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第18話:旅立ち

漆黒の闇が広がる大宇宙

何故か俺はそこにいた


正確には地球人の感覚では表現できない速度で移動する宇宙船の内部にいる

俺の側には桜


そして船を動かすクルー達だ



今俺達は宇宙船に乗り、レノン帝国帝都へ向かっていた

何故そんなことになったかと言えば・・・







〜1週間前〜


「地球の復興もだいぶ進んできたな」


「みんなが協力してくれているおかげね。以前はあんなに険悪な仲だったのに」


「外敵が現れれば団結するのが人間ってもんさ」



リザルフ王国軍の侵略部隊を退けた後

菫を大将とする連合軍はそのまま地球政府へと姿を変えようとしていた


まず第一に各国政府が壊滅的な打撃を受けており

事態の収拾が可能だった組織が俺達だけだったこと


そして破壊された国々を復興するために

今まで秘匿されてきたオーバーテクノロジーが解禁されたことが大きい


大きな力はそれを管理する人間が必要になる

それを菫が負うことになったのだ


サーシャとスフィンは新政府設立には参加せずに帰国した

彼らの領土が現在攻撃を受けており

地球の統治権を巡って争っている場合ではないらしい


まあ・・・何と言うか・・・

みんなも薄々分かっていると思うが

『世界征服完了』

と言っても過言ではない状況だったりする


地球で唯一機能する政府の長になった菫は

実質的に地球の支配者である

俺達が予想もしなかった方向で悲願が達成されてしまったのは複雑な気持ちだ




「みんな私に正式な指導者としての挨拶をしろって言うのよ?」


「地球人全てに今の状況を説明しなけりゃならんからな。それには分かりやすい旗印が必要だ。国や文化を超えて一つに纏まらなければならない時だからこそな」


「本当に私なんかで良いのかしら・・・」


「おいおい、また昔の菫に戻ってるぞ。しっかりしろ!」


「・・・ごめんなさい。でも、大丈夫。やるべき事はやるから」



俺が菫の肩に手を回し

彼女を勇気付けていた時


ピー

部屋の外のコンソールから通信が入る


「菫お姉ちゃん、レノン帝国からの使者って人がきてるよ」


連絡してきたのは桜だった

桜も学校が休みなため、新政府設立のために協力してくれていた


「帝国からの使者? そんな連絡はなかったけど」


「サーシャあたりが戻ってきたのかもしれんぞ?」


「それにしては早すぎるわよ」


「菫お姉ちゃん、どうしたら良い?」


「ここに通してちょうだい。貴方も椿を連れてこの部屋まできて」


「うん、分かった」


「やれやれ、また面倒な事にならなきゃいいがな



菫の司令室に集まったのは

俺、桜、椿、菫

そして帝国からきた使者の男


「自分はレノン帝国第3近衛艦隊所属レヴァルジス艦長「ユーリ=ヘイマン」少尉であります」


「大尉で艦長?」


「地球とは船の数が違うから小型艦の艦長なら少尉から存在するわ。それよりユーリ少尉、貴方が地球まで来た理由を教えてくれるかしら?」


「はっ! 皇帝陛下より直々に伝令を承って参りました」


「伝令の内容を教えてちょうだい。ここに居る人間には遠慮する必要はないわ」


「了解しました。伝令の内容は『至急帝都へ帰還せよ』以上です」


「突然の帰還命令ね、しかも皇帝陛下から直々になんて・・・」


「どうするんだ? お前が居なくなったら地球の新政府設立は成り立たないんだぞ?」


「分かってはいるけど・・・皇帝陛下の命令に逆らうわけにはいかないわ」


「とは言ってもな」


「あの・・・」


「何か?」


「申し訳ございません。自分が伝えていない事がありまして・・・」


「何かしら?」


「この命令を使える相手はリオ王女殿下ではなく、ファリン王女殿下なのです」


「え!? 私なの?」


「はい、指令書には伝令をファリン王女殿下に伝えるように書かれております」


「いったい何だって言うのかしら? 何故この時期に桜を帝都に?」


「ふぅん・・・政治の話はよく分からないけど、この件にはお父様の影を感じるのよね」


「どういうことなの?椿」


「私と菫は最低限1度は皇帝陛下に謁見しているけど、桜はまだ1度も会ったことがないでしょ。そもそも地球以外に行ったことがないし。この機会に桜にも宇宙に出る経験を積ませようと思ってるんじゃないかしら。純粋に寂しくなったからって確率も高いけど」


「そのためだけに皇帝陛下から伝令を出してもらうなんて・・・確かにお父様ならやりかねないけど」


やりかねないんだ


「私行く!!! いいでしょ?」


他2人が懐疑的なのに対して桜は乗り気なようだ


「でも桜1人じゃ何かあったら大変だし・・・椿も一緒に行ってくれるかしら?」


「椿に離れられたら地球の復興作業に遅れが出るだろ。護衛なら俺の分野だ。地球では大した仕事もできそうにないしな」


「それが良いんじゃない? Gにも帝国を見ておいてもらったほうが今後良い影響があるでしょうし」


「そうね・・・それじゃぁ桜の護衛はハジメさんにお願いしますね」


「了解だ」




そんな訳で

俺達2人は高速雷撃艇レヴァルジスに乗り込み帝都へと向かっていた

ファリン号がメンテ中だったのが痛いな

おかげで大した設備もない船に長居させられて退屈だ

ネロ級戦艦には娯楽施設が満載だったのに



「よう。後どれくらいだ?」


あんまり暇だったのでブリッジにお邪魔してみた

仕事の邪魔してすまんねみなさん


「まだ半分以上残っていますね」


律儀にもユーリ艦長は俺の質問に答えてくれる

いかにも好青年といった印象を受ける

でも出世しなそうなタイプだな


「そんなにか・・・ずいぶん遠いな」


「地球は帝国領内と言っても辺境の星ですからね。この船もかなり脚の速い船なのですが」


「何かもっとワープみたいに一瞬で行けるかと思ってたんだがな」


「ワープはできる場所と出る場所がほぼ決まってしまいますから。通常航行でワープポイントまで移動しなければなりません。地球から一番近いワープポイントでもかなりの距離がありますね」


「だから辺境だったわけか」


「ワープポイント自体はそろそろ着く頃ですよ。そこからワープ航行を数回行い帝都まで行きます」


「電車みたいな物だと思えばいいわけか。駅までは徒歩だからな」



やれやれ、退屈すぎて死にそうだな

何かもっと刺激的な事はないのかね



とか思っていた所に

ビー! ビー! ビー!

