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第17話:地球奪還作戦(後編)

「やれやれ、殺人トラップのオンパレードだな」


内部に突入した俺達を待っていたのは、機銃、壁から槍、落とし穴

その他諸々の罠の数々だった


「次は何だ? 岩でも転がってくるのか?」


「宇宙船にそんなトラップしかけるわけない」


「分かってる。ジョークさ」


「・・・つまらない」



襲い掛かる罠を突破し

妨害してくる戦闘員や白兵戦用ロボット共を粉砕しながら

俺達は目的地である中央動力部を目指していた


他の区画の制圧は他の奴に任せて

先に動力を停止させて無力化を図るため

俺とスフィンの2人はGHに乗って急行していた


「そこ右」


「おうよ!」


彼女のナビは完璧なのだが

曲がる直前に言うのはどうにかならんのか?

毎回急カーブをもの凄い勢いで曲がらなきゃいかんのだが


「正面」


「掴ってろ!!!」


彼女が指し示す隔壁に向かってGHを突撃させる

重力場で守られたGHは隔壁を湾曲させ、ついには突き破る


そこで目にしたのは巨大な動力部だった


それはあまりに巨大で

自分が小人になって誰かの体の中にいるように錯覚させた


スフィンがGHから降りて近くのコンソールに取り付く

これで動力部は停止させられるはずだ



「あ」


「どうした?」


「ダメ」


「何が?」


「この船」


「どうして?」


「自爆する」


「おいっ!!!!!!!」


「もう動力炉は爆発寸前。今からシステムを止めても爆発する」


「爆発したら地球が消えてなくなるんじゃなかったのか!?」


「そう」


「何落ち着いてるんだよ!?」


「私が死んでも問題ない」


「問題大有りだろ!」


「シフォン王家は代々バイオテクノロジーが盛んな国だった。その国の女王は代々優秀な遺伝子を組み合わせたクローン体。私が消えてもまったく同じ遺伝子を持った別の私が目覚めるだけ」


俺は完全に諦めモードになってるシフォンの肩を掴んだ


「俺の変わりは俺以外いない! 俺とここで話してるお前もお前しかいない!」

「それに地球が壊れたら桜や椿や菫も死んじまう」


「・・・どうしたい?」


「何か止める方法は?」


「・・・一つだけある、でも・・・貴方は助からないかも」


「どうせ死ぬんだ、問題ない」


「貴方の変わりはいないんじゃなかったの?」


「みんないつか死ぬ。だが死に方くらい俺が選ぶ」

「どんな風に生きて、どんな風に死ぬか、それは誰の物でもない俺自身の『人生』って奴だ」


「・・・私にはよく解らない」


「方法ってのは?」


「貴方の体は『機械』『生物』『魔術』の融合体」


「魔術なんて使われてたのか?」


「サーシャが担当してたから私には解らないけど、確かに使われている」

「今私にできるのは『生物』に関することだけ」

「貴方の体の中にある『G細胞』はサーシャが封印の間から盗み出してきた物。それはとても強い力を持っているけど、とても危険な力。だから私はその力に制限を付けた。その制限を外せば貴方の『進化』の速度は飛躍的に向上するはず」


「リミッターを外すってことか」


「その状態であの動力部に融合して、エネルギーを貴方の体内に吸収してしまえば爆発は防げる」

「でも・・・貴方の体はそれに耐え切れずに崩壊するかもしれない」


「かもしれない・・・ってことは、耐えられる可能性もあるんだろ?」


「・・・2%くらい」


「それだけあれば十分だ。やってくれ」


「一度変身を解除して」


変身を解除して彼女と正面から向き合う


「・・・変な顔、Gの時のほうが良かった」


「余計なお世話だ」


彼女は俺に近づいてきて突然抱きついた

そのまま唇を近づけてくる


「ん・・・ふぁ・・・むぅ・・・ふはぁっ」


普段からは想像もつかないディープキスだった


「これでいい。私のDNA情報に反応して制限解除が行われたはず」


「そ、そうか・・・じゃあやってみるか!」


こういう事をする時には事前に言ってもらいたいね

そうすればもっとムードのあるやり方でリードしたのに



動力炉の前に立ち

両手を動力炉に近づける


そこで後ろからスフィンが抱き着いてきた


「下がってないと危ないだろ」


「貴方が失敗すれば私も助からない。何処にいても同じ」


「そうか・・・」


俺はそれ以上言わずに動力炉に触れる


『融合能力発動』

『動力炉からのエネルギー吸収開始』


莫大なエネルギーの流れが俺の体に流入してくる

俺の体が悲鳴を上げて、今にも破裂しそうになっているのが分かる

どうにか1度に入るエネルギーの流れを制限しようとするが

流れ込む勢いが激しすぎて決壊寸前だ


それでも負けるわけにはいかない

俺が失敗したら菫達が死んでしまう

それ以上に


今俺の背中にいる彼女を助けなければ

俺はスフィンに背中を支えられているような感覚を感じ

今にも吹き飛びそうな意識を集中させる


このままじゃ本当に俺の体が崩壊する!

