムされていないだけかもしれない
だが
私は彼の中で永遠に行き続けるのだ
そして融合が進み
私の意識は彼の中に溶け込んでいった
次に私が目覚めた時
そこにいたのは1人の女性だった
外見から私の製作者である椿に似ていると思ったが
彼女からは別の生体反応を感知できた
「覚醒したか。お前はGの中に溶け込むところであったぞ。私がGの修復と共に分離させておいたがな」
『何故私を?』
「お前には私の研究に協力してもらう」
彼女がコンソールから離れ
その後ろに存在していた黒い物体が見えてくる
それはGHに似た構造を持ち
しかし、まったく別に存在だった
「これがお前の新しいボディーだ。名を『Gウィング』という」
『GW・・・』
「お前の主人が今頃は危機に陥っていることだろう。何故私がそれを知っているのかは重要なことではない。お前なら奴を助けられるという事実だけが重要なことだ」
そうして謎の女性に助けられた私は
新たな体『GW』により飛翔し
相棒が待つ惑星フィシスに向かったのだった
〜現在・神の庭〜
「理由はどうでもいい、またお前に会えて嬉しいよ『相棒』」
新たな姿となり俺の下に戻ってきてくれた相棒を駆り
眼下の白粘土を迎え撃つ
こいつをこのままにしておいたら、フィシスそのものが飲み込まれてしまう
この場で決着を付ける!
上空から機銃とミサイルによる連続攻撃で敵を削る
しかし、それらの攻撃はすぐに修復されてしまい効果がない
「それなら!」
両翼に重力場を纏わせ
それを刃として敵を切り裂く
「Gブレード!!!!!!!!」
白粘土を真っ二つに両断し
崩れる白粘土
しかし・・・
「これでもダメかよ!?」
再びニュルニュルと再構成を始める白粘土
GWの力を使っても倒せないのかと絶望しかけた瞬間
相棒からGWの最後の武器についての説明を受ける
「機首主砲・・・スペックは全て謎? 何だこれは」
GWも詳しいデータを持っていないらしい
だがこれ以外に試していない武装はない
「やってみるしかないか」
俺は謎の兵器を立ち上げ
表示される手順通りに準備を行う
操縦をGWに任せ
両腕を専用のコンソールに挿入する
そしてGWの動力部と接続を図る
なんだ?
この動力は何なんだ?
GWの動力部はブラックボックスだった
何をエネルギーにして動いているのか完全に不明
そして俺の体に流れ込んでくるエネルギーを
機首主砲に向かい送り込む
以前やった重力砲に近い武装なのだろうか
準備が整い
再構成を終了した白粘土の巨人に向けて
その1撃は放たれた
黒い塊
そう表現するしかない漆黒の砲弾は
白粘土に命中すると拡大し
白粘土もろとも周囲の物資を飲み込み
黒い塊が消滅した後には何も残ってはいなかった
「何だったんだ? この武装はいったい・・・」
とにかくスフィンが心配だ
白粘土もいなくなったし
GWがあれば一瞬でスフィンに合流できるだろう
俺は復活した相棒と共に
シフォン王国国営TV局へ向かうのだった
以前から予告していた相棒の復活です