喧しい警報が鳴り響く


「何事だ!?」


「未確認物体が接近中です」


「詳細を報告しろ!」


「現在分析中ですが敵艦である可能性が高いと思われます」


「こんな所で敵と遭遇するだと!?」


おいおい

俺のせいじゃないからな?


「戦闘になるのか?」


「あっ! いえ・・・大丈夫です。この船の脚なら振り切れますよ」


「敵艦加速、小型突撃艇と思われます。航行速度では向こうが上です」


「だとさ」


「・・・どっどうしたら良いのでしょうか!!?」


「お前が艦長だろうよ。お前が決めろ」


「いや、しかし・・・自分は戦闘経験が1度もなく・・・くっ訓練なら成績は常に上位でしたが」


んなこと聞いてねえよ

ダメだなこいつ


「それに突撃艇だなんて・・・最悪だ」


「何がどう最悪なのか分からん」


「船の相性の問題だよ」


突然後ろから桜の声が聞こえてきた

何時の間に俺の背後を取りましたか、お嬢さん


「この船は雷撃艇だから武装は魚雷だけ、後は迎撃用の機銃程度かな。対して相手は突撃艇、射程は魚雷に劣るけど接近した時の戦闘力なら向こうが圧倒的に上なんだよ」


「射程で勝ってるなら近づかれる前に落とせばいいだろ?」


「あの速度から考えてこっちから攻撃できる機会は1回だけ。それが回避されたら2撃目を撃つ時間はないと思うよ」


「チャンスは1回か・・・少尉さんの腕の見せ所だな」


俺はユーリの肩にポンッと手を置いた


「ひっひぃ!!!!」


突然甲高い声を上げて飛びのくユーリ

いや、ビビリすぎだろ


「こっこの状況、どうすれば。上官の指示を仰がないと!」


「落ち着け、今この船で一番階級が高いのはお前だろうが」


「自分には無理です!!!」


「力強く無理とか言うなヘタレ!」


本当に使い物にならんな

緊急事態に対する対処がまるでできていない


「ふ〜ん・・・じゃあ私が何とかするよ」


モニターを見ていた桜が呟いた


「ファリン王女殿下がですか!?」


「桜は地球での戦いで見事な指揮を取っていた優秀な艦長だぞ」


「おお! それでは是非艦の指揮を」


お前無茶苦茶言ってるの分かってるか?

護衛対象に頼ってるんじゃねえよ


だんだん艦長を殺したくなってきたが

桜のほうは久しぶりの艦長にやる気満々らしい


「よ〜し、それじゃ、これから先の指示は私が下します、みなさんよろしくお願いしますね」


「了解」


クルーもようやく落ち着きを取り戻してきた

こんな艦長の下に付けられて不安爆発状態だったからな


「機関最大、敵から離れて」


船は最高速度で敵艦から離れようと動く

しかし敵の船のほうが速い事から追いつかれるのは時間の問題だろう


「この船には機雷が搭載されてたよね?」


無能な指揮官に代わって厳つい顔の副官が対応する

役立たず艦長は自室に下がってもらった

無駄に志気が落ちそうだったからな


「はい。あくまで魚雷迎撃用の物なので敵艦を撃破できるほどの威力はありませんが」


「それを全部放出しちゃって」


「全てですか!?」


「どうせ向こうには魚雷がないんだから迎撃用機雷なんて必要ないでしょ」


「了解しました。全機雷を敵進路上に散布」


ボールのような物体が船から分離して遠ざかる

かなりの速度で移動しているため

放出された機雷は遥か彼方だ


「続いて後方魚雷発射管に魚雷装填」


「了解。5番から8番まで魚雷装填」


「私の合図で魚雷を発射。目標はさっき放出した機雷群。・・・撃って!!!」


船の後方から発射された魚雷は

さきほど放出された機雷群に追いつき宇宙に花火を撃ち上げる


「・・・」


ブリッジに長い沈黙が流れ


「敵艦健在です!!!」


良くない報告が走る

しかし


「後方魚雷発射準備、終わらせるよ」


「了解しました」


敵艦は健在だった

だが酷い痛手を負っており

戦闘可能な状態ではなかった


機雷群を無視して全速力で接近しようとした敵艦は

前方から接近してくる4発の魚雷を回避、あるいは迎撃しようとした


しかし、魚雷は機雷群に命中し大爆発を起こす

それは機雷群を巻き込み

その破片が雨のように敵艦に降り注いだのだ


決して脆い装甲をしていたわけではないだろうが

機雷群の真ん中で周囲4箇所からの爆発を受け

撃沈されることはなくとも

その戦闘力は著しく低下していた


「発射!!!」


さらに4発の魚雷が迫り

今度こそ敵艦を撃墜することに成功するのだった

しばらく次話を投稿せずに申し訳ございませんでした

仕事が忙しくてなかなか書く時間が取れないのですが

続きを希望するという嬉しいコメントを頂いたので、がんばって投稿を続けようと思います

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