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どろとてつ  作者: ニノフミ
第十二話
49/224

【天真正伝香取神道流:密阿弥】③

■■■




 手の中にある真鍮製の物体が月光を反射して輝いている。

 九ミリパラベラム弾。

 和密はそれを五発分マガジンに込め、ベレッタ社製モデル92拳銃(M92)に装填した後スライドを引いた。

 十五発の最大装填数に対して三分の一に収めたのは軽さを優先してのことである。

 恐らくは片手打ちになること、リコイルの衝撃から狙いを定め直す時間を考えると五発が限界だと判断していた。

 梅木双円という化物相手に十秒以上攻防が続けば、それはもう死んでいるのと同じだ。


 和密は金とそれを使う知恵さえあれば何でも手に入ることを経験的に知っている。

 銃も、人も、地位も名誉も、全ては金で解決する問題である。


 ――と思っていた。


 手懐け、手の内にあると思っていた物がここに来て牙を剥いた。

 密阿弥選定の教義。

 和密の父親が候補者を二人にした理由は明確である。

 息子には資格が無いと思っているからだ。

 堕落し、贅を漁り、淫欲を貪る者には相応しくないと思ってのことだろう。

 人生の最高潮ともいえる瞬間に難題を被せて息子の成長を促す、などとは露ほども思っていない。

 剣鬼に斬られて死ねばいいと呪詛を込めてこの状況を作り上げたのだ。


「……く…………くくっ、ふふふ」


 笑みが溢れる。

 天真正伝香取神道流は六百年を超える歴史を持つ総合武術である。

 兵科として槍術や手裏剣術まで修めるのに、現代で銃器を持たないのは武とは言えない。

 その遅れを倫理観や準備の難易度で否定するのは愚の骨頂。

 生死を決める決闘というものは身体能力比べではなく、如何に相手の想像を超える卑怯を出せるかという戦術こそ重要、というのが和密の持論である。

 そして銃器を禁じるという項目は教義のどこにも存在しない。

 古い文章を絶対だと崇め、親族の襲名制に甘んじた結果、ルールが技術の進歩に対応できていないのだ。

 誰もが勝手に真剣の勝負だと思っていることこそが大きなつけ入る隙になる。

 双円相手であれば確実な勝利とは行かないが、相手の技量を無視して勝率を上げられる武器を用意することもまた戦術である。


 左腰に帯刀、右脇腹のホルスターにM92、その上に防刃コートを着込み、和密はシロ教の霊山である観鏡(みかがみ)山の山道を歩む。

 死地へ赴く神経は研ぎ澄まされ、道の脇から弟の依密が現れる前に気配を察知していた。


「依密……今更何か用か? お前には役目があるのだろう?」

「兄上、卑怯はお止めください」


 霊山へ入れるのは三人のみ。

 儀式を見届ける立会人は【大舎人】の人間から一人選出されて山頂に配置されるが、それを抜け出してでも兄に会いに来た理由のくだらなさに和密は呆れていた。


「まだそんな世迷い言を口にするか」

「同じ血筋から常に強者が産まれるわけでないのは自明の理。そこに個人の野望を介入させないのが我らの教義ではありませんか」

「阿呆か。たかが剣力で遅れを取り生活の全てを失うなど狂っている。あのイカレた親父が受け継いだ家も、資産も我らの為に有るべきだろう」


 依密は顔色を変えるでもなく兄を見据えたまま、持っていた手提げ鞄を投げ渡した。


「全てとはいきませんが現金を一千万円、それと十億円ほど集めた隠し口座があります。余生を過ごすには十分な額でしょう。これを持ってお逃げください。外部の人間を雇って算段を整えております」

「お前……」


 シロ教の装置でしかなかった弟が私情で動いているという事実に和密は驚きを隠せない。

 それでも、


「……足りぬな。全く、微塵も、些かも足りぬ」


 弟の優しさを敢えて拒絶した。


 これは人生を賭けた戦争である。

 数千億の総資産からすれば塵芥の如き端金。

 充分な勝機も用意した今、僅かな確率に恐れて逃げる臆病者に成り下がる気は毛頭なかった。


「兄上。これは私の最初で最後のお願いです。恭順なさってください。断るなら実力行使しかありません」

「舐められたものだな。お前程度に遅れを取ると思われていたか」


 山道の暗闇の中で、兄弟が互いに戦闘態勢に入った。




   ■■■




 山頂付近の開けた空間は常世と現世を分かつ境目とされ、シロ教では【巖境(いわさか)】と呼ばれている。

 【巖境】は【神倣備】の儀式の場でもあった。


 巖境に並ぶ篝火の赤熱が真昼のように空間を照らし、その中心に梅木双円が立っている。

 早くに入山した双円は周囲の地形を把握して脳内で大まかにマッピング出来ていたが、この場の明るさは誤算であった。

 後の入場の方が目が闇に順応している。

 もし篝火を破壊されたら、森の闇の中での戦いを強いられたら、視覚情報で遅れを取ってしまう。


 双円は先の襲撃で和密のやり方は理解している。

 だが厳戒な入山規制があるので多勢での襲撃は不可能であり、決闘自体も立会人がいる以上、戦い方には密阿弥としての品格を問われるはずだ。

 和密に正面からやりあう気骨があるとは思えず、普通に考えれば依密の説得に従い下山する可能性の方が高い。


 ――それでも、もし和密がこの場に現れたら、果たして殺さずに勝利することなど可能なのであろうか?