だが、それでは誰も助けられない

このままじゃダメだ


もっと力を!


もっと


もっと


もっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっともっと


『力』を!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!



エネルギーの濁流は俺の体を破壊し

破壊された体はそのエネルギーを使い修復を繰り返す

繰り返される破壊と再生は

やがて俺の体に大きな変化を生み出した


エネルギーの流入量が上がり

それに耐えうる体が構成され

どんどん自分が変わっていくのが分かった


それでも構わない

さらなる進化を続け

俺の体は全てのエネルギーを体内に吸収したのだった




「・・・成功?」


「俺もお前も生きてる、爆発もしていない」


「2%だったのに・・・」


「50回に1回は成功するだろ」


「・・・それだけじゃない気がする。やっぱりアルマの言っていた『心の力』なのかもしれない」


「『心の力』?」


「G細胞を制御するのは、最後には人の心だってアルマが言ってた」


エネルギーを吸収した俺の体は、以前とは異なる姿をしていた


以前のような完全な人型とは違い

一回り大きくなった体は怪人と変わらない


「これがGの最終形態なのか?」


「違う。Gに最終形態はない。無限に進化を続けるのがG細胞の力。その制限も解除された今、何処まで進化を続けるのかは私にも解らない」


「まあ、それは後回しだ。今はこの戦いに終止符を打つ」


スフィンを連れGHに跨る

GHは俺の体から流れるエネルギーに反応して発光し始める

やがて発光が収まると、GHもまた姿を変えるのだった


お前も進化するってことか、相棒


GHのアクセルを吹かすと

後方のスラスターが起動してGHは空へと走る


垂直に上昇したGHは天井を突き破り上へと進む


いくつもの天井を突き破り

最上階へ乗り込んだ



「なっ、何事だ!?」


いた!

例の放送を行ったリザルフ軍の指揮官だ


「まだ自爆はしないのか!?」


「それが・・・艦内の全エネルギーが消失しました・・・」


「そ、そんな馬鹿なことがあるものか!」


自爆して散るはずだったにしては動揺しているな

見るからに気が小さそうな司令官だからしかたないか


「もう終わりだ、お前らには死んでもらう」


「ひぃ!」


後ずさる敵艦隊司令官


「わ、分かった、降伏する。我々は捕虜として扱ってくれ」


俺は金属質な顔を歪ませてニヤリと笑い


「悪いな、俺は悪の秘密結社の戦闘員なんだ、捕虜は取らなねぇよ」


「だ、誰か! こいつを殺せ!」


警備用のロボット2体がこちらに向かってくる

しかし、今の俺には・・・


両手を前に出し

重力場を撃ち出す


2体のロボットは目の前でペチャンコになって金属の塊に変わった


エネルギー消耗の激しい重力場も今の俺なら気にせず使える

以前より明らかに強くなっている自分を感じた


俺はズカズカと敵司令官に接近し、その腕を掴んだ

そして・・・握りつぶす


「ギャァァァァァァァ!!!!!!!!!!!!!! 腕が! 私の腕がぁぁぁぁぁx」


俺はクククと笑い手を敵の頭の上に乗せる

そして少しずつ力を込めていき・・・


「あがっ! やめてくれ・・・助けっ!」


トマトが潰れるように頭が潰れて脳が飛び散る

それを見ていた他の乗組員は完全に戦意を失って青ざめている


こいつらの対処は他に任せればいいか


今回はとにかく大変だった

これで一段落できるといいんだがな





外に出て草むらに座り込み、空を見上げる


「終わったか・・・」


「これからが大変。今回のことで帝国とリザルフ王国が戦争に突入するかもしれない。そうなれば地球も戦場になる」


「何がこようと俺が倒すさ」


「まるでヒーローみたい」


「ん? そうか? まあ、いいさ」


スフィンが俺の横に座る


「貴方が言った『貴方と話している私』について少し理解できた」


「どんな風に?」


「私と同じ遺伝子を持った『私』はいくらでも作れるけど、今の私の『思い』までは引き継ぐことはできない。だからこの『思い』を持った私は世界に1人」


「どんだけ遺伝子が同じでも『同じ人間』なんて何処にもいないさ」


「・・・・・」





ああ、今回は大変だった

ずっとシリアス続きで疲れちまったよ

しばらくはノンビリしたいところだね


そんなことを考えてると

また大変な事件が起こるのが世界の法則な気がしないでもないが

とりあえず、俺に寄り掛かって寝ている女の子が目を覚ますまでは

静かな世界であって欲しいものだ、この地球には

今回で一段落といった感じです

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