第16話:地球奪還作戦(中編)
「地上との通信が回復しました」
「モニターに出して」
ブリッジのメインモニターに椿の姿が映る
「通信妨害装置は破壊したわよ。リザルフが作ったネットワークも掌握したわ」
「お疲れ様」
「そっちも上手くいったみたいね」
「俺は大したことはしていない。全部桜のおかげさ」
「え!? そんなことないよ。お兄ちゃんを含めて、みんなの協力があったからだよ」
桜は恥ずかしそうに椅子の上で丸くなっている
「これで大体は決着が着いたと思っていいのか?」
「そうね・・・今ここに来てる艦隊は片付いたでしょうけど。リザルフが諦めるとは限らないんじゃない?」
これから先、攻めて来るリザルフ王国に対して防衛線を作る必要があるってことか
しばらくは戦いが終わりそうにないな
俺と椿が今後のことについて話し合っていると
突然オペレーターから緊急報告が入った
「大変です!!!」
「敵旗艦が衛星軌道より落下を始めました!」
「墜落するってのか!?」
「いえ、自力で大気圏に突入するつもりのようです」
「地球に逃げようっていうのかな? 下に逃げても味方はいないのに」
「地上の人間を人質にするつもりなのかもしれないわね」
「それ以前の問題として、あのタイプの戦艦には大気圏航行機能は付いてないよ」
「じゃあどちらにしても墜落するか・・・墜落予想地点は?」
墜落のコースと落下地点がモニターに表示される
「フランス西部です」
「悪い、俺地理とか詳しくないんだが。そこに落ちたらやばいか?」
「あの人達だって死にたくないだろうから、地上に大きな被害が出るような着陸はしないはずだよ。でも椿お姉ちゃんが言ってたように地上の人間を人質にして立て篭もるかも」
「そうなる前に叩くか」
「船の修理状況は?」
「現在応急修理中ですが、もうしばらく時間がかかります」
「椿と菫は追えないのか?」
「リオ号は司令部を兼ねているから迂闊に動けないし、私が今から動いても対応が遅れるわ」
「巨大化怪人&戦隊ロボ軍団に追わせるしかないか」
「それと現地にいる『スフィン』にも手伝わせるわ」
「例の大学時代の友達か?」
「彼女、ヨーロッパを拠点にしていたはずだから、すぐに部隊を展開できるはずよ」
「了解だ。俺も一足先に現地で合流するとしよう」
「ファリン号はしばらく動けないよ? どうやって地上へ降りるの?」
「心配要らないわ桜。GHには大気圏突入機能も備わっているから」
「ってことだ」
「でも、気をつけてね、お兄ちゃん」
「行って来る」
ブリッジを出て、いくつかの通路を通過し、格納庫へ
そこには主人の搭乗を待つ俺の愛馬がいた
「待たせたな相棒。暴れにいくぜ!」
エンジンをスタートさせ
人工知能との接続を完了する
GHを所定の位置へ移動させ、オペレーターからの指示を待つ
やがて宇宙空間へと繋がるハッチが開き
「ハッチオープン」
「カタパルト起動」
「発進どうぞ!」
「出撃する!!!」
俺とGHは戦艦のカタパルトから射出され
一直線に地上を目指すのだった
宇宙空間をバイクで走る
なかなか面白いな
俺の目の前には青い地球が広がっている
いずれ、この星を・・・
俺の体は大気圏に突入し
赤い火の玉となって落ちていった
俺が地上へ降りた時には
敵戦艦は完全に沈黙した後だった
戦艦を囲むように味方部隊が展開していた
「何で破壊してしまわないんだ?」
「壊してはダメ」
突然GHの立体モニターに若い女性の姿が映し出される
「え〜っと・・・誰かな?」
「スフィン=フィシス」
「椿が言ってた3王家の1人か」
「フィシス王家の女王」
「なるほど・・・」
プラチナの髪と瞳が美しい美女なのだが
何処か掴みどころがないというか
感情に乏しい気がするな
「それで、何で壊しちゃダメなんだ?」
「あの戦艦の動力炉が爆発したら地球が壊れる」
「マジで?」
「本当」
それが分かってて地上に降りやがったな、あの船
「それでどうするんだ?」
「突入部隊を組織して内部を制圧する」
「OK。今からそっちに合流する」
突入準備をしている部隊に合流し、直接スフィンに会うことができた
「女王様自ら突入隊に加わるのかよ」
驚いたことに彼女自身も制圧部隊に加わるらしい
「私の変わりは大勢いるから問題ない」
何か事情がありそうだな
「だったら俺の後ろに乗っていけ」
GHの後部座席を親指で指す
彼女は何も言わずに俺の後ろにチョコンと腰を掛けた
「全部隊指示通りに突入を」
「了解しました!!!」
なんか周りの奴らがすごく従順なんですけど
俺らが日本で戦っている間に色々あったらしい
「いくぞ!」
他の部隊の動きに合わせて内部へと突入する俺とスフィン
この船の中に何が待ち受けているのだろうか