 双円がそこまで思考を巡らせた時、闇の向こうから草葉を踏み締める音が聞こえてきた。


「よお。待たせたな」


 和密が姿を現した。

 篝火に赤く照らされた旧友の顔貌に、双円は年月の経過を感じていた。

 予想が外れたが、和密は奇襲をかけるつもりはなく気さくな笑みで距離を詰めてくる。

 そして手が差し出される。


 双円は訝しむが、和密に殺気はない。

 過去、共に技を高め合った同志がいるだけであった。


 双円も同じく手を伸ばし今生の別れに硬く握手を交わした。


 本来殺し合う程の関係ではなく、二人共が教義の被害者でしかない。

 どちらが勝とうと今代で終わりにするという決意を確かめ合うように互いの脈動を感じていた。


 やがて和密は間合いを離しながら手を解き、一足一刀の間合いで対峙する。

 俄に闘争の空気が満ちていくが、双円は未だ立会人であるはずの依密の姿が見当たらないことに気付いた。


「立会人は何故来ない?」

「さあな。まぁ構わんだろう。どちらかが生き残り山を降りる。それだけのことではないか」


 返答を聞いた双円は息が詰まる思いになった。

 そして自身を責めた。

 依密の交渉が失敗した時の事をもっとしっかり考えておくべきだったのだ。


「……弟を手に掛けたのか」

「……」

「なんということを……。依密はお前の身を案じて教義に逆らったのだぞ」

「はは、そうか。お前もグルだったか。無駄なことを」


 燃えるような怒りが湧き上がる。

 あの依密が初めて垣間見せた儚い願いを踏み躙るどころか、命まで奪ったというのか。

 そうなる必然性などあったのだろうか。

 それが彼の運命だったとでもいうのだろうか。


 ――神は一体何をしている?


「直系の俺は嫌というほど見せつけられてきたから分かる。逃げられるものならば端から逃げておるわ」


 教義の傀儡であった依密も、享受するはずの財を失う和密も、こんな殺し合いに挑む双円も、馬鹿げた役目を演じているだけだ。

 まともな者はこの教団にはいないのだろうと、双円は諦めに似た感情を抱く。

 

 ――狂っている。誰もが狂わされている。


 もはや信じられるのは神でも密阿弥でもなく、己の剣技のみ。


「和密、お前も弟の後を追うがいい」

「させんよ。俺はお前を斬って全てを手に入れる」


 言い終えるが否や和密が手を振り上げると、突如、互いの間に闇が広がった。

 その黒い雲のようなものは篝火を避け、一直線に森の闇へと走る。


 ――神道流の忍術。


 桐の灰を磨り潰して振り撒くことで周囲の闇を濃くする裏技。

 だが、これは双方の視界を封じるので逃走時に使う物である。

 今更逃げるなどありえない。


 ――目的は、距離を離すこと。……投擲? 射出?


 出方を伺う双円の鼓膜が聞き慣れない小さな金属音を捉えた。

 続いて爆発音。

 顔のすぐ横を空気を切る音が駆け抜ける。


 それは明らかな銃撃であった。


 ――勝つためにここまでやるか!


 双円は左方向に駆け出し、和密と同じく森の木々に紛れる。

 闇の中、木々の間を縫いながら動けば早々当たるものではないが、このまま距離を離すべきか詰めるべきか決めあぐねていた。

 得物は恐らく、懐に入る大きさの単発式ハンドガン。

 口径や種類から威力を推測する知識は無く、残弾数も分からないまま突撃するのは愚策に思える。


 しかし撤退は有り得ず、双円は和密を殺さなければならない。

 手加減するというのも過去の話。

 ならば相手に考える時間を与えず、これ以上距離を離される前に相討ち覚悟で踏み込むべきなのだ。


 発砲音の聞こえた方向へと動きを反転した時、二発目の銃声が響き渡り、またも弾丸が眼前を通り過ぎていく。

 進路を変えなければ着弾していた位置である。

 和密はどういう訳か相手の位置を補足できている。

 距離を詰める選択に間違いはなかったことを確かめると、双円はいつものように音を分解する。


 互いの息遣いが聞こえるが、足音と衣擦れの音は自身から発生しているものだ。

 和密は動いていない。

 次弾からは両手で構えた正確な射撃になる。


 直撃を予感した双円は突進を続けたまま左腕に力を込め、体の中心を守るように配置して突進する。

 その時、自身の手が緑光を発していることに気付いた。

 恐らく先の握手で付けられた蛍光塗料だろう。


 そこに発砲音。


 三発目はついに着弾した。

 差し出した左肩に刃物で突くような痛みとハンマーで殴られたような衝撃が同時に発生する。

 四発目は右のこめかみを抉りながら掠めていく。

 手の塗料を拭う時間は無い。


 それでも双円は止まらない。


 古流に対銃器用の技など存在しない。

 或いは現代の軍隊格闘術で対処方法が示されることもあるが決定打というには程遠い。

 剣を凌ぐ間合い、威力、連射力、携行性を兼ね備えた武器に確実な対抗策などなく、文字通り剣の時代を終わらせた文明の利器である。


 だが一方で、決闘に銃を持ち込んだ者の心理を読むのは容易い。

 安全な距離から楽に勝利したいという怠惰、横着、そして優越感。

 盤上に命を投げ出し、そこから生を勝ち取る剣術の理とは真逆を行く油断。

 故に、生死を分ける瞬間に引き摺り出せば心で負けることはなくなる。


 今や和密の輪郭を明確に捉えた双円は、大きく雄叫びを上げて突進する。

 薬丸自顕流の剣客が奇襲する際の戦略である。


「おおおあああああああああぁ!!!」


 自顕流とは異なり、納刀したままでの突進。

 剣筋を木立ちに阻まれる可能性と、光を反射した刃が闇の中で目立つことを考慮し、双円は神道流の多彩な居合術に賭けた。

 狙うは和密が銃を構える手元。


 眼前で五発目が発射された時、双円は既に右に飛び退いて射線から外れていた。

 狙って避けたのではない。

 使う技が回避を内包している故の偶然である。


 行合右千鳥之太刀いきあいみぎちどりのたち


 避けと同時に抜き放たれた刃は横一文字に和密の左手を砕き、握りを失った拳銃が人差し指から滑り落ちる。

 防刃手袋の中身は血溜まりと化した。


 銃の喪失と左手の破損。

 和密は崩れるように数歩下がって、腰を落としてうずくまる。


 ――勝負は付いた。


 本来ならこの後に面打ちが続いて止めを刺すが、命を奪わないという依密の頼みがすんでのところで双円を思い留まらせた。

 依密の安否は不明だが、彼の用意した逃走策はまだ生きているはずである。

 

 もう充分だ、と双円が終わりの言葉を口に出そうとした瞬間、思考の中で時が止まった。


 うずくまっているのではない。

 和密は居合腰になっている。

 斬られる前に離した右手は腰の刀に据えられていた。

 左手を犠牲にしてでも、右手の技に賭けていたのである。

 双円の思考よりも速く、和密の身体が浮き上がる。


 居合技、――抜附之剣(ぬきつけのけん)


 跳躍とともに抜刀した刀は双円の右こめかみを捉え、尚も深く埋まっていく。  


 しかし、面打ちの為に振り上げていた剣の防御が間に合い、和密の渾身の一撃は耳の先端を圧し斬ったのみで止められた。

 そして剣と剣が重なり、図らずも真剣では早々起こり得ない鍔迫り合いへと移行した。


 息がぶつかる近間で双円と和密は向き合う。

 数秒の対峙の後、和密は口端を上げて笑った。


「あぁ、くそ……ここまでやっても及ばぬか」


 片手と両手。

 蹴りや投げに逃げても、もはや鍔迫り合いの結末は覆りようもない。

 手袋の感触で防刃コートであることも見抜かれている。

 万策尽きた和密の意図を察したのか、双円もそれに応える。


「慰めになるかは分からんが、最後の居合は見事であった。淫蕩に溺れなければ随一の遣い手になれたであろう」

「ハハ……耳が痛いな」


 和密の言葉を聞き終えてから、双円はゆっくりと力を込めて刃をコートの内側に沈めていった。

 かつての同胞は逃走ではなく、剣者として死ぬことを選んだ。

 これ以上の手心は侮辱でしかない。


 鎖骨から入った刃がやがて肺腑に到達し、和密は吐血とともに刀を力無く手放す。 


「……弟を、……頼んだぞ」

「生きているのか?」

「馬鹿か……最愛を斬ることなぞ………誰に出来る」


 篝火も月明かりも届かない寂寞の闇の中、和密は宿敵の腕の中で生涯を終えた。

 双円は涙が溢れた。

 悲しみはない。同情もない。

 それでも互いに分かり合えたかもしれないもしもの世界を夢想し、涙が溢れた。


 こうして密阿弥の儀式は、凄惨な結末を迎えたのであった。




   ■■■




 決闘は時間すれば一分にも満たない一瞬であったのか、息を整えた双円が下山を開始してもまだ夜は闇を抱えたままであった。

 達成した浮遊感なのか、同胞を失った喪失感なのか、心の焦点が合わない。

 これからどうなって、何をするべきなのか何処かでじっくり考え直す必要がある。


 虚ろな双円であったが、前方に蹌踉めきながら山道を登る影を確認して安堵した。

 依密である。


「申し訳ありません。兄上に遅れを取ってしまいました」


 和密の最後の言葉に偽りはなく、当て身で無力化していたのであろうか。

 依密に目立った外傷はなかった。


「……いや、すまないのはこちらの方だ。和密は死んだ。俺が殺してしまった」


 約束を果たせなかった。

 助けられる瞬間はあったが、約束よりも士道の誇りを優先してしまった。

 闇で互いの顔が見えないとはいえ、合わせる顔がない。


「構いません。兄上はお役目を充分に果たしました」

「……」


 ――ああ、まただ。


 儀式に際して態度を軟化させていた依密であったが、また以前と変わらない人形の冷たさが戻っている。

 双円はそれでも構わないと思う。

 罪を背負ってでも成さねばならないことがある。

 その後、依密に斬られるのであれば受け入れるだけの覚悟は出来ていた。


「全て、完全に、一切合切が予定通りですから大丈夫ですよ」


 語気に僅かな歪みを感じた双円は反射的に距離を取る。

 だが、その予知に近い動きを依密は上回っていた。

 煌めく白刃が大腿部の内側を走ると、斬られた動脈から夥しい出血が始まる。


「さすがです。言葉に乗る感情すら読めるとは。あなたの聴覚は異能と言っていい領域にあるでしょう」


 依密は音がしないように予め抜刀していたのだ。

 誰も知らない双円の特質を見抜いている。


 ――一体何時から……。


 傷が深く、考える暇がない。

 圧迫止血が追い付かず、出血多量で死ぬのは確実だろう。

 その前に、目の前の怪物を見極めなけれなければならない。


「……お前は一体何を望む?」

「シロ教の安寧のみです。破壊など望んでいません」


 山道を外れた闇に気配が増えていく。

 双円は取り囲まれていることを悟った。


 ――大舎人。


 全て予定通り(・・・・・・)

 つまり儀式の為の教団組織も、先代の密阿弥ですらも依密の支配下で動いていたのかも知れない。

 恐るべき元凶はすぐ側で息を潜めていたということになる。


「はははは……俺も和密も踊らされていたか。さぞかし面白い見世物であったろうな。……結末は俺とお前の死で締め括ろうぞ」


 双円は抜刀し下段に構えた。

 死を覚悟した今、撃たれた肩も斬られた足も痛みを無視して自在に動く。

 残された僅かな時間、宝生依密という怪物を屠ることに全てを注ぐ。


 常に奇襲や多敵戦を想定している香取神道流だが、個人戦に言及していないわけではない。


 ――【位付秘伝】。


 剣術は腕運動の延長なので防御方法は限られている。

 向かい合った真剣勝負ならば相手よりも刀を下に入れる下段技の有利は大きい。

 双円の本命は聴覚による情報収集能力ではなく、体に染み付いた秘奥の術理であった。


「そうですか。ならば、試してみましょう」 


 依密は取り囲む大舎人を手で制し、左腰の鞘に納刀して対峙する。


 ――立合いの抜刀術。


 下段技を躱す為に変化のある技を使うはずだと踏んだ双円は、心置きを後の先へと切り替えた。

 刀で受けずに反撃に転ずる【崩し】の技を下段で放てば抜刀術に負けることはない。

 とはいえ、出血のリミットはある。

 決死の圧力で間合いを詰めようとする双円は、――見た。


 見てしまった。


 風に揺れて晒された依密の顔貌を。

 あの修行の日々に見初め、憧れ、恋い焦がれた妖艶がこちらを見ていた。

 笑いかけてくれている。


 心が揺れた双円の脳天から喉元までを冷たい金属が駆け抜けた。


 抜討之太刀ぬきうちのたち


 抜刀し上段から振り下ろすというシンプルなその技が、双円の予知と反射速度を超えて到達する。

 相討ち覚悟の反撃すら許さない刹那の術理は、単に身体能力の差が生み出す結果であった。


「双円様、私には聞こえるんですよ」


 依密は刀を引き抜きながら、もはや声も届かない双円を抱き寄せて言葉を紡ぐ。

 破壊された脳の混沌とした思考の中で、悪魔の笑いと抱擁が心地よい電気信号を反響する。


「神の声が」


 耳元でそう囁かれると、暗雲が全てを埋め尽くすように双円の思考は途絶えて行った。




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